健康診断で「尿潜血が陽性です」と言われたけれど、痛みもなく、体調も悪くない。
あるいは、トイレで尿が赤くなっていることに気づき、
「膀胱炎だろうか」
「がんだったらどうしよう」
「一度だけなら様子を見ても大丈夫だろうか」
と、不安になっていませんか?
血尿には、膀胱炎や尿路結石のような比較的よくある病気から、腎炎、膀胱がん、腎盂・尿管がんなど、早めに見つけたい病気まで、さまざまな原因があります。
一方で、健康診断の尿潜血が陽性だったからといって、すぐに重大な病気があるとは限りません。
大切なのは、必要以上に怖がることでも、「症状がないから大丈夫」と放置することでもなく、どのような血尿なのかを確認し、危険度に応じて必要な検査を選ぶことです。
この記事では、血尿や尿潜血を指摘されたときの考え方、受診の緊急性、検査の流れを、患者さんにもわかりやすく解説します。
この記事を監修・執筆している医師
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私は医師として25年間、地域医療の最前線で診療を続けている家庭医療専門医です。
総合診療では、血尿を「泌尿器だけの症状」として見るのではなく、尿路感染症、尿路結石、腎臓病、薬剤、全身疾患なども含めて、体全体から原因を考えます。
血尿の診療で重要なのは、すべての方に同じ検査を一律に行うことではありません。
肉眼で赤く見えるのか、健康診断だけで指摘されたのか、痛みや発熱があるのか、蛋白尿や腎機能低下を伴うのか、年齢や喫煙歴がどうかによって、優先すべき検査が変わります。
患者さんが「次に何を調べるのか」「なぜ専門医を紹介されるのか」を理解できるように診療することを、当院では大切にしています。
血尿とは?尿潜血陽性とは同じではありません
血尿とは、尿の中に赤血球が混じっている状態です。
血尿は、大きく次の2種類に分かれます。
肉眼的血尿
尿が赤色、ピンク色、赤褐色などに見え、目で血尿だとわかる状態です。
顕微鏡的血尿
見た目は通常の尿ですが、尿沈渣を顕微鏡で調べると、一定数以上の赤血球が確認される状態です。
日本の血尿診断ガイドラインでは、顕微鏡的血尿は、尿沈渣で赤血球が5個/HPF以上、または無遠心尿で20個/μL以上確認された状態と定義されています。※1
尿潜血陽性だけでは、本当の血尿とは限りません
健康診断では、多くの場合、試験紙を尿につける「尿潜血検査」が行われます。
尿潜血検査は便利なスクリーニング検査ですが、赤血球そのものだけでなく、赤血球から出たヘモグロビンや、筋肉由来のミオグロビンにも反応することがあります。
そのため、尿潜血が陽性だった場合は、尿沈渣という検査で、実際に赤血球が混じっているかを確認することが基本です。※1
「尿潜血が1+だから、血尿が確定したのではないですか?」と思う方もいるでしょう。
そのように考えるのは自然です。しかし、尿潜血検査はあくまで入口の検査です。
まずは適切な条件で尿を取り直し、尿沈渣で赤血球の有無を確認することが、過剰な心配や不要な検査を減らすためにも重要です。
血尿の原因はどこにあるのでしょうか?
尿は、腎臓で作られ、腎盂、尿管、膀胱、尿道を通って体外へ出ます。
この通り道のどこかに出血や炎症があると、血尿が起こります。
また、腎臓の中にある「糸球体」という血液をろ過する部分の病気でも、血尿が起こります。
よくみられる血尿の原因
- 膀胱炎などの尿路感染症
- 尿管結石、腎結石、膀胱結石
- 前立腺肥大症
- 激しい運動後の一過性血尿
- 月経血の混入
- 泌尿器科的な処置やカテーテルによる刺激
- 外傷
見逃したくない血尿の原因
- 膀胱がん
- 腎盂がん、尿管がん
- 腎がん
- 糸球体腎炎、IgA腎症などの腎臓病
- 重症の尿路感染症
- 尿の流れを妨げる結石や腫瘍
日本泌尿器科学会は、肉眼的血尿を重要な病気のサインとしており、膀胱がんの多くが肉眼的血尿をきっかけに発見されると説明しています。※2
ただし、血尿が出たからといって、すべてががんという意味ではありません。
実際には感染症や結石など、がん以外の原因も多くあります。
それでも肉眼的血尿を放置しない方がよい理由は、痛みのない血尿の中に、早期の尿路がんが隠れていることがあるためです。
痛みがある血尿と、痛みがない血尿の違い
血尿の原因を考えるとき、痛みや発熱などの随伴症状が重要な手がかりになります。
排尿時に痛みがあり、トイレが近い
排尿時痛、頻尿、残尿感を伴う場合は、膀胱炎などの尿路感染症が考えられます。
女性では膀胱炎が比較的多く、血尿が混じることもあります。
ただし、発熱、腰や背中の痛み、吐き気、寒気がある場合は、感染が腎臓まで及ぶ腎盂腎炎の可能性があります。
単純な膀胱炎と思い込まず、早めの受診が必要です。
脇腹や背中に突然の激痛がある
片側の脇腹から背中、下腹部、鼠径部にかけて強い痛みが出る場合は、尿管結石が考えられます。
結石が尿管を傷つけるため、多くの場合で血尿を伴います。
痛みが非常に強い、嘔吐して水分が取れない、発熱がある、尿が出ない場合は、緊急性が高くなります。
痛みのない肉眼的血尿
痛みのない肉眼的血尿は、特に放置してはいけない症状です。
痛みがないと、「自然に治ったから大丈夫」と思いやすいのですが、膀胱がんや腎盂・尿管がんでは、血尿が一度出た後、一時的に消えることがあります。
「一回だけだった」「翌日には透明になった」という場合でも、原因がなくなったとは限りません。
特に、中高年、喫煙歴がある方、過去にも血尿があった方では、泌尿器科での詳しい評価が必要です。※2、※3
コーラ色、紅茶色の尿
コーラや濃い紅茶のような色の尿に、蛋白尿、むくみ、血圧上昇、腎機能低下などを伴う場合は、糸球体腎炎など腎臓の病気を疑います。
風邪や扁桃炎の後に尿が褐色になった、足や顔がむくむ、尿量が減ったという場合も注意が必要です。
このタイプは、泌尿器科だけではなく、腎臓内科での評価が必要になることがあります。※1
すぐに受診した方がよい血尿のサイン
次の症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください
- 血の塊が出る
- 血尿が濃く、尿が出にくい、または出ない
- 強い腰痛、脇腹痛、下腹部痛がある
- 発熱、悪寒、吐き気を伴う
- ふらつき、動悸、冷や汗、顔色不良がある
- 腎臓が一つしかない状態で血尿が出た
- 妊娠中に血尿が出た
- 抗凝固薬を飲んでいて、肉眼的血尿が続いている
- 尿量が急に減った
- 血尿に加えて、むくみや息苦しさがある
特に、血の塊で尿道や膀胱の出口が塞がり、尿が出なくなる「血塊による尿閉」は、早急な処置が必要です。
血尿のように見えて、血尿ではないこともあります
赤い尿や茶色い尿が、必ずしも赤血球による血尿とは限りません。
- ビーツなど一部の食品
- 薬剤による尿の着色
- 月経血や性器出血の混入
- 脱水による濃い尿
- 肝臓・胆道疾患によるビリルビン尿
- 激しい運動や筋肉障害によるミオグロビン尿
- 赤血球が壊れたことによるヘモグロビン尿
尿の色だけで出血部位や原因を正確に判断することはできません。
「赤く見えたけれど、検査では赤血球がなかった」という場合にも、別の病気が隠れていないかを確認する必要があります。
血尿を診察するとき、医師は何を確認するのか
血尿の診療では、尿検査だけでなく、症状や背景を詳しく確認します。
問診で確認する主な項目
- 肉眼で赤く見えたのか、健診で尿潜血を指摘されたのか
- 血尿は初めてか、過去にもあったか
- 排尿時痛、頻尿、残尿感があるか
- 発熱、腰痛、脇腹痛があるか
- 血の塊が出たか
- 尿の最初だけ、最後だけ、全体が赤いのか
- 月経や性器出血が混じる可能性があるか
- 激しい運動、外傷、泌尿器科処置がなかったか
- 喫煙歴があるか
- 抗凝固薬、抗血小板薬を使用しているか
- 職業上、化学物質への曝露歴があるか
- 体重減少、食欲低下、倦怠感がないか
「血液をサラサラにする薬を飲んでいるから、血尿が出ても当然ではないですか?」と考える方もいます。
確かに、抗凝固薬や抗血小板薬によって出血が目立ちやすくなることはあります。
しかし、薬を飲んでいることだけで血尿の原因を説明し、尿路の病気を除外してよいわけではありません。
薬を自己判断で中止せず、処方医と相談しながら、血尿の原因を調べることが大切です。
血尿に対して行う検査
1.尿検査・尿沈渣
最初に、尿中の赤血球、白血球、蛋白、細菌などを確認します。
尿潜血が陽性でも、尿沈渣で赤血球が確認されなければ、ヘモグロビン尿やミオグロビン尿などを考えます。
赤血球の形が不ぞろいな「変形赤血球」や赤血球円柱、蛋白尿を伴う場合は、糸球体腎炎など腎臓由来の血尿が疑われます。※1
2.尿培養検査
膀胱炎や腎盂腎炎が疑われる場合は、尿中の細菌を調べます。
繰り返す尿路感染症、男性の尿路感染症、妊婦、治療に反応しにくい場合などでは、原因菌と有効な抗菌薬を確認することが重要です。
3.血液検査
血液検査では、腎機能、炎症反応、貧血などを確認します。
- クレアチニン、eGFRによる腎機能評価
- 白血球、CRPによる感染・炎症評価
- ヘモグロビンによる貧血評価
- 必要に応じて免疫・補体などの検査
4.腹部超音波検査
超音波検査は、放射線被曝がなく、痛みもほとんどない検査です。
腎臓の腫瘍、腎嚢胞、水腎症、一部の結石、膀胱内の異常などを確認するために役立ちます。
ただし、小さな尿路上皮がんや尿管病変など、超音波だけでは見つけにくい病気もあります。
超音波で異常がないから、すべての病気を完全に否定できるわけではありません。
5.CT検査
尿路結石が疑われる場合、CTは結石の位置、大きさ、尿の流れへの影響を確認するために有用です。CTが必要と思われる方につきましては、CT検査ができる医療機関にご紹介しています。
尿路がんのリスクが高い場合は、造影剤を使用して腎臓、腎盂、尿管、膀胱を評価するCT urographyが検討されます。※1、※3
腎機能低下や造影剤アレルギーがある場合は、検査方法を個別に調整します。
6.尿細胞診
尿細胞診は、尿中にがん細胞が混じっていないかを調べる検査です。
特に悪性度の高い尿路上皮がんの発見に役立つことがあります。
ただし、尿細胞診が陰性でも、がんを完全に否定できるわけではありません。
7.膀胱鏡検査
膀胱鏡は、細い内視鏡を尿道から入れて、膀胱の中を直接観察する検査です。
※膀胱鏡をした方が良いと思われる患者さんにつきましては、泌尿器科専門医のいる医療機関をご紹介させていただいています。
膀胱がんなど、超音波やCTだけでは見つけにくい小さな病変を確認するために重要です。
「膀胱鏡は怖いので、超音波だけではだめですか?」と不安になる方も多いと思います。
そのお気持ちはよくわかります。
しかし、年齢、喫煙歴、血尿の程度、肉眼的血尿歴などから尿路がんのリスクが高い場合、膀胱の内側を直接見ることが重要です。
すべての患者さんに膀胱鏡が必要なわけではなく、リスクを評価したうえで泌尿器科医が判断します。
当院での血尿診療の流れ
STEP1 症状と背景を確認します
肉眼的血尿か、健診での尿潜血か、排尿時痛、発熱、腰痛、喫煙歴、服薬状況などを確認します。
STEP2 尿検査で血尿の性質を確認します
尿潜血だけでなく、尿沈渣、蛋白尿、白血球、細菌などを確認し、感染症、腎臓由来、泌尿器由来の可能性を整理します。
STEP3 必要に応じて血液検査・超音波検査を行います
腎機能、炎症、貧血を確認し、超音波検査で腎臓や膀胱の異常、水腎症、結石などを評価します。
STEP4 専門医による検査が必要か判断します
次のような場合は、泌尿器科や腎臓内科へ紹介します。
泌尿器科への紹介を考える場合
- 肉眼的血尿がある
- 非糸球体性血尿が疑われる
- 中高年で血尿が持続する
- 喫煙歴がある
- 尿細胞診、超音波などに異常がある
- 尿路結石、膀胱・腎臓・尿管の腫瘍が疑われる
- 血の塊や排尿困難がある
腎臓内科への紹介を考える場合
- 蛋白尿を伴う
- 変形赤血球や赤血球円柱を認める
- 腎機能が低下している
- コーラ色の尿が出る
- むくみ、血圧上昇、尿量低下がある
- 全身症状を伴う
血尿の原因が腎臓内科領域なのか、泌尿器科領域なのかは、患者さん自身では判断が難しいものです。
当院では、最初の尿検査と全身評価を行い、必要に応じて適切な専門医療機関へつなげます。
顕微鏡的血尿は、全員が同じ検査を受けるわけではありません
近年のガイドラインでは、顕微鏡的血尿の患者さんを、尿路悪性腫瘍の危険度に応じて評価する考え方が重視されています。※1、※3
主な判断材料は次のとおりです。
- 年齢
- 男性か女性か
- 尿中赤血球の数
- 血尿が持続しているか
- 肉眼的血尿の既往
- 喫煙歴
- 化学物質への職業性曝露
- 骨盤への放射線治療歴
- 一部の抗がん剤の使用歴
- 排尿刺激症状の有無
リスクが低い方では、一定期間後に尿検査を再検する選択肢があります。
一方、中等度以上のリスクがある場合は、泌尿器科で超音波、膀胱鏡、尿細胞診、CTなどを組み合わせて評価します。
これは、軽い血尿に対して全員にCTや膀胱鏡を行うのではなく、見逃しを減らしながら、検査による負担も抑えるための考え方です。
一度の再検査で陰性なら、もう大丈夫ですか?
一過性の血尿は、月経、激しい運動、尿路感染症、外傷などでも起こります。
原因がはっきりしており、治療後または一定期間後の再検査で消失すれば、その後は経過観察になることがあります。
一方で、次のような場合は、再検査や追加評価が必要です。
- 血尿が繰り返す
- 尿潜血が持続する
- 蛋白尿が出現した
- 腎機能が低下した
- 肉眼的血尿が新たに出た
- 排尿症状や痛みが加わった
- 尿路がんのリスク因子がある
「以前詳しく調べて異常がなかったから、今後も絶対に大丈夫」というわけではありません。
症状やリスクの変化に応じて、経過観察の方法を見直すことが大切です。
女性の血尿で注意すること
女性では、月経血や不正性器出血が尿に混ざり、尿潜血が陽性になることがあります。
月経中や月経直後の検査で陽性だった場合は、月経が終わってから、清潔な中間尿で再検査します。
ただし、「女性だから月経の影響だろう」と決めつけるのも適切ではありません。
閉経後の血尿、繰り返す肉眼的血尿、喫煙歴がある場合、痛みのない血尿などでは、泌尿器科疾患を除外する必要があります。
子どもの血尿について
学校検尿で尿潜血を指摘されるお子さんもいます。
小児では、一過性の血尿、運動、発熱、尿路感染症のほか、糸球体腎炎などが原因になります。
特に、蛋白尿、むくみ、高血圧、腎機能低下、低補体血症を伴う場合は、小児腎臓病を専門とする医療機関での評価が必要です。※1
元気があっても、尿潜血と蛋白尿の両方を指摘された場合は、放置せずご相談ください。
血尿についてよくある質問
血尿や尿潜血を指摘された患者さんから、診察室でよくいただく質問をまとめました。質問部分を押すと回答が開きます。
まとめ|血尿は「色」だけで判断せず、原因を整理することが大切です
血尿には、一過性のものから、膀胱炎、尿路結石、腎炎、尿路がんまで、さまざまな原因があります。
特に覚えていただきたいポイントは、次の5つです。
- 尿潜血陽性だけでは、本当の血尿とは限らない
- 尿沈渣で赤血球を確認することが基本
- 蛋白尿や腎機能低下があれば、腎臓病を疑う
- 痛みのない肉眼的血尿は、早めに泌尿器科で評価する
- 年齢、喫煙歴、肉眼的血尿歴などに応じて、必要な検査は変わる
血尿が出たからといって、必ず重大な病気があるわけではありません。
しかし、見た目が元に戻ったことと、原因がなくなったことは同じではありません。
不安を抱えたまま様子を見るのではなく、まず尿検査を行い、次に必要な検査を整理しましょう。
血尿・尿潜血を指摘された方へ
あまが台ファミリークリニックでは、尿検査、血液検査、症状や生活背景の確認を行い、腎臓内科・泌尿器科での精密検査が必要かを判断します。
赤い尿が出た方、健診の尿潜血を放置している方、膀胱炎を繰り返している方は、一度ご相談ください。
参考文献
- 血尿診断ガイドライン2023作成委員会. 血尿診断ガイドライン2023.
- 日本泌尿器科学会. 一般のみなさま「尿に血が混じる。血尿を指摘された」.
- American Urological Association, Society of Urodynamics, Female Pelvic Medicine & Urogenital Reconstruction. Microhematuria: AUA/SUFU Guideline. 2025 Amendment.
- 日本泌尿器科学会編. 膀胱癌診療ガイドライン2019年版 増補版.
※1 尿潜血陽性後の尿沈渣、蛋白尿、腎機能、赤血球形態の評価、および顕微鏡的血尿のリスク別診療について、血尿診断ガイドライン2023を参照しています。
※2 肉眼的血尿と尿路悪性腫瘍の関連、血尿に対する泌尿器科受診について、日本泌尿器科学会の一般向け情報を参照しています。
※3 年齢、喫煙歴、尿中赤血球数、肉眼的血尿歴などに基づくリスク別評価について、国内ガイドラインおよびAUA/SUFUガイドラインを参照しています。
この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個々の患者さんの診断を行うものではありません。肉眼的血尿、血の塊、尿が出ない、発熱や強い痛みなどがある場合は、早めに医療機関へご相談ください。


