院長ブログ

健康診断の「要経過観察」は放置していい?健診結果の見方と受診の目安を医師が解説

健康診断の結果を見たら、「要経過観察」と書かれていた。

そんなとき、

「要精密検査ではないから、大丈夫なのかな?」
「病院へ行くようには書いていないし、来年の健康診断まで放っておいていい?」
「少し基準値を超えただけだから、気にしなくてもいい?」

と迷う方は少なくありません。

結論からいうと、「要経過観察」は、必ずしも今すぐ治療が必要という意味ではありませんが、「何もしないで放置してよい」という意味でもありません。

大切なのは、判定の文字だけを見るのではなく、

  • 何の項目が異常だったのか
  • 実際の数値はいくつだったのか
  • 昨年と比べて悪化していないか
  • いつ再検査するよう指示されているのか

まで確認することです。

この記事では、健康診断で「要経過観察」といわれたときの考え方を、血圧、コレステロール、肝機能、腎機能、そして血糖値・HbA1cを例にわかりやすく解説します。

こんにちは。千葉県長生村の「あまが台ファミリークリニック」院長の細田俊樹です。

医師歴25年、家庭医療専門医として、内科・糖尿病・小児科・皮膚科など幅広い診療に携わっています。

特に糖尿病については、日本糖尿病学会正会員として年間延べ約5,000人を診療しています。

「要経過観察」は放置していい?

まず知っておいていただきたいのは、「要経過観察」という言葉の使い方や判定記号は、健診機関によって異なることがあるという点です。

健康診断結果 2

健康診断や人間ドックでは、「異常なし」「軽度異常」「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」「要治療」など、さまざまな表現が使われます。

日本人間ドック・予防医療学会でも判定区分が示されていますが、実際の結果票の表示方法や再検査時期は健診施設によって異なります。(※1)

ですから、

「C判定だから大丈夫」
「要経過観察だから来年まで何もしなくていい」

と、判定名だけで判断するのはおすすめできません。

結果票に「3か月後再検査」「6か月後再検査」「医療機関を受診してください」などの記載がないか、まず確認してください。

健診結果を受け取ったら、まず確認してほしい4つのポイント

1.何の項目で指摘されたのか

同じ「要経過観察」でも、原因となった検査項目によって意味は異なります。

例えば、

  • 血圧
  • LDLコレステロール・中性脂肪
  • AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能
  • クレアチニン・eGFRなどの腎機能
  • 尿検査
  • 空腹時血糖
  • HbA1c

などがあります。

まずは「何が引っかかったのか」を確認するところから始めましょう。

2.判定だけでなく「実際の数値」を見る

次に大切なのが、実際の数値です。

「要経過観察」という同じ判定でも、基準値をわずかに超えているケースと、医療機関での確認を積極的に考えたい数値とでは意味が違います。

結果票に記載された基準値、今回の測定値、医師からのコメントを一緒に確認してください。

3.前年・前々年からの変化を見る

私はここをとても大切にしています。

健康診断は、今年の数値だけを見るのではなく、過去からの変化を見ることで価値が大きくなります。

例えば、HbA1cが、

  • 一昨年 5.4%
  • 昨年 5.7%
  • 今年 6.0%

と上がっている場合を考えてみましょう。

今年の6.0%という数字だけを見るより、「毎年少しずつ上昇している」という変化のほうが重要な情報になることがあります。

血圧、体重、コレステロール、肝機能などについても同じです。

4.「いつ再検査するか」を確認する

「経過を見る」という言葉は、「何もしない」という意味ではありません。

経過観察には、本来「いつ、何を確認するのか」が必要です。

結果票に「3か月後」「6か月後」など再検査の時期が書かれている場合は、その時期を目安に確認しましょう。

再検査時期が分からない場合や、前年より数値が悪化している場合は、かかりつけ医に結果票を見せて相談するのも一つの方法です。

血圧が「要経過観察」だった場合

血圧は、健診当日の緊張、睡眠不足、直前の運動、喫煙、カフェインなどの影響を受けることがあります。

そのため、健康診断で一度高かっただけで、すぐに高血圧と決めつけることはできません。

一方で、健診で毎年高い数値が続いているのに、「家では測っていない」「症状がないから大丈夫」と放置するのもおすすめできません。

血圧を指摘された場合には、可能であれば家庭血圧を測り、実際に普段から高いのかを確認することが重要です。

コレステロールや中性脂肪が「要経過観察」だった場合

LDLコレステロールや中性脂肪についても、単純に「基準値を少し超えたから薬が必要」「少ししか高くないから問題ない」とは判断できません。

年齢、喫煙、血圧、糖尿病の有無、腎臓病の有無、過去の心筋梗塞や脳梗塞などによって、動脈硬化のリスクは変わるからです。

特に、血圧、血糖、コレステロール、体重など複数の異常を同時に指摘された場合には、一つ一つを別々に考えるのではなく、生活習慣病全体として評価することが大切です。

肝機能が「要経過観察」だった場合


健康診断では、AST、ALT、γ-GTPなどの異常を指摘されることがあります。

原因には飲酒だけではなく、脂肪肝、薬剤、ウイルス性肝炎などさまざまなものがあります。

「お酒をあまり飲まないから肝臓は大丈夫」とは限りません。

体重増加や血糖値、中性脂肪の上昇とともに肝機能が悪化している場合には、代謝異常に伴う脂肪肝などについて確認が必要になることがあります。

腎機能が「要経過観察」だった場合


腎機能では、クレアチニンやeGFR、尿蛋白などを確認します。

腎機能の数値は年齢、筋肉量、脱水などの影響も受けるため、一度の結果だけでは判断できないことがあります。

一方で、腎臓の病気も初期には自覚症状がないことがあります。

そのため、以前の健診結果と比較しながら、eGFRが継続的に低下していないか、尿蛋白が続いていないかを見ることが重要です。

特に見逃したくないのが「血糖値」と「HbA1c」です

そして、健康診断の中でも特に注意していただきたい項目の一つが、血糖値とHbA1cです。

その理由は、糖尿病やその前段階では、血糖値が高くても自覚症状がほとんどないことが珍しくないからです。(※2)(※3)

「のども渇かない」
「尿も増えていない」
「元気だから大丈夫」

というだけでは、血糖に問題がないとは言い切れません。

空腹時血糖とHbA1cは何が違う?

空腹時血糖は、採血した時点の血糖値を確認する検査です。

一方、HbA1cは、直前に何を食べたかだけではなく、過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標です。

そのため、健康診断では血糖値とHbA1cを合わせて見ることが大切です。

空腹時血糖100mg/dL以上、HbA1c 5.6%以上だったら?

厚生労働省の特定健康診査では、空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1c 5.6%以上が、生活習慣を見直すための保健指導判定値として用いられています。(※2)

これは、

「HbA1cが5.6%を超えたら糖尿病」

という意味ではありません。

むしろ、まだ糖尿病と診断される段階ではなくても、将来の血糖上昇を防ぐために体重、食事、運動などを見直すきっかけにしてほしい数値と考えると分かりやすいでしょう。

健診で「HbA1cが高い」と言われた方へ

HbA1cが5.6%、6.0%、6.5%など、数値によって考え方は変わります。より詳しく知りたい方は、糖尿病専門サイトの「健診でHbA1cが高いと言われたら?」も参考にしてください。

空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上ならどうする?

日本糖尿病学会では、空腹時血糖126mg/dL以上などを「糖尿病型」の血糖値としています。また、HbA1c 6.5%以上も糖尿病の診断を考える重要な基準です。(※3)

ただし、ここは誤解してほしくないところです。

健康診断でHbA1cが6.5%だったから、その1回の数字だけで自分は糖尿病だと決めつける必要はありません。

糖尿病の診断は、血糖値、HbA1c、再検査の結果、症状などを組み合わせて行います。(※3)

一方で、

  • 空腹時血糖126mg/dL以上
  • HbA1c 6.5%以上
  • 前年より血糖値やHbA1cが大きく上昇している

といった場合には、来年の健康診断までそのまま待つのではなく、一度医療機関で確認することをおすすめします。

「血糖値が高いと言われたけれど、どこを受診したらよいのか分からない」という方は、血糖値が高いと言われたら何科を受診する?も参考にしてください。

「症状がないから大丈夫」は、健康診断では通用しないことがあります

患者さんから、

「でも、何も症状がないんですよ」

と聞くことがあります。

お気持ちはよく分かります。

体調がいつも通りなら、「病院に行くほどではない」と思うのは自然なことです。

しかし、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などは、初期には症状が乏しいことがあります。

だからこそ、健康診断には意味があります。

症状が出てから病気を探すのではなく、症状がない段階で変化を見つけるために健診を受けているからです。

「少しだけ高いから大丈夫」と考える前に、前年の結果を見てください

健診結果を見るときに、ぜひ習慣にしていただきたいことがあります。

今年の結果票だけではなく、昨年、できれば2〜3年前の結果も一緒に見ることです。

例えば、体重、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、ALTなどが少しずつ悪化している場合、一つ一つは「軽度異常」でも、全体として生活習慣病のリスクが高まっていることがあります。

一方、一時的に数値が外れただけで、その後正常に戻るケースもあります。

だからこそ、「今年は基準値内か基準値外か」という二択ではなく、時間の流れの中で数値を見ることが重要です。

健診結果について医療機関へ相談するときは、過去の結果も持参してください

健康診断の結果について受診するときは、今年の結果票だけではなく、可能であれば過去2〜3年分の健診結果をお持ちください。

過去の数値があると、

  • 今回だけの一時的な異常なのか
  • 毎年同じ程度なのか
  • 徐々に悪化しているのか
  • 複数の生活習慣病リスクが同時に増えているのか

を判断しやすくなります。

また、現在服用している薬がある方は、お薬手帳も一緒に持参するとよいでしょう。

よくある質問

Q.「要経過観察」なら、来年の健診まで待ってもいいですか?

結果票に「12か月後再検査」などと明記され、数値の変化も小さい場合には、次回健診での確認となることもあります。

ただし、前年より悪化している場合、複数項目で異常がある場合、再検査時期がよく分からない場合には、医療機関で一度相談することをおすすめします。

Q.基準値を少し超えただけなら気にしなくてもいいですか?

一度だけわずかに基準値を外れたからといって、必ず病気というわけではありません。

ただし、昨年より悪化していないか、同じ異常が何年も続いていないかを確認することが大切です。

Q.健診の前日に食べ過ぎたから血糖値が高かったのでしょうか?

血糖値は採血時の食事条件によって影響を受けます。

一方、HbA1cは直前の食事だけでは大きく変化せず、過去1〜2か月程度の血糖状態を反映します。

そのため、血糖値だけでなくHbA1cや採血時の条件を合わせて判断します。

Q.HbA1c 5.7%なら糖尿病ですか?

HbA1c 5.7%だけで糖尿病と診断されるわけではありません。

ただし、厚生労働省の特定健診ではHbA1c 5.6%以上が保健指導判定値の一つになっていますので、体重や食生活、運動習慣を見直し、今後の推移を確認するきっかけにしてください。(※2)

Q.健診結果だけ持って受診してもいいですか?

はい。健診結果について相談する場合には、とても重要な資料になります。

可能であれば過去2〜3年分の結果と、お薬を飲んでいる方はお薬手帳もお持ちください。

まとめ|「要経過観察」は「何もしなくてよい」という意味ではありません

健康診断で「要経過観察」と書かれていても、必要以上に怖がる必要はありません。

ただし、

「要精密検査ではないから放置していい」

という意味でもありません。

結果を受け取ったら、

  • 何の項目が異常だったのか
  • 実際の数値はいくつだったのか
  • 昨年・一昨年と比べてどう変化したのか
  • 再検査はいつ必要なのか

を確認してください。

特に、血糖値やHbA1cの異常は、症状がないうちから見つかることがあります。

健診で異常を指摘されたことを、必要以上に怖がる必要はありません。

むしろ、病気が進んでからではなく、今の段階で生活習慣や健康状態を見直せる機会が見つかったと考えてみてください。

健康診断で血糖値・HbA1cが高かった方へ

健診結果をご持参いただければ、今回の数値だけでなく、これまでの変化も確認しながら、必要な検査や生活改善、治療について一緒に整理します。

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参考文献

  1. 日本人間ドック・予防医療学会.2026年度判定区分表、血糖に関する判定区分の改訂(2026年4月施行).
    検査表の見方 - 日本人間ドック・予防医療学会
    ご質問の対象は「基本検査項目」の判定区分、マニュアルのみとし、本学会会員の方のみに回答しております。 電話での
  2. 厚生労働省.特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準に基づく血糖検査の判定基準.
  3. 日本糖尿病学会.糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告/糖尿病診断基準.
    糖尿病診断基準|一般社団法人日本糖尿病学会
    一般社団法人日本糖尿病学会公式web
この記事の監修者
細田 俊樹
  • 医療法人社団緑晴会 あまが台ファミリークリニック 理事長
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医
  • 日本糖尿病学会正会員、日本睡眠学会所属、日本肥満学会所属

年間15,000人以上の患者さんを診察している総合診療専門医。
総合診療という専門分野を生かし、内科、皮膚科、小児科、生活習慣病まで様々な病気や疾患に対応している。
YouTubeでよくある病気や患者さんの疑問に対して解説している