高尿酸血症と痛風

高尿酸血症と痛風

高尿酸血症と痛風

  • 「ぶつけたわけでもないのに、足が痛い。」
  • 「飲み会の翌日から足の親指が腫れている。」
  • 「不規則な生活になると途端に痛風発作が起きる。」

このような訴えで来院される患者さんは日常診療を担当していますと少なくありません。

こういった場合にプライマリーケアの現場で最も多い原因として考えられるのが痛風発作です。

痛風発作とは?

痛風発作とは、血液中の尿酸値が増えすぎたことによって関節の中で固まりこの状態が続くと、体の中の白血球が固まった尿酸を敵とみなして攻撃します。

白血球は尿酸を取り込んで壊そうとするのですが、この時に白血球から炎症起こす物質が放出され、結果的にこれが痛みの原因になります。

痛風発作はどこに起きやすいですか?症状の経過はどんな感じでしょうか?

痛風の発作の約70%は足の親指の付け根で起こることがわかっています。

痛みのピークは発生してから24時間前後で、数日から2週間ほどで痛みは治まります。他にも足関節やくるぶしとかでも発作が起きることがあります。

稀ではありますが、膝関節や、足の甲、アキレス腱の周辺などでも起こります。

痛風発作の原因はなんですか?

血液中の尿酸値が異常に高くなった場合に起こります。

尿酸は、抗酸化作用といって、体が酸化しないようにするため重要な役割がある一方で多くなりすぎると問題になります。尿酸値は、プリン体が分解されて作られます。

そもそもプリン体とは何でしょうか?

プリン体とは、細胞の中にある核酸(新しい細胞が生まれるときに必須の物質)を構成する成分の1つになります。古くなった細胞が壊れて核酸が分解されるときにプリン体も分解されて尿酸が作られるのです。

プリン体は多くの食品に含まれますが、レバーや内臓類は特に多くなります。

ビールや、日本酒にも含まれますので注意が必要です。

プリン体は血液を通して肝臓に集まり代謝されて尿酸になります。

哺乳類は尿酸を分解するウリカーゼという酵素を持っているのですが、ヒトなどの霊長類は進化のプロセスでこの酵素を産生することができなくなってしまいました。そのために尿酸を体内でこれ以上分解することができません。

それでは私たち人は尿酸をどう処理するのでしょうか?

尿酸の約80%は腎臓から排出されて体外に排出されます。残りの20%は便や汗などで体外に排出されるので、通常体内の尿酸量は一定に保たれています。

しかしながらプリン体を多く含む食品を食べすぎたり、アルコールを過剰摂取すると尿酸が過剰になります。

この状態が高尿酸結晶です。

その他、肥満や高血圧、ジュースの摂りすぎなども痛風発作になる原因です。

この高尿酸結晶を放置すると痛風になる危険性が高まると理解していただければよいでしょう。
尿管結石2

メタボとの関係は?

実は、メタボの人ほど尿酸値が高いことがわかっています。それではメタボかどうかはどうやって判断するんでしょうか?

BMIを計算すれば簡単に判断できます。

BMIの計算方法は「BMI=体重(kg) ÷身長(m) 2

例えば身長170センチで、体重88キロの方がいれば、88(kg)÷ 1.7 (m) 2乗= 30.44となります。

この場合肥満者の判定基準としては肥満度2なります。

BMI判定

18.5未満:低体重

18.5~25.0未満 普通体重

25.0~30.0未満 肥満1度

30.0~35.0未満 肥満2度

35.0~40.0未満 肥満3度

40~ 肥満4度

内臓脂肪が蓄積すると尿酸の産生が増えると言われています。

特に内臓脂肪肥満の方は要注意です。また、高血圧、糖尿病脂質異常症などメタボリックシンドロームの構成要素の数が増えるにつれて尿酸値が上昇し、尿酸値が上昇するとメタボリックシンドロームになる可能性が高くなると言う悪循環になります。

長い年月をかけて痛風へ

無症候性高尿酸血症期

健康診断などで、「尿酸値が高い」と言う結果が出ているけれど、痛風発作など辛い症状が出ていない時期です。自覚症状がないので危機感が薄い人が多いと思われますが、この期間に関節の中で尿酸塩が固まり、痛風で進行する確率が大きくなります。

この段階でできるだけ早く生活習慣を見直すことが大切です。

痛風発作期

突然、足の親指の付け根などの関節に激しい痛みが現れます。

痛みは数日から2週間位で自然に治まりますが、痛みは消えても尿酸値が高い状態は変わりません。そのため発作は何度も繰り返します。

慢性結節性痛風期

病状が進行して、痛みなどの症状が慢性化してしまいます。

結晶化した尿酸は関節から皮下に拡大し痛風結節になります。

さらに進むと関節が変形することもあります。

また、腎障害や虚血精神疾患(狭心症、心筋梗塞など)を起こしやすくなりますので要注意です。

 

高尿酸血症に対しての治療はどうすればいいですか?

高尿酸血症と、痛風の予防のための治療は、大きく、食事と薬物療法に分けることができます。

プリン体が原因と思われがちですが、高尿酸血症及び痛風発作の大きな要因は食べ過ぎと飲み過ぎです。

まずは摂取エネルギー量を抑えること、おつまみにも注意して適正飲酒を心がけることが大事なポイントになります。

食事療法

◎摂取エネルギー量を抑えるポイント
1.油を控えた調理法で、上手にエネルギーダウンしましょう。

同じ食品でも、調理法でエネルギー量は随分変わってきます。揚げるよりも、網焼きや蒸す、ゆでるなどの料理を選んだほうがいいと思います。

調理法に変化をつけて、柑橘類や、香辛料を上手に聞かせると、油や塩分の取りすぎを防ぐことができます。

2.肉類は脂肪を減らす食べ方にしましょう。

肉類は部位によってエネルギー量が異なってきます。

一般的に牛肉は、バラ、サーロイン、肩ロース、肩、もも、ヒレの順に、豚肉はバラ、ロース、肩ロース、肩、モモ、ヒレの順にエネルギー量が低くなります。できるだけ脂身の少ないものを選びましょう。

鶏肉の場合は皮の部分に脂肪が多いので取り除くと良いと思います。

3.塩分は控えめにしましょう。

濃い味付けの料理は、主食を食べすぎたり、お酒を飲みすぎたりするためエネルギーオーバーになりがちです。

麺類はつゆを残したり、すでに味付けがされて料理の調味料をたさないことです。

減塩醤油なども使い過ぎれば塩分の取りすぎになります。

醤油、ドレッシング類は直接かけずに小皿にとって軽くつけるようにしましょう。

◎尿酸値を上昇させないためのポイント水分を十分に取りましょう

1.水分を十分とりましょう。

尿酸のほとんどが尿から排泄されるので、尿量を増やすことが大切です。1日2000ミリリットル以上の尿量の確保を目標に十分な水分を取りましょう。

オススメや水やお茶などの無糖飲料です。

2.高プリン体食品は少量を楽しみましょう。

尿酸の元となるプリン体は、ほとんどの食品に含まれていますので、尿酸値を上げる要因はプリン体の多い食物の摂取のみに限りません。

しかしながら、高プリン体食品の過剰摂取は控え、たまに少量を楽しむ程度にするのが賢明です。

アジやさんまの干物はいっぴきが50から70グラムほどなので食べ過ぎなければ良いでしょう。

3.アルカリ性食品の野菜や海藻類を積極的に取りましょう。

尿酸多く排出する上で、酸性に傾いている尿は中性化するのにアルカリ性食品が効果的です。

アルカリ性食品はニンジンなどの野菜、ワカメ、ひじきなどの海藻類、芋類、果物、大豆などです。

毎食とるように心がけましょう。かさばる野菜も加熱したり品物にすると、たっぷり取ることができます。

4.アルコールは適量守りましょう。

プリン体の含有量にかかわらず、アルコール自体に尿酸値を上昇させる働きがあります。

高エネルギーで食欲を増すため、食べ過ぎにつながりやすいことも心配です。

お付き合いで飲む際も適量を守ることが大切です。

尿酸値を下げる薬物治療

尿酸値を下げるためには、2つの薬があります。

ひとつが、尿酸排泄薬です。こちらは、尿酸を排泄しやすくする薬ですが、尿が酸性に傾き、尿酸結石を誘引しやすいため、尿をアルカリ化する薬も併用する必要があります。

もう一つが、尿酸合成阻害薬です。こちらは、尿酸そのものを合成しずらくする薬です。1日1回の内服薬もあります。

上記の内服薬は、1回でも痛風発作を起こした方は適応になりますが、もしも痛風発作を起こしてしまった場合は、発作による炎症が落ち着くまでは飲めません。

発作時の治療薬

痛風の名前のとおり、発作時は風が吹いても痛い場合もあります。

この場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤という薬を内服する必要があります。

痛みが改善するのに数日を要するため、やはり予防が大切です。

動画でも解説していますので、興味がある方はご覧ください。

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