「薬が残り少ないのに、病院や薬局に行けなくなったら困る」
「糖尿病や高血圧の薬は、数日なら飲まなくても大丈夫なのでは?」
台風、大雨、地震など、いつ起こるかわからない災害。いざという時は、避難場所や食事、水の確保に意識が向きやすく、持病の薬のことは後回しになりがちです。
しかし、糖尿病、高血圧、心臓病、喘息、てんかんなどで治療中の方にとって、薬が途切れることは体調悪化につながる場合があります。だからこそ、防災の日をきっかけに「薬がなくなった時にどう動くか」を家族と一緒に確認しておきましょう。
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。私は地域医療の最前線で25年の経験を持つ家庭医療専門医として、内科・糖尿病内科・小児科・皮膚科を中心に、日々さまざまな持病を抱える患者さんを診療しています。

結論:薬がなくなりそうでも、自己判断で中止せず、まず情報を伝えて相談してください
災害時に薬が手元になくなりそうな場合でも、「もう飲めないから仕方ない」とあきらめないでください。
まず大切なのは、避難先の救護所、近くの医療機関、薬局、またはかかりつけ医療機関へ、自分が何の病気で、どの薬を、どのくらい飲んでいるかをできるだけ正確に伝えることです。
お薬手帳、薬の袋、薬そのものの写真、薬の名前を撮影したスマートフォン画面などがあれば、医師・薬剤師が状況を把握しやすくなります。
災害時には、処方内容が安定している慢性疾患の薬について、薬歴、お薬手帳、薬の包装などで内容を確認できれば、医療機関への受診が難しい場合でも対応が検討される仕組みがあります(※1)。
つまり、薬がなくなった時にあなたを助けるのは、「薬の名前を正確に伝えられること」です。
特に自己判断で中止しない方がよい薬があります
すべての薬が同じではありません。数日程度の中断で大きな問題になりにくい場合もありますが、急にやめることで症状が悪化したり、危険な状態につながったりする薬もあります。
糖尿病の薬・インスリン
糖尿病治療中の方は、災害時に食事量が減ったり、普段と違う食事になったりして、血糖コントロールが大きく変わることがあります。
「食べていないから、糖尿病の薬やインスリンは全部やめた方がいいのでは」と考える方もいるでしょう。低血糖が心配になるお気持ちは、もっともです。
ただし、特にインスリンを使用している方や1型糖尿病の方では、自己判断で中断すると著しい高血糖や糖尿病ケトアシドーシスにつながるおそれがあります。食事量や血糖値、体調に合わせた調整が必要ですので、薬を中止する前に必ず医療者へ相談してください(※2)。
高血圧・心臓病の薬
高血圧の薬は、飲み忘れた直後に症状が出ないこともあります。しかし、避難生活では睡眠不足、精神的な緊張、塩分の多い保存食などが重なり、血圧が上がりやすくなります。
また、心臓病、不整脈、心不全などで治療中の方は、薬の中断が息切れ、むくみ、動悸、胸の症状につながることがあります。普段と同じ薬を確保できない場合でも、代わりの薬を含めて医師・薬剤師が判断しますので、薬の名前やお薬手帳を見せてください。
てんかん、喘息、精神科・心療内科の薬
抗てんかん薬、吸入薬、ステロイド薬、一部の睡眠薬や抗不安薬なども、急な中断に注意が必要です。
「恥ずかしいから持病を言いたくない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、避難先で医療者に伝えることは、あなたの体を守るための大切な情報共有です。病名をすべて詳しく説明できなくても、「毎日飲んでいる薬がある」「発作や呼吸苦が心配」「薬の名前はスマホにあります」と一言伝えるだけでも、対応が変わります。
持病の薬・防災の備えを一緒に確認しませんか
普段、当院に糖尿病・高血圧などで通院されている方で、薬がなくなってしまうとお困りになる場合は、治療が中断しないよう調整いたします。予約枠が埋まっている場合でも、あきらめずにお電話でご相談ください。状況を確認し、対応させていただきます。
お電話でのご相談:0475-36-7011
今から準備したい「薬の防災セット」
薬の備えは、特別な道具をたくさん買うことではありません。まずは、ご自分が飲んでいる薬の情報を、避難先でも確認できる状態にしておくことから始めましょう。
1.お薬手帳は「紙」と「スマホ」の両方で備える
紙のお薬手帳には、薬の名前、飲み方、アレルギーや副作用歴、かかりつけ医療機関・薬局などが記載されています。避難先で初めて会う医療者にも、必要な情報を短時間で伝えられます。
一方で、紙は濡れたり紛失したりすることがあります。電子版お薬手帳やマイナポータルと連携したサービスを利用している方は、スマートフォンでも薬の情報を確認できる場合があります(※3)。紙と電子の両方を用意しておくと、より安心です。
2.薬は「少し余裕を持って」受診・処方を相談する
薬が残り数日になってからでは、台風や大雨で移動が難しくなった時に対応しにくくなります。特に定期薬がある方は、次回受診の時期を確認し、残薬が少なくなる前に受診を計画しましょう。
ただし、自己判断で薬をため込んだり、飲む量を減らして無理に残そうとしたりすることはおすすめできません。
薬には使用期限や保管上の注意があり、治療内容によっては調整が必要です。普段の診察時に「災害への備えとして、薬はどの程度手元に置けばよいですか」と主治医や薬剤師に相談してください。
3.薬の保管方法を確認する
薬によっては、高温や湿気、凍結を避ける必要があります。インスリンなど冷所保存が必要な薬を使用している方は、停電時を含めた保管方法を、あらかじめ主治医や薬剤師に確認しておきましょう。
薬は、普段使う分を一か所にまとめ、避難時に持ち出せる場所に置くことがおすすめです。薬だけでなく、お薬手帳、保険資格情報、診察券、連絡先を一緒にしておくと、いざという時に探す時間を減らせます。
避難先で薬がなくなった時の行動順
- まず避難所の受付、救護所、近くの医療機関または薬局に相談する
- お薬手帳、薬の袋、薬の写真、薬の名前を見せる
- 病名、普段の飲み方、最後に薬を飲んだ時刻、アレルギー・副作用歴を伝える
- インスリン、吸入薬、抗てんかん薬、心臓病の薬などは、自己判断で中止せず早めに相談する
- いつもの医療機関につながる場合は、電話やオンライン診療を含めて相談する
災害時は、マイナンバーカードやお薬手帳を持参できない場合でも、本人の同意のもとで、氏名や住所などから薬剤情報・診療情報を確認できる仕組みが活用されることがあります(※4)。
ただし、すべての情報が必ずすぐ確認できるとは限りません。だからこそ、紙のお薬手帳、薬の袋、スマートフォン内の薬の写真といった「自分で渡せる情報」が、現場では大きな助けになります。
「まだ大丈夫」と思う今こそ、家族と確認しておきましょう
災害時の薬の備えは、不安を増やすためのものではありません。万が一の時に、落ち着いて助けを求められるようにするための準備です。
特に糖尿病や高血圧など、普段は症状がなくても治療を続ける必要がある病気では、薬を途切れさせないことが将来の健康を守ります。
今日できることは三つです。
- お薬手帳の場所を確認する
- 薬の残り日数を確認する
- 家族に「薬はここにある」と伝える
この三つだけでも、災害時の安心感は大きく変わります。
持病の薬・防災の備えを一緒に確認しませんか
普段、当院に糖尿病・高血圧などで通院されている方で、薬がなくなってしまうとお困りになる場合は、治療が中断しないよう調整いたします。予約枠が埋まっている場合でも、あきらめずにお電話でご相談ください。状況を確認し、対応させていただきます。
お電話でのご相談:0475-36-7011
参考文献
- ※1 厚生労働省.保医発0331第2号「災害等に係る保険診療の取扱いについて」.2026年3月31日.
- ※2 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂.
- ※3 厚生労働省.健康・医療電子版お薬手帳.
- ※4 厚生労働省.電子処方せん・電子処方箋.



