男性型脱毛症AGAの診断と治療

皆さん　こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
総合診療を専門にしていますが、外来でAGAについてよく相談を受けるので、今回解説させていただきます。

男性型脱毛（AGA）とは？

男性型脱毛症は男性の脱毛で最も多い原因です。
AGA（男性型脱毛症）は、成人男性に多い脱毛の原因です。

思春期以降に前頭部や頭頂部の髪が薄くなり、細く短い毛が目立ち始め、々に進行していくことが特徴です。

AGAの原因とは？

AGAは、髪の毛の「毛周期」と呼ばれるサイクルの「成長期」が短くなることで起こります。

これは、DHT（ジヒドロテストステロン）という物質が頭部の男性ホルモン受容体に結びつくことで引き起こされます。

DHTが多いと髪が薄くなる傾向があるため、AGAの薬はこのDHTが受容体に作用しないようにすることで効果を発揮します。

なお、貧血や甲状腺機能低下も脱毛の原因になることがあり、それぞれ異なる治療が必要です。血液検査をしたことがない方は、1年に一度の検査をおすすめします。

医学的に証明されたAGAの治療薬

世の中には多くの育毛剤や養毛剤がありますが、医学的に証明されている治療薬は以下の3つだけです。

フィナステリド（内服薬）
デュタステリド（内服薬）
ミノキシジル（外用剤）

以上の３つになります。

え！？医学的根拠のある薬は、この3つだけなんですか？知らなかったです。

実はそうなんです。世の中には、「薄毛を改善」目的で売られている薬が多数ありますが、そのほとんどが、医学的根拠に乏しい薬です。

自分も色々な育毛剤などを試していたんですけど、あまり効果を感じていなかったのはそういうことだったんですね。

もちろん上記の3つの薬だけでなく、十分な睡眠や、バランスのとれた食事、ストレスをためこまないといった生活習慣もとても大切だということは伝えておきたいと思います。

生活習慣も大事なんですね。ところでその3つの薬の治療効果はどのくらいなんでしょうか？

治療方法と効果は？

フィナステリドの効果

フィナステリドはDHTの生成を抑える薬で、髪が減る原因を防ぐため効果が現れるまでに3～4か月かかります。
臨床試験では6割の患者さんが効果を実感し、4割の方は進行が抑えられるという結果が得られています。

男性型脱毛症は時間とともに、毛が生えなくなってくる病気ですから、「進行を抑えている」＝「効果がある」と考える事も出来ます。

デュタステリドの効果

数年前からフィナステリド以外に、デュタステリド（一般名）というお薬も開発されました。先発品はザガーロになります。

もともと前立腺肥大症を改善するために開発された薬ですが服用した患者さんの髪の毛が増えるという事象がみられ、その後 AGA の治療薬としても使われるようになったという経緯があります。

デュタステリドは、DHTを生成する「5αリダクターゼ1型と2型」の働きを抑えることで効果を発揮します。
脱毛の進行を抑え、髪が増える効果が期待されています。
フィナステリドよりも効果が高いとされており、効果を感じるまでには半年ほどかかることが多いです。

具体的には男性の被験者120名を対象にした国内の試験で、デュタステリドを120名に52週間にわたって1日あたり0.5mg 内服していただき、直径30μｍ以上の、非軟毛数・硬毛数・非軟毛直径が52週後に増加したという結果でした。

また、同試験において皮膚科医が撮影した頭頂部の写真評価では26週と52週で、いずれもベースラインよりも有意に毛髪量の増加が認められました。

以下は実際にデュタステリド（商品名ザガーロ）を内服した場合の数ヶ月間の変化です。

上記は、株式会社　グラクソスミスクラインのHPからの引用

特に頭頂部の増毛効果が期待しやすいのもデュタステリドの特徴です。飲み始めてから半年くらいすると効果を自覚される方が多いですので、それまでは継続することをお勧めします。

副作用はなんですか？

初期脱毛

AGA治療薬では治療開始後1～2か月の間に抜け毛が増えることがあります。
これは乱れた毛の成長サイクルを正常に戻すための一時的な症状ですのでご安心ください。

ただ治療しているはずなのに、髪の毛が抜ける本数が増えたら、不安になるかと思います。その場合は、医師に相談してください。

性機能障害

デュタステリドやフィナステリドでは、性欲の低下や勃起機能低下が副作用として見られることがあります。
症状が出た場合、数か月で消えることが多いですが、強く不快に感じる場合はすぐに医師にご相談ください。

研究によると、1%の人に性欲の低下，0.7%の人に勃起機能不全を認めました。
また肝臓で代謝される為、肝機能障害のある人には投与出来ません。

ジヒドロテストステロンは、 AGA を進ませるホルモンである一方で男性の性機能や性欲を後押しするホルモンですから、デュタステリドを服用することでジヒドロテストステロンが減少し、毛髪に良い影響がある一方で、性機能や性欲の減退という副作用が発現する場合もあります。

性欲の減退や性機能の低下というのは、聞き捨てならないですね。
もし副作用が出てしまった場合は、中止すれば治るのでしょうか？

最初の1ヶ月から2ヶ月ぐらいに症状が出ることがありますが、ほとんどの方は、その後症状が消失するという傾向があります。

ただし、長引く場合や、症状が強い場合は、すぐに中止してください。

まれですが、薬を中止した後も症状が続く場合が、ありますので、その場合は医師に早めに相談してください。

なお、女性の人には効果がなく、妊娠や授乳中の女性、お子さんが、薬の容器や、薬には触れ無いようにして下さい。
PSAという前立腺の検査結果に影響を及ぼすので検査された時は医師へ内服している事を伝えて下さい。

当院で処方できるAGA治療薬

当院では、デュタステリド（ザガーロ後発品）とフィナステリド（プロペシア後発品）を取り扱っています。
AGAの治療はすべて自費診療で、初診では診察と血液検査の上、処方を行っています。

デュタステリドとフィナステリドの違い

特徴	デュタステリド	フィナステリド
効果の強さ	5αリダクターゼ（※） 1型と2型の両方を阻害	5αリダクターゼ（※） 2型のみを阻害
発毛効果	フィナステリドの1.6倍の発毛効果が期待できる	基準となる効果
半減期	約3週間から5週間	約6時間から8時間
性機能への影響	勃起不全、リビドー減退、精液量減少	勃起不全、リビドー減退、その他（射精障害、精液量減少、下痢、胃不快感等）

（※）5αリダクターゼ：男性型脱毛症の原因となる酵素の一種

禁忌について
デュタステリドとフィナステリドは、以下の患者には使用を避けるべきです。

過敏症の既往歴がある患者
妊婦や授乳中の女性
小児
重度の肝機能障害のある患者

■デュタステリド：（国内メーカー）

■フィナステリド：（国内メーカー）

AGA自費診療価格（例：1ヶ月30日分処方の場合）

この薬は健康保険の適応外なので費用はすべて自費となります。

受診後の流れは診察をし採血で貧血、甲状腺機能、肝機能、腎機能を検査した後に薬を処方します。

※他院で肝機能、腎機能、甲状腺などの検査をしたことがある方は半年以内の採血結果をご持参ください。

初診時（はじめて処方する場合）

項目	費用
初診料	3,000円
血液検査	7,000円
薬代（30日分）	フィナステリド：5,200円デュタステリド後発品：6,000円ザガーロ先発品：10,500円
合計	フィナステリド：15,200円デュタステリド後発品：16,000円ザガーロ：20,500円

※血液検査では、肝機能、腎機能、貧血、甲状腺機能を調べます。

再診以降

項目	費用
再診料	700円
薬代（30日分）	フィナステリド：5,200円デュタステリド後発品：6,000円ザガーロ先発品：10,500円
合計	フィナステリド：5,900円デュタステリド後発品：6,700円ザガーロ：11,200円

初診の流れ

以下が受付から会計までの流れになります。

受付
↓
診察
↓
採血
↓
薬の処方（院内処方）
↓
会計
↓
帰宅

ミノキシジル（市販ではリアップ）と併用は可能ですか？

はい、ミノキシジルと併用可能です。
併用により育毛効果が高まると考えられています。

ただし、かゆみが強い場合は、いったん中止のうえ、主治医または薬剤師にご相談いただくことをオススメします。育毛剤に含まれるアルコール成分に反応することが原因であると考えられています。

不明な点はお気軽にご相談ください。

ミノキシジルってなんですか？

ミノキシジルは、アップジョン社（現在はファイザー社）が開発した血管拡張薬で、元々は高血圧治療に使われていました。
しかし、多くの患者に「多毛症」という副作用が現れたため、薄毛治療に応用されるようになりました。
FDA（アメリカ食品医薬品局）に承認されたことから注目され、各国でミノキシジルを含む育毛剤が開発されました。
現在もAGAや薄毛の改善に有効な手段として広く利用されています。