むねの痛み(胸痛)について
あまが台ファミリークリニックの細田です。
プライマリーケアの現場では、胸の痛みもよく聞かれる患者さんからの訴えになります。
救急外来の場合は心筋梗塞、狭心症といった重症疾患の頻度が多くなりますが、参考までに一般診療所での胸痛の原因と頻度を掲載させていただきます。
一般診療所での胸痛の原因と頻度は?
1.筋骨格系(筋肉痛,肋骨骨折など) :29-36%
2.消化管疾患(逆流性食道炎など) :10-19%
3.重症な心血管疾患(冠動脈疾患) :13-16%
4.心理社会的あるいは精神疾患 :8-17%
5.肺疾患(気胸,肺炎,肺塞栓など) :5-20%
6.非特異的胸痛(診断がつかない) :11-16%
筋骨格系の痛みの場合は、体をひねったり、起き上がったときなど動作時に痛みが現れる、もしくは悪化することが多いのが特徴です。
疲れや、仕事の緊張が続くと、肋間筋や胸肋関節付近を押したときに痛みを自覚することがあります。
特に見逃したくない原因と特徴は?
下記のような病態は緊急性が高く見逃したくない病気です。疑った場合は心電図、レントゲンや血液検査などをさせていただき疑わしい場合はすぐに紹介させていただきます。
虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)
心臓の血管が血栓により狭くなったことで、痛みを生じます。痛みは数分以上続き前胸部の激しい痛み圧迫感を感じ、ときに肩や顎にも放散します。心電図で特徴的な波形がみられることがあります。
心筋梗塞の場合は、痛みが現れてから12時間くらい経過するとトロポニンTという心臓にある酵素が血液中に増加するためこれを採血で検査して調べることがあります。
基礎疾患として糖尿病,高血圧があり、家族にも心筋梗塞,狭心症の既往がある場合は確率が高くなります。
診察時に,胸痛がない場合は心電図をとっても、虚血性心疾患を否定できないことが少なくないため、疑わしい場合は専門医のもと,運動負荷心電図や冠動脈造影などによる精密検査が必要となります。
大動脈解離
心臓からつづく太い血管が張り裂けることで生じる痛みです。
血圧の左右差、レントゲン写真での血管像の変化,引き裂かれるような激しい痛みなどがみられます。
疑った場合は専門病院でCTによる検査が必要となります。
肺塞栓
足などにできた血栓が肺にとんで梗塞を起こした状態です。
深部静脈血栓症の既往がある方、寝たきりの方などで突然胸の痛みや呼吸困難が出現した場合に疑います。
緊張性気胸
片側の肺がつぶれてしまって、呼吸困難や胸痛を呈する状態です。
片側の肺の呼吸音が弱く、胸部レントゲンで肺が虚脱(つぶれてしまった)しています。
上記のような病気が強く疑われる場合は、急を要しますのですぐに専門の病院に紹介させていただきます。