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適確な診断をするために問診で心がけていること

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適確な診断をするために問診で心がけていること

皆さんこんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

細田院長

今回は、若手のドクター向けに、私自身が適確な診断をするために問診で心がけていることについて書きたいと思います。

プライマリケアの現場で診療していると、腹痛、胸痛、頭痛など、生活習慣病以外にも多くの患者さんが来院されます。

胸痛、腹痛などは、初回の診察で診断できないケースもあり、問診を慎重に進めていく必要がありますが、具体的にどうやって問診をしたらよいか分からない研修医の方もいるのではないでしょうか?

患者さんの訴えに対して医師が聞くべき事6つ

ここから、私が患者さんに聞いている6つの項目について解説します。

頭文字をとって、順番に、アルファベットでOPQRSTと呼んだりします。まずは「O」から解説します。

Onset(発症形式、何をしているときだったか?)

突然に発症したのか?それとも徐々に発症したのか?というのはとても大切なポイントです。

メモのイラスト

そのためには、例えば胸の痛みが起きたときは具体的に何をしていたのか聞いてみると良いですね。

例えば

18時半に大根を切っていたときに
重い荷物を持ち上げたその瞬間に、顎が痛みだした。

といったように

症状が出た瞬間(タイミング)を明確に表現できれば、それは突然発症の可能性が高いです。

ストレスをかけた直後では、動脈のストレス上昇による大動脈解離や脳動脈瘤の破裂なども考える必要があるかもしれません。

また直前に食事をしていた老人や幼児の呼吸困難なら誤嚥による窒息を疑う必要もあるかもしれません。

多くの患者さんが話す「突然に」は、実際には徐々にあることも珍しくないので、具体的に症状が出た瞬間に何をしたのか?聞くことが大切です。

逆にその質問に回答できないときは、徐々に発症したという経過である場合も多いと解釈できるかもしれません。

Provocation(増悪、寛解因子、姿勢、食事、呼吸)

増悪、寛解因子も必ず確認するようにしています。

たとえば、

  • ベッドから立ち上がるときに腰が痛い
  • 寝返りのときが特に痛む

などの場合は、筋骨格系の痛みであることが多いです。

動作時の痛みだからっといって、100%筋骨格系の痛みと決めつけることはできませんが、何が痛みの誘発因子なのか?を特定することは適確な診断をしていくためには、大変重要です。

 

また食事をしたときに、

みぞおちが痛む

と言われたら、痛みの程度、持続時間にもよりますが、胃炎の可能性も高くなりますが、

食事に関係なく痛い

と言われたら原因となる臓器は胃以外かもしれないという可能性も頭に浮かべながら診察を進めていくことになります。 

Quality(痛みの性質 鈍痛、鋭い痛み チクチクなどの独特な表現の場合もあり)

ここでは、痛みの性質について確認します。患者さんが、「痛む」といっても、表現方法は実に多くのバリエーションがあります。

たとえば、

  • 重く押しつぶされそうな胸痛⇒ACSかも
  • 鋭い突き刺すような痛み⇒胸膜、腹膜まで炎症が及んでいるかもしれない
  • さけるような強い痛み⇒大動脈解離
  • 拍動性⇒偏頭痛などの機能性疾患を除けば、脳動脈瘤や腹部大動脈瘤の切迫破裂も考慮

Radiation and Relative symptom(随伴症状、放散痛の有無)

放散痛について

3年程前、救急外来を担当していたときに、

朝歯磨きをしていたら、顎が急にいたくなった

とおっしゃって来院された70歳くらいの男性がいました。

結果的にその方の原因は、急性大動脈解離だったんですが、胸が痛いのではなく、顎も痛くなることがあります。これは心筋梗塞も一緒で、右肩が痛くなったりする場合もあります。

このように、本来の病気がある心臓や、大動脈以外の場所にも痛みがでることを「放散痛」と呼びます。
随伴症状について

随伴症状というのは、患者さんが訴えるメインの症状に加えて訴える症状のことです。

たとえば、24歳の女性が、昨日からの腹痛で来院したとしましょう。発熱もなく、水分はとれますが、中等度の腹痛が間欠的に持続しています。

これだけだと、色々な原因が浮かびますが、患者さんに他にも何か困っている症状はありますか?と聞くと

水みたい下痢が数回あります。

とか

吐き気がしてムカムカします。

といった回答があったとしたら、急性胃腸炎の可能性が高くなりますよね。

このように、メイン+どんな随伴症状があるか?ないか?で診断は大きく変わってきますので、問診はとても重要です。

Severity(痛みの程度、痛みの重症度)

痛みの程度を知ることは外来診療において必須ともいえるくらい大事です。

頭痛、腹痛、胸痛、腰の痛みなど、患者さんは様々な訴えで来院されますよね。

特に慢性の病気、たとえば過敏性腸症候群や慢性腰痛などは、すぐに痛みが消失することはありません。

ですので、毎回私は患者さんに

  • 今悩んでいる、お腹の膨満感の程度はどのくらいですか?
  • 最も辛いのを10、全くないのを0とすると、いくつくらいですか?

と聞くようにしています。

そうすると、最初の外来では、7.8/10くらいの痛みが、数ヶ月すると、5.6/10くらいになる場合もあります。

何がいいたいか?と言いますと、痛みは主観的で本人にしかわかりませんから、あえて数値化してもらうことで、客観的に痛みの程度をお互い共有して、治療方法について一緒に考えやすくなるメリットがあります。

Timecourse(時間推移 増幅度、ベースの状態、連続性か?断続性か?)

Timecourseとは、時間の経過のなかで症状がどう変わっていくか?ということを意味します。

たとえば、胆嚢結石の場合は、突然痛みが来て、NRSでいうところの6-9/10くらいの痛みを行ったり来たりする感じです。

痛みが突然来たけれど、すぐに痛みが消失してしまう場合は他の原因か、胆石が溶解してしまって痛みが消失しているかもしれません。

また膵臓がんによる痛みの場合は突然くるのではなく、週から月単位で徐々に増大していきますし、痛みが消失することは滅多になく、寝ているとき、安静時にも痛いのが特徴です。

 Treatment(普段の治療でよくなるか?ニトロを飲んだらどうか?)

 

また、普段腰が痛くて、NSAIDsを飲めばよくなる人が、飲んでも改善しない、あるいは、更に痛みが強くなる場合は、他の原因かもしれないと想起する必要があります。

今回のまとめ

今回は、症状から原因を診断していくために必須の知識である、問診のOPQRSTについて解説しました。

頭痛、胸痛、腹痛、背部痛、腰痛、どんな場面でも、使えるスキルですので、ぜひ現場で活用してみてください。

当院では、地域の患者さんのためにプライマリケア、総合診療を勉強しながら、地域の患者さんのために一緒に勉強する仲間を募集しています。興味がある方は下記のリンクをご覧ください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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