目次
“食べすぎ”より“我慢しすぎ”が太る!?
我慢して夕食を抜いても体重は変わらないし、むしろ増えてしまうこともある——。

そんな経験はありませんか?
特に30代後半から50代の女性では、

昔より食べていないのに太る

体型が戻りにくい、代謝が落ちた気がする
と感じる方が多くなります。
一生懸命我慢しているのに結果が出ないと、「自分の意志が弱いのでは」と責めてしまう方も少なくありません。
でも実は、「食べすぎ」よりも「我慢しすぎ」が太る原因になることがあるのです。
その理由と我慢しないで痩せるポイント5つを医学的な視点からわかりやすく解説します。
医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック 院長の細田俊樹です。私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門に、医師として25年目になります。
日本糖尿病学会正会員として、年間5,000人以上の糖尿病や肥満、生活習慣病の患者さんを診察しています。
実際、診察をしていると「食べていないのに太る」「昔よりも痩せにくくなった」というご相談を多くいただきます。
その原因は、単にカロリーの摂りすぎではなく、体の中で起きている“代謝の変化”や“ホルモンの乱れ”にあることが少なくありません。
頑張っても結果が出ないと、「自分の意志が弱いせい」と感じてしまいがちですが、実はそこに医学的な理由があります。
ここからは、「なぜ我慢しすぎると太るのか」を医師の立場からわかりやすく解説していきます。
なぜ「我慢しすぎる」と太るのか? 医師が教える3つの理由
1. 食事制限で筋肉量が減り、基礎代謝が下がる
「食べなければ痩せる」と思っていませんか?
実は、その考え方が“リバウンド体質”をつくってしまうことがあります。
極端な食事制限を続けると、体は“省エネモード”に入り、
生きるためのエネルギーを節約しようとして筋肉を分解してしまうのです。
筋肉は体の中で最も多くのエネルギーを使う「代謝エンジン」。

この筋肉が減ってしまうと、同じ生活をしていても消費カロリーが減り、
結果的に「太りやすく、痩せにくい」体へと変化してしまいます。
たとえば、以前と同じ量の食事をしているのに太りやすくなった、
「昔より痩せにくい」と感じるのは、この基礎代謝の低下が関係しています。
よく患者さんにも、こんなふうに説明しています。
タンク(筋肉)が減ると、体が冷えて代謝が落ち、
同じ食事でも脂肪をため込みやすくなってしまうんです。

つまり、過度な食事制限で一時的に体重が減っても、
筋肉が減ってしまえば、リバウンドのリスクは高まります。

「でも、食べたらまた太りそうで怖い…」
そんな気持ちになるのも自然なことです。
しかし、正しく栄養を摂りながら代謝を保つことこそ、
長期的に見て最も確実で、健康的に痩せるための道なのです。

焦らず、体の仕組みに沿って進めていけば大丈夫。
このあと、代謝を落とさずに痩せる具体的なポイントもお伝えしていきます。
2. ストレスによるホルモンの乱れ
「食べすぎていないのに太る」「疲れているのに痩せない」——そんな悩みの裏にあるのが、ストレスによるホルモンバランスの乱れです。
ストレスが続くと、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
このコルチゾールは“体を守るための防衛反応”で、本来は悪者ではありません。
たとえば、あなたの目の前にライオンが現れたとしたら、心拍数を上げ、筋肉にエネルギーを送って「逃げる準備」を整えます。
これは生きるために必要な反応です。
しかし現代社会では、ライオンの代わりに、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが続く状態が日常的に起こっています。
この“慢性的な緊張状態”が続くと、コルチゾールが過剰に分泌され、
血糖値や食欲をコントロールする働きが乱れてしまうのです。
すると体は「エネルギーをため込もう」として脂肪を蓄えやすくなり、
特にお腹まわりに脂肪がつきやすくなる傾向があります。

なんだか最近、下腹が気になる

同じ量を食べているのに太りやすい
そんな変化を感じている方は、ストレスによるホルモンの影響を受けている可能性があります。
さらに、ストレスで睡眠の質が下がると、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、
逆に食欲を増やすホルモン(グレリン)が増加します。
その結果、夜中にお菓子が食べたくなったり、食事量が増えたりしてしまうのです。
「寝不足なのに食べすぎてしまう」「仕事の後、無性に甘いものが欲しくなる」——
そんな経験、誰にでもありますよね。
それは意志が弱いからではなく、ホルモンがそうさせているだけなのです。
だからこそ、「ストレスをどう減らすか」「眠りをどう整えるか」が、
我慢せずに体を整える上でとても大切なポイントです。

このあとで、ストレスや睡眠不足を改善して代謝を上げるための具体的な方法についてもお伝えします。
ご自身の体の変化に心当たりがある方は、ぜひ続けてご覧ください。
3. ホルモンバランスや加齢による代謝低下
「昔と同じ食事なのに太りやすくなった」「体が冷えやすくなった」——
そんな変化を感じている方は、ホルモンバランスや加齢による代謝低下が関係しているかもしれません。
30〜50代の女性は、更年期前後を境にエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が徐々に減っていきます。
エストロゲンには、脂肪を燃やし、血流を促し、体温を維持する働きがあります。
このホルモンが減少すると、体が冷えやすくなり、脂肪を燃やす力(基礎代謝)が低下してしまうのです。
さらに、筋肉量の減少や活動量の低下も加わり、
「同じ食事・同じ生活なのに太りやすくなった」と感じるようになります。
これは意志の弱さではなく、体が年齢に合わせて変化している“自然な現象”です。
たとえば、40代以降の方が「夕食を軽くしても体重が減らない」と感じるのは、
代謝が10代や20代のころより20〜30%ほど低下しているためです。
この状態で無理に食事を減らすと、前の章でお伝えしたように筋肉まで落ちてしまい、
かえって代謝が下がるという悪循環に陥ります。
「年齢を重ねたら痩せにくいのは仕方ない」と諦めてしまう方も多いですが、
実は、代謝を完全に取り戻すことは不可能ではありません。
食事のタイミングや栄養のバランス、睡眠、軽い運動などを整えることで、
ホルモンと代謝のリズムを“本来の状態”に近づけることができます。
我慢ではなく、体の変化に合わせた“リズムの整え方”を知ることが、
無理なく続けられるダイエットの第一歩です。


では、年齢やホルモン変化に合わせて代謝を上げるための具体的な習慣や、
医療の力を上手に取り入れる方法についても詳しく解説していきます!
医師が教える「我慢しないで痩せる5つのコツ」
年齢や生活リズムの変化で、「昔より痩せにくくなった」と感じていませんか?
実は、頑張っているのに結果が出にくいのには理由があります。
体の仕組みを味方につければ、我慢せずに理想の体型へ近づくことができます。
ここからは、医師の視点で“無理をせずに痩せるための5つのコツ”をお伝えします。
1. 1日3食をリズムよく食べる
「忙しいから朝は抜きがち」「夜だけしっかり食べる」——そんな生活リズムが続くと、体はエネルギーを溜め込みやすくなります。
食事を抜くと一時的に体重は減っても、体は“飢餓モード”に入り、代謝が落ちてリバウンドしやすくなるのです。
朝はおにぎりやヨーグルトなど軽めでも構いませんが、白米でできたおにぎり単体では血糖値が急上昇(血糖値スパイク)しやすいため、卵や納豆、豆腐などのタンパク質を一緒に摂るのがおすすめです。
タンパク質を組み合わせることで、食後の血糖値上昇をゆるやかにし、インスリンの無駄な分泌を防ぐことができます。これは“太りにくい体づくり”にも直結します。
「朝は何も入らない…」という方も、最初は小さなおにぎりとゆで卵1個から始めてみましょう。
たったそれだけでも、体のエネルギーリズムが整い、1日を元気に過ごせるようになります。
2. タンパク質を毎食しっかり摂る
ダイエット中こそ意識したいのが、筋肉のもととなるタンパク質。
筋肉が減ると基礎代謝が下がり、同じ食事でも太りやすくなります。
鶏むね肉や豆腐、ゆで卵など、手軽に摂れる食材で十分。

「お肉を食べると太るのでは?」
と心配される方もいますが、油を使わずに蒸す・茹でるなどの調理法にすれば安心です。
タンパク質をしっかり摂ることで、同じカロリーでも“燃える体”を維持できます。
3. 軽い運動を習慣にする
「運動は苦手」「続かない」という方も多いでしょう。
でも実は、1日10分のウォーキングや家事の合間のストレッチでも効果があります。
脂肪燃焼は“続けること”が鍵。
毎日少しずつ体を動かすことで、筋肉の血流がよくなり、代謝が上がります。

頑張りすぎず、「生活の中に運動を溶け込ませる」くらいの気持ちで続けましょう。
4. 睡眠の質を整える
実は“寝不足”が太る原因になることをご存じですか?
睡眠が足りないと、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、逆に食欲を増やすホルモン(グレリン)が増えます。
その結果、甘いものや炭水化物を無意識に欲してしまうのです。
「6時間も寝られない」という方も、まずは寝る直前のスマホやカフェインを控えるだけでOK。
体がしっかり休まることで代謝が上がり、脂肪が燃えやすくなります。
“痩せる体は夜つくられる”——これは医学的にも正しい考え方です。
5. 医療の力を借りて無理なく続ける
自己流のダイエットで結果が出ないのは、あなたの努力が足りないからではありません。
近年注目されているGLP-1・GIP製剤(マンジャロやゼップバウンドなど)は、食欲を自然に抑え、脂肪を減らす作用が確認されています。

「薬に頼るのは不安」という気持ちも理解できますが、医師の管理のもとで行えば、安全かつ継続的に効果を得られます。
無理をしないこと、それが一番の近道です。
まとめ:我慢ではなく、“体を味方にする”ダイエットを
「頑張っているのに体重が落ちない」「もう少し楽に続けられる方法を知りたい」——そんな方は、
一度“頑張り方”を見直してみても良いかもしれません。
年齢とともに代謝やホルモンの働きが変わるのは自然なこと。
食事制限や運動だけで思うように結果が出にくくなるのは、誰にでも起こることです。
だからこそ、“体の仕組みを理解し、医学的に正しいサポートを受ける”ことが、健康的に続けるための第一歩です。
最近では、医師の管理のもとで行う肥満治療をきっかけに、
「食欲の波が落ち着いた」「ストレスが減って、気持ちが前向きになった」など、
無理をせずに少しずつ変化を実感される方が増えています。
当院でも、医学的根拠に基づいた肥満治療を行っています。
初回は安全確認のため対面診療となりますが、その後はオンライン診療でも継続可能です。
「自分に合う方法を知りたい」「専門的にサポートを受けてみたい」と感じた方は、
まずは概要欄のリンクから、当院の肥満治療ページをご覧ください。
我慢ではなく、医学で“太りやすさ”を抜け出す。
あなたの体質・生活に合わせて、無理なく続く治療プランをご提案します。
最初の一歩は、情報を見てみることからで大丈夫です。医師監修ページを見る(所要2分)
※千葉市・茂原市から通院可/遠方からのオンライン相談も対応
参考文献
- (※1) Fothergill E, et al. Persistent metabolic adaptation 6 years after “The Biggest Loser” competition. Obesity (Silver Spring). 2016;24(8):1612–1619.
- (※2) Epel ES, et al. Stress and body shape: stress-induced cortisol secretion is consistently greater among women with central fat. Psychosom Med. 2000;62(5):623–632.
- (※3) Taheri S, et al. Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased BMI. PLoS Med. 2004;1(3):e62.
- (※4) Jastreboff AM, et al. Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity. N Engl J Med. 2022;387:205–216.
- (※5) Lovejoy JC, et al. The menopause transition and associated changes in body composition and metabolism. Obstet Gynecol Clin North Am. 2011;38(3):441–454.
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