放置してはいけない腹痛の特徴【よくある原因も解説!】
皆さんこんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
私自身はプライマリーケアの専門医として外来を中心に23年医者としてのキャリアがあります。
現在は千葉県長生郡長生村で、総勢14名のスタッフとともに地域医療に少しでも貢献できればと思い、日々外来を担当しています。
今回は見逃してはいけない腹痛の特徴についてお話しします。
✔よくある腹痛について知りたい
✔腹痛の患者さんは緊急性があって、見逃すとやばい疾患もあるので、どうしたらそれを見逃さないか知りたい。
上記に該当する方は、今回のブログが役に立つかもしれません。
放置すると命の危険も!
腹痛の訴えで来院されて、放置すると怖い病気は沢山ありますよね。
例えば
腸閉塞
腹部大動脈瘤破裂
上腸間膜動脈閉塞症
腹膜炎
子宮外妊娠
化膿性胆管炎
心筋梗塞
重症膵炎
上記などは、見逃すと命の危険もありますから、腹痛の診断スキルを上げておく事は外来をやっていく上で必須だと思います。
今回のブログを読むことで放置すると危険な腹痛を見逃さないためポイントを理解できるようになり、プライマリ・ケア外来に安心して臨めるようになるための参考になれば嬉しいです。
プライマリケアにおける腹痛が主訴で来院される頻度は?
プライマリケア外来では(一般診療所を意味します)腹痛を訴えてくる患者さんの頻度は、10%位という文献もあります。
胸痛や頭痛と違って腹痛の診断は医者の間でも難しいと言われていますが、それもそのはず、腹痛の原因は非常に多いからです。
当然ながらお腹の中は見えませんし、症状やバイタルサインからまずは原因を推測するところから始めるので、時間も手間もかかるのが腹痛の診断です。
腹痛でよくある病気4つ
まずはよくある病気として4つぐらい思い浮かぶでしょうか?ここはとても大事なポイントでよくある病気がわかっていないと、すべて重症疾患だと思い込んでしまって、過度な検査をしてしまいますよね。
また逆に、よくある病気だと決めつけて実は重症疾患だったなんて事もあり得ます。
ですから下記のような、「よくある病気を4つ」を覚えておく事は大事です。
✔急性胃腸炎
✔便秘
✔過敏性腸症候群ですね。
✔機能性ディスペプシア
よくある腹痛の原因1つめ 急性胃腸炎
急性胃腸炎と言うのは典型的には腹痛と吐き気と下痢の3つの症状が揃ったときに初めて診断されます。
特に患者さんが下痢といっても単純に1回だけゆるい便が出たと言うだけでは診断をしてはいけないというのがポイントになります。
1回だけの下痢の場合は他の原因も考える必要があります。
典型的な急性胃腸炎は水曜便が1日に3回とか4回以上と多いのが診断のポイントです。
お腹の痛みと吐き気だけで急性胃腸炎と診断してしまって、実は胆嚢炎だった胆石症だったなんてこともよくあると言われています。
ですから、私自身が吐き気やお腹の痛みだけで下痢がない場合で、水分もそこそこ取れるし、他に重症な病気がないと判断した場合には、
みたいな感じでアドバイスすることが多いです。
また、こういうときは、すぐに受診してくださいね。というポイントも伝えておきます。
たとえば
こんな感じです。
実はこういったことを伝えるか、伝えないかで患者さんからのクレームも減るし、何よりも安心して家で過ごすことができます。
プライマリケアではまだ診断されていない患者さんが数多く来ますので、この不確実性に対してどう患者さんに安心させ伝えておくかというのがとても大事なポイントになるでしょう。
ですから、あくまでも急性胃腸炎と言うのは、まずは腹痛、吐き気、そして明らかな下痢があるかどうかと言うのがポイントですね。下痢がない場合は他の原因疾患も否定できないと考えておく必要があります。
よくある腹痛の原因2つめ 過敏性腸症候群
そして2つ目の過敏性腸症候群ですが、これは慢性の経過をたどります。少なくとも1ヵ月以上症状が経過し、下痢や便秘などの便通以上伴い伴う腹痛と言う定義がされます。
緊張すると下痢をしてしまう。
便秘と下痢を繰り返している。
上記は、よくあるエピソードです。
ただ今回のブログでは急性の腹痛がテーマなので、過敏性腸症候群の詳しい解説はここでは割愛したいと思います。
ただ、以前患者さん向けに過敏症腸症候群については詳しく書いた記事があるので、興味がある方は参考にしてください。
よくある腹痛の原因3つめ 便秘
またこのブログを見ているドクターは、こどもの腹痛を経験している方もいると思います。
実は内科だけど、救急外来では小児科子供も診察する必要があるといった事はよくあるケースだと思います。
子供の腹痛で1番多いのはなんといっても便秘です。
ある文献では、2歳未満から15歳までの腹痛の原因として、常によくある腹痛の原因に便秘が入っています。それくらい多いということですね。
今でも月に1回は、医師会の夜間急病診療を担当していますが、小児の腹痛を診察していると、3,4日便がでなくて、急にお腹が痛くなり、浣腸するとウソのように、痛みがおさまって笑顔で帰る なんてことは珍しくありません。
小児が腹痛を訴える場合は、重症な病気として、虫垂炎や、腸重積、鼠径ヘルニアの嵌頓、精巣捻転、アナフィラクトイド紫斑病、糖尿病性ケトアシドーシスなどもありますが、便秘は腹痛の原因の約50%を占めるというデータもあるくらい、非常に多い原因疾患なのでよくある病気として押さえておく必要があるでしょう。
よくある腹痛の原因4つ目 機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアもよくある腹痛の原因ですが、ひとことでどんな病気か解説すると、慢性に経過するみぞおちの痛みや、早期満腹感、胃もたれ、胃部不快感を呈する病気です。
こちらも以前患者さん向けに書いたブログがあるので、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【胃もたれ・胃痛・早期満腹感の原因の8割!?】機能性ディスペプシア(FD)の改善方法5選
放置してはいけない腹痛の原因の特徴【簡単なポイント】
放置してはいけない腹痛の特徴1つ目 突然痛みが起きる
患者さんに「痛みは突然おきましたか?」と質問すると、大体の方が突然起きましたと言いますが、本当に突然の事は少ないなと思います。
実はよくよく聞いてみると、朝起きてからお昼ぐらいまでにかけて徐々に痛みが強くなってきたなどとおっしゃることが多いです。
突然発症と言うのは厳密にいうと本当にある瞬間から痛くなった痛みのことで例えば痛くなったときに何をしていましたか?と聞くと
明確にその瞬間に何が起きたか答えられるケースが多いです。
例えば「白鵬が優勝を決めた瞬間に痛くなりました。」なんて答えることもあります。
こういった場合は
大動脈瘤破裂など血管が裂けた場合
穿孔と言って腸に穴が開いてしまった
など詰まった、裂けた、破れた場合に起きることが多いのも特徴です。
ですので、突然起きましたといっても、それを真に受けず、
「痛みが起きた瞬間、何をしてましたか?」
と聞くようにしたほうが良いですね。
放置してはいけない腹痛の特徴2つ目 安静でも改善しない
それが安静でも改善しないということです。
通常の腹痛ですと安静にすると良くなると言うケースが多いのですが、例えば夜寝ていても痛みがどんどん強くなる。
そういった場合は重症な病気が隠れている可能性がありますから、注意が必要です。
例えば、腹部、動脈瘤破裂などの場合、安静にしていたら改善するどころか、どんどん悪化すると言うのは想像できると思います。
放置してはいけない。腹痛の特徴その3 痛みの強さが10点中8から10位の痛み
痛みの強さが10点中8から10位の痛み
死ぬほど痛い時を10点で表現したときに、8から10点位の痛みがある場合は、危険な腹痛が隠れていることが多いです。
患者さんに聞くとこは
と聞きます。
その時に8点以上でしたら、重大な病気が隠れている場合もあります。もちろん例外もありましてその人にとって今まで感じたことがない位痛みのことを8点と言う場合もありますが、客観的に見ると顔色も良いですし、そんなに痛く痛くなさそうにしていることもありますから、それだけでは判断がつきません。
放置してはいけない腹痛の特徴4つ目 広範囲に痛む
それが広範囲に痛むということです。急性胃腸炎でも広範囲に痛むことがあります。
ここで言う広範囲とはお腹全体に痛んでいると言うことで、例えばお腹を触ると筋性防御があり、腹膜炎の症状を疑う所見があります。
例えば虫垂炎で炎症が強く膿が出て、腹膜に感染が及んだ場合はお腹全体が痛くなります。
放置してはいけない腹痛の特徴5つ目 冷や汗や意識障害を伴う
それが冷や汗や意識障害が出るです。
この場合はかなり重篤な疾患が隠れていると考えて間違いないです。
例えば心筋梗塞や、子宮外妊娠等ではこういった症状を呈することがあります。
冷や汗や顔面蒼白と言うのはかなり痛みが強いことで交感神経が優位になり出る症状ですから、命の危険を表している場合もあります。
放置してはいけない腹痛の特徴6つ目 強い痛みが6時間以上続く
急性胃腸炎やよくある腹痛のところに出てきたよくある腹痛の4つを覚えていますか?
冒頭、よくある腹痛の原因を4つを解説しましたが、覚えていますか?
便秘にしても、ウイルス性の胃腸炎にしても、痛みは間欠的で6時間以上続く事は稀です。
10点中8点以上の痛みが6時間以上つづく場合は、かなり危険な腹痛の可能性がありますから、注意が必要です。
以上、7つの危険な腹痛を表す症状の特徴についてお話しさせていただきました。
まとめ
よくある腹痛4つを解説をしました。
✔急性胃腸炎
✔便秘
✔過敏性腸症候群ですね。
✔機能性ディスペプシア
次に放置してはいけない腹痛の特徴を6つ解説しました。
✔特徴1つ目 突然痛みが起きる
✔特徴2つ目 安静でも改善しない
✔特徴その3 痛みの強さNRS10点中8~10の痛み
✔特徴4つ目 広範囲に痛む
✔特徴5つ目 冷や汗や意識障害を伴う
✔特徴5つ目 強い痛みが6時間以上続く
最初にお伝えした通り、こういった症状がある場合は、危険な腹痛が隠れていることがあるから要注意です。
腹痛の患者さんは一般外来やプライマリケア外来では少なくなく、診断が難しいのが特徴だと冒頭解説しましたが、これらの症状がある場合は細心の注意を払って診察や問診をする必要があると言うことを繰り返し伝えておこうと思います。
当院では、地域の患者さんのためにプライマリケア、総合診療を勉強しながら、地域の患者さんのために一緒に勉強する仲間を募集しています。興味がある方は下記のリンクをご覧ください。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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