はじめまして。
あまが台ファミリークリニック院長の細田俊樹です。
私は、家庭医療専門医で、年間延べ20,000人程度の患者さんを診察しています。
医師となってからは、今年で25年目になります。
目次
急性の咳はなぜ“3週間”まで?―医師も知っておきたい本当の理由
- 咳がいつまで続くか気になっている
- 患者さんに咳の説明をどう伝えるか悩んでいる
- 抗生物質を出すべきか迷う場面が多い
当院でしたら、上記の疑問、悩みが解決できるかもしれません。
今回は「急性咳嗽がなぜ3週間までとされるのか」について、医学的根拠を紹介します。
咳の長さで診療の考え方が変わります
咳は内科外来で最も多い訴えのひとつですが、その期間によって
- 急性
- 遷延性
- 慢性
と分けて診療するのが一般的です。
特に「急性の咳=3週間まで」とされていますが、なぜ“3週間”なのか、その根拠を考えたことはあるでしょうか?
私自身もこれまで「急性の咳は1~2週間くらい」と漠然と捉えていました。
しかし、今回ご紹介する文献は、この“3週間”の根拠をしっかりと示しており、医師にとっても非常に有用な内容です。
風邪の咳は平均で何日続く?
急性咳嗽の最も多い原因は風邪(ウイルス感染症)です。
では、風邪による咳はどのくらい続くのでしょうか?
文献調査によると、「風邪による咳の持続期間の平均は18日」とされています(※1)。
今回ご紹介する文献(※2)を簡単にまとめると、以下のようになります。
対象者
- アメリカの一般住民(患者さん)
- 医療機関を受診した成人の「急性咳嗽」患者
研究方法
- 患者さんに「咳がどのくらい続くと思っているか」をアンケート調査
- 過去の医学文献をまとめた「システマティックレビュー」で、実際の咳の持続期間を分析
考察
- 患者さんは、咳は「7〜9日くらいで治る」と期待していた
- しかし実際には、平均して18日間続くことが多かった
- 思ったより長引くことで、不安になり不要な抗生物質を求める原因になっていた
結論
- 咳は思っているよりも長引くのが普通
- 医師は、咳が2〜3週間続くのはよくあることと事前に説明すべき
- それにより不要な抗生物質の使用を減らせる
つまり、風邪が原因で最も多い急性咳嗽の持続期間が“3週間(21日)”とされるのは、このデータに基づいているのです。
患者さんが思っているより長い
実際に咳で受診する患者さんに「どのくらい咳が続くと考えているか?」と尋ねると、ほとんどの方は「1週間から10日」と答えるそうです(※2)。
つまり、患者さんの期待と、実際の自然経過にはギャップがあります。
そのため、咳が10日以上続くと
- 「何かおかしい」
- 「もっと治療が必要では?」
と不安になり、受診することが多いのです。
このタイミングで抗菌薬や咳止めが処方されることもありますが、自然治癒のタイミングとの区別は難しいのが現実です(※2)。
咳について、先に伝えておく大切さ
急性咳嗽の患者さんには、「咳は3週間くらい続くのが普通です」と事前に説明しておくことが重要です。
それにより、不要な抗菌薬や咳止めの使用を減らし、患者さんの安心にもつながります。
「咳が長引いて心配」「薬を使わないと治らないのか不安」と感じている患者さんに、エビデンスに基づいた説明ができること。
これが医師として非常に大切だと改めて実感しました。
まとめ
急性の咳は、約3週間続くのが自然な経過です。
最初にこのことを患者さんに伝えることで、不安を軽減し、適切な診療につなげることができます。
参考文献
- (※1)日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン 咳嗽診療ガイドライン 第2版、2012年
- (※2)Ebell MH, et al. How long does a cough last? Comparing patients’ expectations with data from a systematic review of the literature. Ann Fam Med. 2013 Jan-Feb;11(1):5-13.
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