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【若手医師必見】危険な咳、そうでない咳の見分け方

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  • 咳の見分け方に自信がない若手ドクター
  • 外来で咳の患者さんを診るたびに「危ない咳かどうか」迷う…
  • 正確な判断軸を持ち、咳を訴えて来院される患者さんに安全、安心な医療を提供したい…
  • 危険な咳とそうでない咳の見分け方がいまひとつ習得できないので不安…

咳についてこういった不安や疑問を持っている 若手Dr には今回の記事が役立つと思います。

【若手医師向け】見逃してはいけない“危険な咳”の見分け方

皆さんこんにちは。医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック院長の細田俊樹です。

私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門とし、医師として25年目になります。

クリニックでは年間28,000人以上の患者さんを診察しています。

今回は、外来で日常的に遭遇する「咳」について、特に若手医師が注意すべき「見逃してはいけない危険な咳」について整理します。

診察風景 

はじめに:咳のリスクを甘く見てはいけない

咳のリスクイメージ

咳はどの診療科でも遭遇する、ごくありふれた症状です。

しかしその中には、放置すると命に関わる「危険な咳」も含まれています。

若手医師の皆さんにとって、咳を単なる風邪の一症状と見なすのか、それとも重大な疾患のサインと捉えるのか?

――その見極め力は患者さんの予後を大きく左右します。

この記事では、外来で咳の患者さんを診る際に「危険な咳」と「そうでない咳」を見分けるための基本的なポイントをわかりやすく解説します。

不安を抱えながら診療している卒後10年以内の若手ドクターにこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。

 

咳の原因と持続期間の関係をイメージしよう

下の図は、咳の続く期間によって「感染症による咳」と「感染症以外の咳」の割合が変化していく様子を示しています。

咳の原因と期間

咳が始まったばかりの急性期(3週間以内)は、感染症が原因であることがほとんどですが、
時間の経過とともに感染症以外の原因(喘息、逆流性食道炎、間質性肺疾患など)の割合が増えていきます。

この変化をイメージしておくことが、咳のリスクを見極めるうえで非常に役立ちます。

咳の続く期間による分類と主な原因

さらに下の表は、せきが続く期間とそれに対応するよくある疾患です。

咳が続く期間 主な原因
3週間以内(急性咳嗽) ・ウイルス感染症(普通感冒、インフルエンザなど)
・急性気管支炎
・肺炎
・百日咳
3〜8週間(遷延性咳嗽) ・感染後咳嗽
・百日咳感染後
・副鼻腔炎後咳嗽
・喘息発症初期
8週間以上(慢性咳嗽) ・喘息
・アトピー咳嗽
・胃食道逆流症(GERD)
・後鼻漏症候群(PNDS)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・間質性肺疾患

急性の咳:見逃してはいけないサインとは

急性咳嗽の90%以上はウイルス性ですが、残りの10%には肺炎や百日咳、マイコプラズマ肺炎などが含まれており、見逃すと重症化につながる可能性があります(※1)。

咳で悩む人

肺炎をまず疑うべき所見

  • 38℃以上の発熱が持続
  • 呼吸数24回/分以上
  • 脈拍100回/分以上
  • 糖尿病、肥満、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患あり

特に高齢者では、発熱よりも呼吸数増加や意識の変化が先に出現する場合があるため、バイタル評価が重要です。

百日咳・マイコプラズマ肺炎の特徴

  • 百日咳:発作性の咳が特徴で、咳き込んで吐くほど激しい。高齢者や小児では重症化しやすい(※2)。
  • マイコプラズマ肺炎:咳が強い一方で、比較的元気で食欲もある。若年者に多い(※3)。

その他、急性咳で注意すべき所見

  • 呼吸困難、努力性呼吸
  • 胸痛
  • 血痰
  • 意識障害、全身状態の悪化
  • 微熱や体重減少の持続

遷延性・慢性の咳:見逃してはいけない背景疾患

咳が3週間以上続く場合、重篤な疾患が隠れている可能性が高まります。特に初診時に胸部レントゲンを撮影していない場合は、必ず画像評価を行うべきです。

慢性咳嗽で注意すべきサイン

  • 血痰
  • 胸痛
  • 喫煙歴(30〜40パックイヤー以上)
  • 呼吸状態の徐々の悪化
  • 喀痰量の増加
  • 声のかすれ(嗄声)
  • 発熱や体重減少の持続
  • 肺炎の再発
  • 咳の性状や頻度の変化

まとめ

咳は、その持続期間と伴う症状によってリスク評価が大きく変わります。

「3週間以内」か「3〜8週間か」それとも「8週間以上か」、そして「危険なサインがあるか」。

この2軸を常に意識しながら診療にあたることが、見逃しを防ぐためにとても重要です。

  • 急性咳嗽では、肺炎、百日咳、マイコプラズマ肺炎に注意
  • 慢性咳嗽では、肺がん、結核、間質性肺疾患などを除外
  • 咳以外の症状(発熱、体重減少、呼吸困難、血痰など)に着目する

外来で咳の患者さんを診るときには、ぜひ今回ご紹介したポイントを参考にしてください。

「ただの風邪」で片づけず、咳の質と背景にしっかりと目を向けることが、重症疾患の早期発見につながります。

確かな目を育て、一歩一歩、自信を積み重ねていきましょう!

ポイント

参考文献

  • ※1: Pratter MR. Overview of common causes of chronic cough: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Chest. 2006 Jan;129(1 Suppl):59S-62S.
  • ※2: Cherry JD. The clinical epidemiology of pertussis: 20 years of experience at a large pediatric teaching hospital. Pediatrics. 2005;115(5):1422–1427.
  • ※3: Waites KB et al. Mycoplasma pneumoniae infections in adults and children. Clin Microbiol Rev. 2004;17(4):697–728.

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この記事の監修者
細田 俊樹
  • 医療法人社団緑晴会 あまが台ファミリークリニック 理事長
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医

年間15,000人以上の患者さんを診察している総合診療専門医。
総合診療という専門分野を生かし、内科、皮膚科、小児科、生活習慣病まで様々な病気や疾患に対応している。
YouTubeでよくある病気や患者さんの疑問に対して解説している

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