皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「放置厳禁!93%が助かる!?胃がん要注意な症状5選」です。
みなさんは日本人の死因1位が「がん」だということをご存知でしょうか。
国立がん研究センターの2017年の調査によると、
がんで亡くなった方の中で、胃がんは3番目に多いというデータが出ています。
今回のブログでは、まずは胃の機能・解剖を解説し、次に胃がんのリスク因子、そして胃がんの症状5選、最後に早期発見に役立つ方法をお伝えしたいと思います。
目次
胃の解剖の解説
私たちが食べたものは食道から胃に入ります。
そして胃酸という強力な酸性の液体が、ばい菌などを殺菌してくれます。
タンパク質などは、胃液の中のタンパク分解酵素によって分解され、小腸から吸収されやすくしていきます。
胃は上から下のほうに収縮して、食べものをお粥のように細かくしていきます。
ある程度お粥状に細かくなると胃の下の「幽門部」が開き、十二指腸に送り込まれます。
そしてすい臓からでてくる消化酵素でさらに分解され、小腸にいって必要な栄養素が消化吸収されます。
胃がんのリスク因子
体に出ている症状だけでなく、元々みなさんが持っているかもしれないリスク因子を理解しておくことは非常に重要です。
例えば、病院に2人の患者さんが同時に来た場合。
Aさん:症状あり。
Bさん:症状あり。リスク因子3つあり。
この場合は、Bさんに対して胃がんを疑う可能性が高くなり、早期発見に役立ちます。
早期発見できるということは、それだけ生存率が高くなるということです。
がんが他の臓器に転移してしまうと、生存率が非常に下がってしまいます。
ぜひ早期発見のために、リスク因子を覚えておきましょう。
胃がんのリスク因子1:肥満
肥満の定義は、BMIが25以上であることです。
BMIは体重を身長の2乗で割った数値です。
例えば身長170cm、体重75kgの方は、
75÷1.7の二乗で25.9。肥満のカテゴリに入ります。
肥満は胃がんだけでなく、すい臓がんや心筋梗塞、脳卒中など様々な病気のリスクになります。
適正体重を維持することはとても重要です。
胃がんのリスク因子2:家族歴
お父さん、お母さん、兄弟が胃がんである場合は、そうじゃない場合に比べ胃がんのリスクが高まります。
胃がんのリスク因子3:塩分の過剰摂取
様々な研究で、毎日塩分量の多い食事をとることで胃がんのリスクが高くなるという結果が出ています。
塩分を控えることは、高血圧のリスクを減らすことにもなります。
ただ塩分を控えるだけでは美味しくない食事になってしまうので、ぜひこんな動画も参考にしてみてください。
塩分を控えつつ、美味しい食事をご紹介しています。
胃がんのリスク因子4:タバコ
タバコは様々ながんのリスクになります。ある研究では胃がん全体の18%はタバコに起因するという研究結果もあります。
タバコを吸っている方は1.53倍がんになるリスクが高く、特に男性において傾向が高いということもわかっています。
病院には禁煙外来というものがあって、保険診療でタバコをやめる方法を教えてくれますのでやめようか迷っているという方はぜひ禁煙外来を選択してみてください。
胃がんのリスク因子5:ヘリコバクターピロリ感染症
「ヘリコバクターピロリ」という菌がいるかいないかで長期的に胃がんになるリスクが6倍高くなるという研究があります。
これは1993年の「Lancet」という一流雑誌の研究です。
また先進国においては胃がん全体の原因を100とすると36はピロリ菌が原因ということもわかっています。
胃がんの症状1:上腹部痛
私たちが食べたものは食道を通って胃に入ります。
内臓の位置関係的に、胃に異常があった場合、お腹の上の方が痛い「上腹部痛」やみぞおちの痛みを自覚することが多くあります。
- もたれている
- モヤモヤする
- 違和感がある
人によってその表現は様々です。
早期がんの場合、腹痛、腹部不快感を合わせて34%です。
ところが進行がんになると48%が上腹部痛に関連するということがわかっています。
がんの進行度
粘膜でがんが止まっている場合は早期がんと言います。がんが筋肉に到達してしまったり、漿膜の方まで行ってしまった場合を進行がんと呼びます。
早期がんの場合は内視鏡で取れることもあり、文献によって様々ですが93~95%も5年生存率が高いと言われています。
ただこの漿膜を超えて他の臓器に転移してしまった場合をステージ4と言って、5年生存率は9%と非常に下がってしまいます。
早期がんの場合はみぞおちの辺りの痛みや違和感を感じることが多いと言われていますが、進行がんは筋層を貫いて、場合によっては神経まで刺激を与えますので、
- 食べる食べない関係なく痛みが持続する
- 夜中も痛みで起きてしまうほど痛い
など、痛みが右肩上がりでどんどん強くなるという症状がでることが推測されます。
胃がんは見つかった時点で約半数はある程度がんが進んでしまった状態であるという研究結果があります。早期では症状が乏しいのも特徴の1つです。
胃がんの症状2:食欲不振・吐き気
胃に異常があると、脳はその異常を感知するので食欲がなくなってきたり、吐き気をだすことでSOSサインを出します。
食欲がなくなる原因は、お薬やストレス、睡眠不足など様々ですが、胃がんにおいてもこういった症状が出るということを覚えておくといいと思います。
胃がんの症状3:体重減少
「絶対放置してはいけない大腸がんの初期症状5つ」という動画でも体重減少について触れていますが、大腸がんの場合はがん細胞が新生血管というのを出して周りから栄養を奪うことによるものでした。
胃がんの場合は、上腹部痛や食欲不振、吐き気からくる胃そのものの不調から食欲がなくなり、体重が減ることが多いと言われています。
がんが進行してしまいどんどん大きくなってくると、筋肉や骨を分解してでも栄養を吸い取ろうとするので体重ががんそのものによって減るということもあります。
先日外来の患者さんで進行胃がんの方がいらしたのですが、その方は体重が2ヶ月で5kg減ったとのことでした。
特にダイエットしてもいないのに体重が減るのは、私たちからすると「ただの病気ではない」とアンテナが立つ要素になります。
胃がんの症状4:黒色便
がんができると、どんどん自分の居場所を広げようとして、新生血管を出して栄養を奪い取ろうとします。
この新生血管は、普通の血管に比べてとても脆いものです。
例えば私たちが何か食べると、お腹は食べ物をお粥状に砕くために上の方からギュッギュッと動くのですが、この時食べ物が胃がんの表面に刺激を加えることで、通常の血管よりも出血を起こしやすくなります。
するとこの出血が小腸大腸を通過し便に出てきます。
肛門近くにできる大腸がんとは違い、長い時間をかけて腸を通って出てくるので、色が黒くなります。
貧血で鉄剤を飲んでいたり、イカ墨パスタを食べた場合も黒くはなりますが、そういった思い当たる要因がないのに近頃便が黒いという方は早めに医療機関を受診しましょう。
胃がんの症状5:食べ物の飲み込みづらさ
胃の入口~胃の上部にかけてがんができてしまった場合、食べ物が通過せず、飲み込みづらくなることがあります。
またがんが胃の中で広範囲になってしまった場合、胃が消化のために収縮するということもできなくなってしまう、つまり消化ができなくなってしまい、すぐにお腹がいっぱいになる方もいらっしゃいます。
胃がんの症状 番外編:貧血
黒色便のところでもお話したように、胃から出血している状態が長く続くと貧血になります。
大腸がんの初期症状の動画でもお話しましたが、出血が続くと、酸素を運ぶ鉄とタンパク質の複合体であるヘモグロビンという数値が下がっていきます。
具体的にはヘモグロビンの数値が11以下になります。
私が担当した患者さんは数値が10ぐらいになっていたのですが、この数値は人によって様々です。
出血の程度が多ければ多いほど、数値はどんどん低くなります。
出血の程度が少ない場合も考えられますので、貧血がない=胃がんじゃない、とは言い切れないのですが、症状の一つとして覚えておくといいと思います。
胃がん発見時の症状
こちらはある研究によってわかった
胃がん発見時の症状をグラフ化したものです。
胃がんが進行すると、色々な症状が出てくることによって発見されることがわかります。
ただ早期胃がんと進行胃がんに共通するのは、上腹部に関連した痛みが1番多いということです。
ただし早期胃がんには自覚症状がないので、いかにリスクを減らし予防していくか、どうやって見つけたらいいのかということが大切になります。
胃がんの早期発見に役立つ方法
胃がん発見に役立つ方法1:バリウム検査、胃カメラ
選択肢としては色々な検査がありますが、大きく身近な検査で言うと
「胃のバリウム検査」「胃カメラ」この2つになります。
バリウムを飲んでレントゲンで検査をすることで大きな腫瘍があった場合、そこだけ色が抜けることによってがんが発見できます。
ただし小さながん、平ながんに関してはバリウムで見落としてしまう可能性があります。
内視鏡検査であれば胃の粘膜の内側から見ることができるので、微細な変化を発見できます。早期胃がんの発見にはメリットが大きい検査方法です。
ただしこれは各市区町村の検診ではできませんので、一般的には人間ドックで行うのが実情だと思います。
胃がん発見に役立つ方法2:リスク因子を確認する
・肥満
・家族歴があるかどうか
・タバコ
・塩分の濃い食事
・ピロリ菌感染
こういった条件に当てはまる方は積極的に内視鏡検査やバリウム検査、人間ドッグを利用してみましょう。
最近ではピロリ菌感染を集団検診で検査できる市区町村も増えてきています。
尿・便・呼気・血液検査など調べ方は様々ですが、心配な方は主治医の先生にお話してぜひ調べてみるといいと思います。
もしピロリ菌があった場合は抗生物質や胃薬が入った錠剤を1週間のむことでかなりの割合で除菌ができると言われています。
日本の場合、上下水道が完備しない時代に生活をしていた方、特に50歳以上の方や、ピロリ菌に感染した方から、幼少期に口移しでご飯をあげたことなどが原因で、若い方でも一定の割合でピロリ菌感染をしている方がいると言われています。
ピロリ菌に感染している方は、感染していない方よりの6倍がんになるリスクが高いということと、ピロリ菌に感染してから除菌したグループとしなかったグループでは明らかに胃がんの発症率に差が出るという結果がでています。
ぜひ除菌することをオススメします。
胃がん予防のための食材
胃がん予防のためになる食材は、果物と野菜です。
すべての研究でいい結果が出ているわけではありませんが、果物と野菜、特に果物については、胃がんの発症リスクを30~40%減らすことができるという研究結果が出ています。
果物や野菜を毎日の食材に取り入れることは、大腸がんや脳卒中、心筋梗塞など、様々な病気の予防に役立つことが期待できます。
まず野菜から食べる習慣をつけること。
そして甘い菓子パンを食べたり、ジュースを飲みたくなった時は、果物を食べてみましょう。
胃がんを100%予防する方法はありませんが、例えばタバコをやめることで18%、ピロリ菌を除菌することで36%、ということは、この2つの問題を解決した場合リスクの半分を減らすことができるということになります。
それに加えて塩分の濃い食事を改め、ダイエットをしていったら、リスクはもっと減らせますね。
ダイエットについてはこちらの動画も参考になりますので、ぜひ見ていただければと思います。
生活習慣や事前にわかっているリスクを取り除いて、少しでも多くの方の胃がん予防、そして早期発見、早期治療に役立てば本当にうれしいです。
今回のまとめ
1:胃がんのリスク因子(肥満・家族歴・塩分過剰摂取・タバコ・ピロリ菌)を知る
2:バリウム検査や胃カメラを定期的に行い、早期発見につとめる
3:果物や野菜をバランスよく食べ、生活習慣を見直すことで予防する
動画
「放置厳禁!胃がん要注意な症状5選」について、動画でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください!