皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「放置厳禁!脳梗塞の初期症状5選」です。
脳梗塞は一度発症すると寝たきりになってしまう可能性がある病気の一つです。
2017年の厚生労働省の統計調査によると、1年間で約6万人くらいの方が脳梗塞で亡くなっています。
2011年のある調査では、脳梗塞を発症した方のうち
- 11%…死亡
- 46%…何らかの介助が必要
- 43%…介助がなくても生活できる
というデータがあります。
介助の必要がない方が半数にも満たない。
それぐらい一度発症してしまうと生活に非常に大きな影響が出る病気の一つですから、ご本人はもちろん、ご家族にとっても早期発見・早期治療が大切です。
脳の解剖・血管の詰まりの原因について
脳というのは前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉の4つに分かれています。
たとえば前頭葉を通る血管が血栓で詰まってしまうと、前頭葉の機能がやられてしまいます。
血管は何らかの原因で、数年~数十年かけて傷ついてきます。
たとえば糖尿病、高血圧脂質異常症、タバコ、まれに低用量ピル、妊娠中の高血圧など。
すると炎症が起きて、動脈硬化(血管が硬く)なります。
そして血管の中にプラーク(粥状硬化)と言って、ちょっとドロドロとしたものが溜まってきます。
そして時間をかけて血栓ができてしまいます。
例えばお風呂場で急に寒いところで血圧が急に上がると、
プラークが飛んでより細い血管に詰まり、細胞が死んでしまいます。
細い血管が詰まった場合は弱い症状が、太い血管が詰まった場合は激烈な症状が出ます。
もう一つは、心臓からいきなり血栓が飛んでしまう場合があります。
心臓に血栓ができるというのは、心臓が不規則に動いてしまった時、
心臓の中の血液がよどんで血栓ができてしまうと言われています。
脳梗塞の初期症状
初期症状1:顔面の歪み
脳梗塞になると血管が詰まってしまって顔の筋肉を支配する神経が麻痺してしまいます。
「イー」と笑って笑顔をつくった時、普通はほうれい線が左右に出ますが、それが片方だけ出なくなる。片方だけ垂れ下がってしまう。
顔面の下垂と言います。
そういった場合は早めに検査をすることをお勧めします。
初期症状2:手足の力が入らなくなる
右手と右足、あるいは左手と左足(原則片側)の筋肉が麻痺してしまい、動かなくなります。
患者さんをチェックする際は、前ならえのように腕を真っすぐ伸ばした状態で、手のひらを上に向けた時、どちらかの腕に力が入らず、腕が落ちてしまうかどうかを診ます。
太い血管でなく、細い血管が詰まっている場合(弱い症状の場合)は、
- 腕がゆっくりと内側の方に向かって落ちていく
- 落ちないように力が入って腕が動揺する
- 意図せず指が曲がってくる
など、血管の詰まり具合によって程度は様々です。
- 箸を持とうと思ったら上手く持てない
- 字を書こうとしても書けない
そんな時に自分の異変に気がつく方もいらっしゃいます。
こういった症状があった場合はすぐに検査をしてください。
初期症状3:言葉の障害
- 呂律が回らない
- 話そうと思っても言葉が出てこない
- 相手の言葉を理解できない
これは脳の中にある「言葉の理解や、言葉を発する部分の脳細胞」がやられてしまった場合に出てくる症状です。
私たちは外来の患者さんに「パタカ」と言ってもらい、はっきりと言えるかどうかを診ます。
初期症状4:感覚の障害
私たちの脳にある「感覚を司る場所」を支配する血管が詰まってしまった場合に、感覚がわからなくなります。
- 朝起きて温かいお湯で顔を洗おうと思ったら、何故か右手だけ感じない
- 突然左手がしびれる
「突然」というのは、脳梗塞を疑う場合に重要な病歴です。
私たちは患者さんがその症状を訴え始めた瞬間、何をしていた時なのかよく聞くようにしています。
初期症状5:めまい
平衡感覚を司る小脳がやられることで、
- 比較的激しいめまいが20分以上続く
- 歩けなくなる
こういった症状が特徴です。
脳梗塞になったときの注意点
すぐに救急車を呼んでください。一分一秒争う病気です。
脳梗塞はいかに早く治療するかで、後遺症が残るかどうか、社会復帰率が変わってきます。
病院の側も、脳梗塞が治療できる病院に連絡をしてくれます。
病院が受け入れ可能であれば、脳血管の専門チームが救命救急センターで待機してすぐに治療できる体制を整えてくれています。
「恥ずかしい」「夜中に救急車を呼ぶと迷惑がかかる」「1日2日様子を見る」という方もいらっしゃると思いますが、それは非常に危険です。
10年以上前に我が国でも「アルテプラーゼ」という血栓を溶かすお薬が使えるようになりました。
このアルテプラーゼ血栓溶解療法は、脳梗塞が発症してから4.5時間以内に使うことができます。
1秒でも早く見つけて、救急車を呼んでいただくことが大切です。
また、脳梗塞にはいきなり発症せず前兆が出る場合があります。
多くは2~15分、長くても60分くらいで大半は症状が消失してしまいます。
これを一過性脳虚血発作(TIA)と言います。
2000年に総理大臣を務めていた小渕恵三元首相が脳梗塞を発症する前日、記者からのスピーチに10秒間何も答えられなかったというエピソードがありました。
あれはもしかしたら一過性脳虚血発作(TIA)だった可能性があります。
一過性脳虚血発作(TIA)になった場合、仮に症状が消失しても48時間以内に5%の方が本当の脳梗塞を発症してしまうということがわかっています。
また、90日以内に15~20%ぐらいの方が本当の脳梗塞になってしまうというデータもあります。
もしもこの一過性脳虚血発作(TIA)になった場合は、早期に治療を開始すれば血栓を予防する抗血小板剤や抗凝固剤といった血液をサラサラにする薬を使うことで脳梗塞の発症率を80%も予防できるというデータもあります。
いかに早く見つけるかというのはそういった意味でもとても大切です。
脳梗塞にならない予防法
すべての方が救急車を呼んですぐに病院が見つかるとも限りませんし、
発見が遅くなってしまって後遺症が残ってしまうというケースも残念ながら多く見てきました。
そういった意味でも、そもそも脳梗塞にならないということがとても大切になります。
▼脳梗塞(血栓ができる)主な原因
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- タバコ
- 過度のアルコール
このような生活習慣病が数年から数十年続くことで、脳梗塞が起こるリスクが高まります。
適切な血圧コントロール、コレステロールの管理、血糖コントロールというのが非常に大切です。
YouTubeで生活習慣病予防に関する動画をあげていますので、ぜひ参考にしてみてください。
もう一つの予防法としては、体調が悪いと感じた時や胸がドキドキすると感じた時、普段から脈をチェックする習慣をつけることです。
たとえば心臓で血栓ができて血管に詰まってしまうと急に意識がなくなってしまったり、まったく動けなくなることもあります。
このように「心房細動」と言って脈がバラバラに心臓が動いてしまう不整脈は、症状が半数ぐらいはありません。
高齢になればなるほど心房細動になるリスクは高いと言われています。
脈をチェックするときは、指を3本軽く当てて脈を感じてください。
普通は一定間隔で動いていますが、心房細動の場合は脈がバラバラになるのが特徴です。
普段からチェックして、心配な場合は内科に受診することをお勧めします。
今回のまとめ
1:脳梗塞の疑いがあった場合、すぐに救急車を呼びましょう
2:症状が一度出て消失した場合も、脳梗塞の前兆の可能性があります。必ず病院に行きましょう
3:生活習慣病の予防が脳梗塞の予防になります
動画
「放置厳禁!脳梗塞の初期症状5選」について、動画でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください!