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痩せる薬 安易に手を出すと危険です!【ダイエット GLP1製剤】
皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「痩せる薬 安易に手を出すと危険です」。
みなさんはSNSなどで「3ヶ月で-10kg痩せる」といったキャッチコピーの美容クリニックの広告は見たことがありますか?
その中でよく見るのがダイエット薬を使って痩せるという方法です。
今回はその中でもGLP1製剤について解説していきます。
このブログを読んでいただくことで、薬のデメリットや怖い副作用について知っていただき、日々の生活に役立てていただければ幸いです。
GLP1製剤って何?
この薬を使うことで血糖を下げ、脳卒中や心筋梗塞など血管系の合併症を予防するという医学的根拠のある薬として、病院やクリニックで使用されています。
美容クリニックでは、こちらをダイエット目的としても処方されています。
GLP1製剤の効果
現在数種類のGLP1製剤があり、その中でも一部のGLP1製剤はダイエット効果も高いということで美容クリニックで自由診療という形で使われています。
主なGLP1製剤(注射薬)
- セマグルチド(商品名:オゼンピック)
- リラグルチド(商品名:ビクトーザ)
- チルゼパチド(商品名:マンジャロ)
こういったお薬などがあります。
他にも飲み薬で
というものがあります。
これらのGLP1製剤の体への作用はほぼ同じです。週1回お腹などに皮下注射したり、毎日飲む飲み薬のタイプがあります。
それも普及しやすい大きな理由の1つかもしれません。
私たちが食事すると血糖値が上がります。
特に糖尿病の方は、月単位・年単位で慢性的に血糖値が高いため、合併症が出ないようにGLP1製剤を使用し、膵臓に働きかけてインスリンを分泌し、血糖を下げてくれます。
インスリンは血液の中に漂う血糖というエネルギーを筋肉や脳など、栄養を必要とする体中の細胞に届けてくれます。
このようにGLP1製剤は膵臓からインスリンを分泌して血糖を下げる効果があります。
その他のGLP1製剤の作用としては、
- GLP1製剤は脳に作用して食欲を落とす
- 胃や小腸などの消化感に働きかけて胃の動きを悪くする
こういった作用があります。
この作用によって
- 今までならもっと食べられたのがすぐにお腹がいっぱいになってしまって、それ以上食べれない
- 夜食べた翌日もまだお腹に食べ物が残っているような気がしてムカムカして食べる気にならない
そういった感じになるんですね。そのために食事量が減り、体重も減っていくという感じです。
GLP1製剤にも色々とあると言いましたが、しっかりとした研究に基づくお薬です。
例えば「ニューイングランドジャーナルオブメディスン」という世界でも一流の医学雑誌の中に、こういった研究があります。
第1群…セマグルチド(商品名:オゼンピック) 2.4mgを週1回皮下注射
第2群…プラセボ群
女性(74.1%)白人(75.1%)
平均年齢:46歳
平均体重:105.3kg
平均BMI(体重を身長の2乗で割った):37.8
平均ウエスト周囲径:114.7cm
糖尿病予備軍:43.7%
上記の研究は、かなり肥満の患者さんを対象にした研究であるということが分かります。
BMIが37.8というのは、例えば
身長160cm 体重96.7kg
こういった体重になります。
GLP1製剤を使っていた人たち…体重が-15.3kg減
プラセボ群…-2.6kg減
体重の変化率で言うとベースラインから-14.9%も体重が減ったということになります。驚きの数字ですよね。
この研究を読みとく上で大事なポイントがあります。
日本で糖尿病の患者さんに使う場合、このセマグルチドの注射は上限1日1.0mgなのですが、この研究では1日2.4mgと高用量のものが使われています。
ダイエットクリニックですと、上限2.0mgぐらいまで使うことが多いようです。
またこの研究ではセマグルチドの群もプラセボ群も元々体重を維持するカロリーから-500kcal程度引いた食事療法を行っており週に150分程度の有酸素運動をを守るようにですねサポートされて研究が行われています。
ですから、単純に食べて薬だけ打っていたということではないということは理解しておいてください。
実は私も同じように思っています。
美容クリニックでこのお薬をもらう方は、周りから見たらそれほど太っていない方、もしくは痩せているように見えるような方でも、InstagramやYouTubeを見て
- あんな風に綺麗な女性に近づきたい
- あの芸能人と同じようにウエストを細くしたい
といったイメージを持って客観的にはBMIが20~25といった肥満でない方も使うケースも多いです。
GLP1製剤のデメリット・怖い副作用
GLP1製剤の大きなデメリットの1つは、
です。
食べないで痩せるということは、どんなことが起こると思いますか?
私たちはこうして立っている間も喋っている時も、エネルギーを必要としますよね。
- 寝ている時も心臓は動いている
- 肝臓は体にとっていらないものを解毒
- 腎臓はいらないものを尿として外に出そうとする
体というのは24時間フル稼働です。
ですから、何もしていなくても私たちは糖分というエネルギーを必要としています。そのために毎日3食食べているわけですよね。
ですがこの薬を使うことで
- 吐き気
- 胃もたれ
といった消化器症状、つまり副作用が出ることで痩せるわけですから、必要とするエネルギーが足りなくなるということが考えられます。
ですが体はエネルギーを必要とするので、食べない分どこからかエネルギーを補充しなければいけません。
通常私たちが食事をしないと体にある脂肪はもちろん筋肉や骨も分解してエネルギーにします。
ですから食べないでダイエットをしていると、筋肉は細くなっていき骨も分解されるので将来、骨粗鬆症になるリスクも上がっていきます。
この薬は、結構なお値段ですし、吐き気も辛いです。ですから長期間続けるというのは現実的な方法ではありません。
例えば3ヶ月4ヶ月6ヶ月と使ってお薬をやめた場合、その段階で体重は減っていても基礎代謝(1日に何もしないでも消費するカロリー)自体は減っています。
ですからダイエットする前と同じもの・同じ量を食べていると、
- 前よりもかって太りやすくなる
- 細くなった筋肉のスペースを埋めるように脂肪がついてくる
- 結果的にぽっちゃりとした体になる
こんなことが起こってしまいます。
また女性は50歳前後から更年期となり、閉経をし、骨密度が減って骨粗鬆症が進行していきます。
それなのに20~40代で食べないダイエットをすることで、さらに将来骨粗しょう症のリスクが増え、転倒・骨折して寝たきりというリスクが上がってしまうことは、容易に想像がつきますね。
また50~70代と歳が進むにつれ問題になるのがサルコペニアといって、筋肉が減ることで、転びやすくなったり寝たきりになるリスクが上がるということです。
その大切な時期に筋肉を削り落としてしまうというのは、さらにリスクが上がってしまうと言ったら理解していただけるでしょうか?
また基礎代謝が落ちるのに同じ量を食べていくと、当然糖尿病になるリスクも上がっていきますから、食欲を落として食べないダイエットをしていくということが、いかに色々なリスクをはらんでいるかということが分かると思います。
先ほどの研究によるとセマグルチドを使うことでの有害事象、つまり副作用についてもしっかりと報告されています。
胃腸障害 74.2%
(典型的には吐き気、下痢、嘔吐、便秘)▼プラセボ群
胃腸障害 47.9%
(典型的には吐き気、下痢、嘔吐、便秘)
お腹の痛みや胆石(胆嚢に石が詰まって激痛を伴う病気)が発症するなど、かなり辛い副作用は、セマグルチドを使ったグループでは9.8%。プラセボ群では6.4%。1.5倍程度多かったという報告があります。
セマグルチドを使った群では、7%程度の方が副作用により途中で治療を中止しています。
3人のうち1人は過去に急性膵炎を患った経験があり、もう2人は胆石と膵炎を過去に起こしていたという既往歴があることが分かっています。
ですから胆石や急性膵炎を経験した方は、この薬を使うのはかなり危険だと思ってください。
実際に報道番組でもある患者さんがGLP1製剤を使って急性膵炎を起こしてしまったという体験談をお話しされていたのを覚えています。
GLP1製剤のデメリットは他にもあります。
この薬は100%自己負担で購入する必要があります。(糖尿病の方は医師の判断のもと保険診療で使用可能)
セマグルチド(商品名:オゼンピック)という注射薬は、ある美容クリニックのホームページを見ると、
1mg 1本 13,200円
2mg 1本 22,000円
と記載されていました。
糖尿病の患者さんがこのオゼンピック1mgを週1回注射で使用した場合、国が定めた薬価が「1mg 6,188円/本」になります。
1週間に1本使うので1ヶ月ですと24,110円になり、保険診料で3割負担の方でしたら、およそ7,400円の自己負担分で済みます。
もちろん他にも調剤料やクリニックでの診療費用なども発生しますから、あくまでもお薬だけにフォーカスした値段だと解釈してください。
何が言いたいかと言いますと、保険診療で処方してもらって支払う金額と、美容クリニックで支払う金額には大きな差があるということが分かります。
GLP1製剤をオススメする人とは?
世の中には数えきれないぐらい多くのダイエットを歌ったサプリメントがあります。1度購入して試したけれど、効果が出なかった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は世の中のサプリメントは、しっかりとした医学的研究がなされていないものがほとんどです。
ですが今回紹介したGLP1製剤は、医学的研究に基づいているものがほとんどです。
ですから使い方さえ間違えなければダイエットに役に立つと思います。
- なかなかダイエットが進まないけどきっかけとして使ってみたい方
- 食事や運動療法と併用してダイエットできる方
- 2ヶ月3ヶ月など短期間の使用にとどめて、あとは運動食事療法を意思や管理栄養士など専門家のアドバイスのもと取り組める方
こういった方には適していると思います。
また今回の研究でも紹介したようなBMIが30以上、あるいは体重が100kgを超えるような高度の肥満の方にも効果が出やすい薬だと思います。
女性の方で45~55kgなど、それほど太っていないけれども、周りの方が痩せてるから自分も痩せたいといった形で使ってみたいという方も多くいらっしゃると思います。
新薬について
ここからは2月に承認・販売される予定のウゴービ(肥満症治療薬)について簡単に触れたいと思います。
このウゴービという薬は、今まで説明したセマグルチドと全く同じ成分になります。
ウゴービという名前を変えて、保険診療として使える薬になります。
ただし保険で使えるようになるのには条件があります。
①BMI35以上
②BMI27以上
かつ下記から2つ以上条件がある方
1.耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2.脂質異常症
3.高血圧
4.高尿酸血症・痛風
5.冠動脈疾患
6.脳梗塞・一過性脳虚血発作
7.非アルコール性脂肪性肝疾患
8.月経異常・女性不妊
9.閉経性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10.運動器疾患(変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
11.肥満関連腎臓病
詳しくは「ウゴービ 肥満治療」といった形で検索してみてください。
動画
「痩せる薬 安易に手を出すと危険です!【ダイエット GLP1製剤】」について、動画でも詳しく説明しています。ぜひご覧ください!
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