食物アレルギーについて
食物アレルギーとは?
「先生、この子アレルギーでしょうか?」
「卵を食べると、体に蕁麻疹が出ます。」
外来ではこういった相談をよく保護者の方からうけます。
食物アレルギーを、わかりやすく表現しますと「あるものを食べてたときに、体に蕁麻疹が出たり、かゆくなったり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。本来は体を守るべき免疫機能が、逆に自分の体を攻撃するからそういった症状が出ます。これを食物アレルギーといいます。」
こちらの表は、厚生労働科学研究版による食物アレルギーの臨床型分類です。
問題になるのは、新生児やアトピー性皮膚炎との関連、そして即時型反応になります。実際に外来で多く経験するのはこの即時型症状で、多くは蕁麻疹として発症することが多いです。
食べ物で蕁麻疹が出ると、これはアナフィラキシーショックになってしまうのか?と保護者の方は大変心配だと思いますが、実際にはアナフィラキシーショックまで進む例は滅多にはありません。しかし命に関わる状態ですのでしっかりとした対処が必要です。
新生児乳児消化管アレルギー
小さな赤ちゃんに生じますが、育児粉乳などにより生じる嘔吐、下痢などが主な症状です。原因食物としては、粉乳の頻度が吐出していますが、アナフィラキシーショックは稀で、自然に軽快していくことが多いです。
食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎
乳児期に生じます。鶏卵、牛乳、小麦大豆などが原因です。アトピー性皮膚炎を発症したお子さんが、原因となる食べ物を食べると、もともとあったアトピー性皮膚炎が悪化する。だけどその食物を止めても多少は良くなるけれどもアトピー性皮膚炎そのものは治らない言う病気です。
ここで勘違いしてはいけないのが、ある特定の食べ物だけがアトピー性皮膚炎の原因ではないということです。近年の研究で、アトピー性皮膚炎の大きな原因としては、allergy的な要因と、皮膚のバリア障害ということがわかってきています。
つまり、ある特定の食べ物だけでアトピー性皮膚炎発症し、その食べ物やめればするすると皮膚炎が改善するということはありません。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は強い関係はありますが、「別の疾患」と考えるのが現実的な対応です。
ある食べ物も極端に制限することで発育に問題が生じることがありますので、そこは理解していただいたほうがよろしいかもしれません。
即時型症状およびその特殊型
怖いタイプです。乳児期に発症して成人してからも続くことがあります。特定の食物を食べると皮膚が赤くなったり、まれに嘔吐や下痢をしたり、ゼイゼイと息が苦しくなったり、顔色が悪くなってショックを起こしたりすることがあります。2鶏の卵、牛乳小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類など食べると。たいていは2時間以内に、顔が真っ赤になって、息苦しくなるというパターンです。蕁麻疹や血管浮腫が生じていますので痒くなります。この即時型症状には、食物依存性アナフィラキシーと、口腔荒れる着症候群というものもあります。
ちなみに、鶏の卵、牛乳、大豆の場合は、寛解していきやすいのです。つまり治っていきますが、それ以外は治らずに続くことが多いようです。
特に乳幼児がアレルギーを起こしやすいのは鶏卵、牛乳、小麦、大豆、落花生などです。その他にも、日にエビなどの甲殻類、米、そば、キウイ、メロン、マンゴー、にんにく、セロリなどの起こしやすい抗原を持つ食べものは沢山あります。
例えば、原因となる食べ物が口の粘膜に触れることで症状が出る「口腔アレルギー症候群」は、キウイ、メロン、リンゴ、ももなど果物が原因と発症します。
「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」は、運動と原因となる食べ物の組み合わせにより誘発され、特に運動量が増えてくる小学校高学年から大人の男性に多く、原因となる食物を食べて4時間以内に激しい運動したときに症状が現れ、全身に蕁麻疹や喘息症状、呼吸困難などのアナフィラキシー症状を引き起こすことがありますので注意が必要です。
診断するにはどうしたらいいですか?
患者さんやご両親が原因だと思っている食物以外にも、アレルギーの原因となる様々な食物が食卓には並びますし、加工食品の場合には、包装の裏面などに記載されている材料一覧も確認する必要がありますので、食べているメニューをできるだけ詳細に把握することがまず大事なポイントになります。
具体的な診断のための検査について解説します。
皮膚の過敏テストや血液検査であやしい食べ物が見つかっても、必ずしも食物アレルギーと診断することはできません。実際に止めてみると良くなるか?(食物除去試験)や、わざと食べさせると悪くなるか?(負荷テスト)などのテストをして主治医が総合的に判断します。
なお、当院で希望がある方には、IgG抗体検査は施行できますが、この検査で陽性だからといって必ずしも診断できるわけではありません。
日本小児アレルギー学会では、「食物アレルギーハンドブック2014子供の職に関わる方々へ」の中で、診断にIgG抗体を用いることを推奨しないと注意喚起しています。
ただ、一般的には、IgG抗体検査の測定値が高いことアレルギー症状が起こる可能性が高いといえますので、参考材料にはなるかと思います。
また、除去テストと負荷テスト、過敏テストについては当院では施行しておりませんので、必要に応じて小児科専門クリニック或いは医療機関にご紹介させていただきます。
食物アレルギーと診断されたらどうするのでしょうか?
例えば牛乳アレルギーと診断されたら、牛乳だけでなく、牛乳を含む食物は止めなくてはなりません。実際は何を食べていけないのか?変わりに何をあげればよいか?主治医と相談して決めていくことになります。
食事制限はいつまでするのでしょうか?
子供の成長につれて食物アレルギーは消えていく傾向があります。原因となる食べ物によって差はありますが、乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーのおもな原因である卵、牛乳、小麦は3歳までに約50%が、学童までに80~90%が自然に耐性を獲得すると言われていますので、下記の表に示すような間隔で定期的に検査行い、耐性を獲得して食べられるようになっているかどうかを確認していく必要があります。
食事療法における定期的検査のスケジュールの目安
3歳未満 | 3歳以上6歳未満 | 6歳以上 | |
抗原特異的IgE抗体 | 6ヶ月ごと | 1年ごと | 1年ごとまたはそれ以上 |
食物俯瞰試験考慮 | 6ヶ月~1年毎 | 1~3年毎 | 1~3年毎 |
※海老沢元宏 他:食物アレルギー診療の手引き2014 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患など実用化研究事業(免疫アレルギー疾患など実用化研究事業 免疫アレルギー疾患実用化研究分野)より引用
厳しい制限をしなくても良くなる日がいつかは来ますので、その日まで頑張りましょう。
食物アレルギーは予防できるのでしょうか?
これから生まれてくるお子さんが食物アレルギーならないように、妊娠中や授乳中に母親ができることとして何かあるのでしょうか?これについてはアメリカ、ヨーロッパそして日本のガイドラインいずれにおいても、しっかりした根拠がないとして妊娠中 授乳中の食物摂取制限は推奨していません。また最近では食物に対する感作経路として経皮感作に注目が集まっています。腸管から吸収されたアレルギーの原因物質は免疫寛容を起こしてallergyを発症しないのですが、皮膚からallergy物質が侵入した場合はallergy発症の原因となることがわかってきています。
つまり、乳児期に湿疹があり、皮膚のバリア機能が低下しているところから原因となる食物のタンパク質が体内に入った場合に、免疫細胞が反応起こして、アレルギー反応が成立ししまうということです。この考えかたを応用すると、乳児期の湿疹も積極的に治療して正常に皮膚のバリア機能が働くような状態にしておくことが大変重要だということがわかります。
アレルギーの予防法は矛盾するようですが、偏りなく色々なもの良く食べることです。食べないことよりも食べるほうが予防になります。(もちろんすでにアレルギーが発症している場合は、重症度に応じて、一旦やめる或いはアレルギーの度合いが少ない加工食品に変える必要があります。)そして、皮膚からアレルギー物質が入らないように、スキンケア、特に口の周りはすべすべに保ちましょう。
経皮的に食物が体内に入らないため、食物アレルギーの発症が予防できるのではないか言う考えです。まだ仮説の段階ですが、この仮説を立証するような報告も出てきているため今後期待が持てるのではないかと考えられています。
当院では、食物負荷試験はできませんが、今後小児科専門医或いは食物負荷試験ができる病院と連携し、食物アレルギーのご相談にも乗っていきたいと思います。気軽にご相談いただければと思います。