皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「放置厳禁!脂肪肝の原因と治療法5選」です。
私自身、毎日のように脂肪肝の患者さんを担当しています。
- 健康診断でBMIが25以上で肥満と指摘された
- メタボリックシンドロームと言われている
このような方はぜひこのブログを参考にしてください。
この脂肪肝という病気の原因となる生活習慣病を放置することで、糖尿病・高血圧・脂質異常症になりやすく、さらに心筋梗塞・脳卒中といったご自身の生活に大きな影響を与えかねない病気をするリスクが上がってしまう可能性もあります。
- 脂肪肝って肝臓にちょっと脂肪が溜まっているくらいなんじゃないの?
- ちょっとダイエットすれば治るんじゃないの?
そう思っている方、それは大きな間違いです。
実は最近の研究では、肝臓が脂肪を蓄えすぎることで肝臓自体が固くなる「線維化」という状態になってしまい、最終的には肝硬変、そして肝臓がんになる方が増えています。
肝臓がんは今までB型肝炎・C型肝炎が主たる原因と言われていました。
ただし最近は、脂肪肝に由来する肝臓がんも増えてきていると考えられています。
この脂肪肝の原因そして改善法を理解するということは、様々な病気の予防につながると思います。
目次
肝臓の役割
肝臓の役割1:エネルギー代謝・保存
例えばおにぎりを食べた場合に、最終的にブドウ糖というエネルギーの元に分解されますが、肝臓で一度グリコーゲンという形で保存してくれます。
さらに余分なエネルギーは中性脂肪に変換して蓄えてくれます。
それによって私たちの体がエネルギーを必要とした時、利用しやすくしてくれています。
肝臓の役割2:有害物質の解毒・分解
食べ物を食べたとき、体にとって要らないものは分解して腸から出す必要があります。
その時、体に害のないものに無毒化する役割も肝臓が担っています。
ですから、肝臓の機能が悪くなると害のあるものが体にたまってしまい、
- 体がだるくなる
- タンパク質が分解できずアンモニアとして体にたまり意識障害を起こす(肝硬変の末期)
ということが起こる可能性があります。
肝臓の役割3:胆汁の合成・分泌
胆汁というものが肝臓で作られ、胆嚢に貯蔵されているのですが、私たちが食べ物を食べた時、胆汁が腸に出て脂肪を吸収するための重要な役割を担っています。
また胆汁を通して肝臓が解毒した要らないものを腸の中に出そうとする役割も担います。
昔から肝心要(肝腎要)という言葉があるように、肝臓というのは、私たちにとって大変重要な代謝や、エネルギーの貯蔵、そして身体にとって害のあるものを解毒し、身体にとって必要なものを排泄したり吸収するためのとても大切な胆汁というものを作っている「24時間フル稼働の工場」のような存在です。
脂肪肝の種類とリスク
- 脂肪肝ってそもそもなんなの?
- なんで脂肪肝そんなに騒ぐの?
こういった疑問にお答えしていきます。
1980年代までは脂肪肝と言えばアルコールが原因でした。
1日にエタノール換算で60g/日以上のアルコールを飲む方が、かなりの確率で脂肪肝になっていました。
▼アルコール60gとは…
- ビール 大瓶3本
- ワイン 500cc
- 日本酒 3合
しかしながら1980年代後半から右肩上がりで増えているのが「非アルコール性脂肪肝」。
英語では「nonalcoholic fatty liver disease」で略して「NAFLD」と呼びます。
糖分や油の摂りすぎによる生活習慣に起因するものです。
こんな研究があります。
▼NAFLDの病気を持っている方の割合
2005~2008年 11%
※慢性の肝臓疾患の75%を占めている
いかに非アルコール性脂肪肝「NAFLD」が増えているかがわかると思います。
そしてNAFLDの中で10~20%の方が脂肪肝炎になるということがわかっています
肝臓の中に脂肪が溜まりすぎると、肝臓が
「もうこんなに脂肪をためられないよ」
「本来の役割ができなくなっちゃう助けて」
と、一種の防御反応を起こしてしまうんですね。
すると肝臓の中で「線維化」と言って硬くなってきてしまって、本来の肝臓の機能が発揮できなくなってしまいます。
これを「nonalcoholic steato-hepatitis」の略でNASH(脂肪肝炎)といいます。
NASHの方のうち5~10年で約5~20%の方が肝硬変になってしまうんですね。
肝硬変は名前のごとく、肝臓が硬く変わってしまった状態。
つまり肝臓が石のようにカチカチに硬くなってしまって、最初にお話ししたエネルギーを貯蔵したり、身体にとって悪影響のあるものを解毒する機能が発揮できなくなってしまいます。
肝硬変になってしまうと、
- 足がむくむようになる
- 黄疸と言って目が黄色くなってくる
- 疲れやすく怠くなってくる
このようにさまざまな症状が出てきて、命そのものに影響が出てきます。
場合によっては食道静脈瘤破裂と言って、食道静脈のところにこぶができて、あるときそれが破裂して大量出血で亡くなってしまうという怖い病気を引き起こすこともあります。
そしてさらに肝硬変になってしまった場合、100人中2人の方が肝臓がんを引き起こす(※1年当たりの計算)ということもわかっています。
実はただ肝臓に脂肪が溜まっている単純性脂肪肝(NAFL)の場合はほとんどの方は肝硬変や肝臓がんにならないと言われています。
ただしこの単純性脂肪肝も糖尿病や高血圧や脂質異常症をかなりの割合で合併するということがわかっています。
脂肪肝だからといって侮ることは大変危険です。
脂肪肝の原因
脂肪肝の原因の1つは「不必要にエネルギーを摂ってしまい、脂肪を蓄えてしまうこと」です。
30代後半くらいから右肩下がりで落ちる「基礎代謝量」。
生命活動の維持に最低限必要な消費カロリーのこと。
10代20代と同じような食生活を30代40代と続けていると、お腹周り、お尻周り、肝臓でエネルギーを蓄えてしまいます。
人類は歴史上ほとんどの期間を飢餓と戦いながら生きてきました。
そのため私たちの体は、エネルギーをため込む機能が豊富に備わっているんですね。
30代40代になり、基礎代謝が落ちたときに甘いジュースやお菓子、揚げ物などの高カロリー、高脂肪の食べ物を食べることで、体がどんどん脂肪を蓄えていきます。
そして毎日不必要にエネルギーを蓄えていくと、肝臓が炎症を起こしてしまいます。
食べ物のほかにも、運動不足が原因になります。
ある研究では、テレビを1日2時間以上見ている方は太りやすいという研究結果が出ています。
またデスクワーク主体の方は動く時間がとても少ないですよね。
患者さんからどのくらい体を動かすべきかよく聞かれるのですが、まずは家の片付けなど、1日30分体を動かしましょうとお話しています。
朝の散歩もオススメです。私自身、5~10分外を歩くようにしています。頭がスッキリして、夜もぐっすり眠れるようになります。
ちなみにある研究では睡眠時間が6時間以下(睡眠不足)、あるいは8時間以上(寝過ぎ)の方は太りやすくなるという結果が出ています。
また、糖質の摂りすぎにも注意です。
・うどん
・ジュース
・お菓子
・せんべい
こうしたものを摂り過ぎた場合、中性脂肪となって皮下脂肪になったり、肝臓の中に蓄えていってしまいます。
ニキビの油も中性脂肪です。甘いものや揚げ物は、すごく肝臓に負担がかかっているんですね。
肝臓の数値が高い場合に脂肪肝のことが多くあります。GOTまたはGPTと言ったりします。γ-GTPというのも糖分の取りすぎでも上がる傾向があります。
このGOT、GPT、γ-GTPというのは肝臓の細胞の中にある酵素です。
肝臓の中に脂肪が入ってくると、本来肝臓の中にある酵素が血液の中に逃げ出してきて炎症を起こします。そして血液中の濃度が高くなり、異常として現れます。
肝機能が高い場合にB型肝炎C型肝炎が隠れていることがあります。B型肝炎C型肝炎は放置すると肝硬変や肝臓がんを起こす可能性があります。
早めに医療機関を受診する必要があります。
ほかに肝臓の数値が高くなる要因として、以下のことが考えられます。
- 薬
- アルコール
- 甲状腺の病気
- 膠原病(自己免疫性肝炎)
太ってきたわけではなく、体重も変わらないのにGOT、GPTが3桁を超えてくるようでしたら、脂肪肝以外の原因が隠れている可能性があります。
早めに医療機関を受診して精密検査をすることをおすすめします。
脂肪肝の改善法1:減量
ある研究では体重の5%から7%の体重を落とすと脂肪肝が肝機能の数値も含めて改善するという研究結果が出ています。
70kgの方でしたら3.5~5kg落とせば脂肪肝はかなり改善すると思います。食事の際は、キノコとか海藻類、野菜から食べるのがオススメです。
こちらの動画でもお話していますが、炭水化物を白→茶色に変えてみましょう。
例えばそば、玄米。パンなら全粒粉やライ麦パンがオススメです。
脂肪肝の改善法2:油を変える
中性脂肪はグリセロール+3つの脂肪酸からなっていて、脂肪酸がどういった種類かによって動脈硬化になりやすいか・コレステロールが上がりやすいかが変わってきます。
青魚、えごま油、アマニ油に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」を摂るようにしましょう。
ある研究ではNAFLD(非アルコール性脂肪肝)の患者355人の患者を対象とした9つの研究のメタアナリシスで、オメガ3脂肪酸を投与することで肝臓の数値も含めて脂肪肝を改善したという研究結果が出ています。
例えばサラダを食べる際に、レタス、トマト、チーズの上からえごま油やアマニ油を大さじ1杯+リンゴ酢と黒コショウをかけるととても食べやすくなります。
あとはこちらの動画でもお話したさばの水煮や、オリーブオイルに漬けたさばの缶詰なんかもオススメです。
毎日の食事で簡単にできる方法から取り入れていただけると継続しやすくなると思います。
脂肪肝の改善法3:運動
1日30分家の片付けをする、本棚の整理、掃除機をかけるだけでもいいですし、大変な方はもっとハードルを下げて5分から、10分からでもぜひ始めてみてください。
運動は習慣化が大切です。
私自身は朝玄関に上下のジャージを置いておいて、起きたらそのまま外で散歩をするようにしています。
脂肪肝の改善法4:アルコールを控える
肝臓という24時間フル稼働の工場にとっては、アルコールを分解するのは大変大きな負担になります。
アルコールを控えるだけでも疲れやだるさがとれる方はたくさんいらっしゃいます。
一昔前の情報とは違い、今はごく少量のアルコールでも発がん性があるということがわかってきています。
晩酌が日課になっている方は、ぜひ休肝日を作るなど、アルコールの量を減らしてみてください。
アルコールの中でもカロリーが多いのは、日本酒、ビール、ワインになります。
そういった方は、ウイスキーのサワーや焼酎のお湯割り、水割り、ウーロン茶割りなどカロリーの低いものに変えてみましょう。
アルコール+糖分というのは肝臓を痛めつける最強のコンビです。
例えば、アルコールを食べた後にフルーツを食べる。
これは肝臓にとってはものすごい負荷になります。
こういった情報を分かっているだけでも5年後、10年後の肝臓の元気度というのは変わってきます。意識してみてください。
脂肪肝の改善法5:生活習慣病の治療
脂肪肝というのはメタボリックシンドロームの代表的な病気の一つです。
脂肪肝がある方というのは、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を合併しやすいというのも一つの特徴です。
すでに血圧が高い、糖尿病があるといった方はそちらの治療をしてください。脂肪肝は生活習慣の乱れを表す一つのSOSサインです。
そこに耳を傾け、ご自身の生活習慣を振り返ってみましょう。
高用量のビタミンEのサプリメントも脂肪肝にはいいというデータもありますが、一方でビタミンEのサプリメントは死亡リスクを高めるという研究結果も出ています。
医療従事者が推奨しない限り、ビタミンEのサプリメントの摂取はオススメできません。
今回のまとめ
1:脂肪肝が悪化すると死亡のリスクがあります
2:運動やアルコールを控えるなど、生活習慣を改善しましょう
3:お米、うどん、ジュース、お菓子など、糖質の摂りすぎに気をつけましょう
動画
脂肪肝の原因や治療法について、動画でも詳しく説明しています。ぜひご覧ください!