『酸化マグネシウムならお腹が痛くならないし、毎日飲んでもクセにならないから安心』……そう思って、何年も飲み続けていませんか?
実は酸化マグネシウム、3割負担なら1錠わずか1.7円。実は250mgも500mgも同じ値段という、この安くて手軽な国民的便秘薬。実はこの『安心感』こそが、あなたの腸をダメにし、時には命に関わる『高マグネシウム血症』を招く最大の罠なんです。
なぜ『安全なはずの薬』が毒になるのか? 今日は年間14億錠も飲まれている薬の真のリスクと、お財布を守りながら薬を卒業する具体的なステップを、徹底解説します。最後に話す『飲むタイミング』一つで、あなたの便秘の悩みは劇的に変わります。

こんにちは。千葉県茂原市にある「あまが台ファミリークリニック」院長の細田俊樹です。
当院は、家庭医療専門医として、長生村、茂原市をはじめ千葉市や一宮町など、近隣の皆様の「体全体の健康」をサポートしています。
普段、外来で非常によく処方する便秘薬に「酸化マグネシウム(マグミット等)」があります。市販薬としても手軽に購入でき、「お腹が痛くなりにくい」「クセになりにくい」として、まさに国民的便秘薬とも言える存在です。

しかし、総合診療の専門医として、あえて厳しいことをお伝えしなければなりません。
この薬は、正しく使えば最高のパートナーですが、一歩間違えると「諸刃の剣」となります。
「便秘薬で命に関わるなんて大げさな」と思われるかもしれませんが、実際に高齢の方や腎臓が弱っている方では、意識障害などの重篤な副作用が報告されています。[※1]
この記事では、年間14億錠も飲まれているこの薬の「知られざるリスク」と、お財布に優しく、かつ安全に薬を卒業するための具体的なステップを解説します。
目次
酸化マグネシウムが選ばれる「驚きの理由」と価格の秘密
便秘薬には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 腸を叩く「ムチ」(刺激性):センナ、コーラック、プルゼニドなど。
無理やり動かすため即効性はあるが、腹痛や依存のリスクがある。 - 腸を潤す「アメ」(非刺激性):酸化マグネシウムなど。
水分を集めて柔らかくするため、痛くなりにくい。

多くの患者さんが酸化マグネシウムを選ぶ理由は「痛くないから」ですが、実はもう一つ、医療関係者しかあまり意識していない「圧倒的なメリット」があります。それが「価格」です。
【お財布に優しい秘密】
実はこの薬、250mg、330mg、500mgと規格が違っても、1錠あたりの薬価(国が決めた価格)は全て同じ「約5.9円」なのです。
| 規格 | 薬価(10割) | 3割負担の窓口額 |
| 250mg錠 | 5.90円 | 約1.7円 |
| 330mg錠 | 5.90円 | 約1.7円 |
| 500mg錠 | 5.90円 | 約1.7円 |
※2024年時点の薬価に基づく概算です。
成分が2倍になっても支払額が変わらない。この「安くて手軽」という安心感こそが、多くの人に愛用される理由であり、同時に「飲みすぎ」による副作用を招く落とし穴にもなっているのです。
酸化マグネシウムが効果を発揮するメカニズム
少し専門的な話をすると、この白い粉(酸化マグネシウム MgO)は、胃に入って胃酸と混ざることで『塩化マグネシウム』や『重炭酸マグネシウム』という物質に変化します。
この変化した物質がスイッチとなって、腸の中で水分をググッと引き寄せる性質を持っているんです。
つまり、『化学反応で腸に水を呼ぶ』。これが、この薬の正体です。
だからこそ、無理やり腸を叩くわけではないので、お腹が痛くなりにくいんですね。
しかし、先生方や薬剤師さんもあまり言わないのですが……実はこの『化学反応』こそが、後でお話しする『効かない原因』に、恐ろしいほど直結してくるんです。」

【警告】知らないと後悔する4つの危険な副作用
安易な服用は、以下のリスクを招く可能性があります。
1. 高マグネシウム血症(命のリスク)
最も注意が必要な副作用です。血液中のマグネシウム濃度が異常に高くなり、最悪の場合、心停止に至る可能性があります。
通常、余分なマグネシウムは「腎臓」というフィルターを通っておしっことして排出されます。
しかし、高齢者や糖尿病・高血圧で腎機能が低下している方は、このフィルターが目詰まりを起こしており、体内にマグネシウムが蓄積しやすくなります。[※2]
【こんな症状が出たらすぐ受診を】
- 吐き気・嘔吐
- 立ちくらみ・ふらつき
- 強い眠気(一日中ウトウトしている)
- 脈が遅くなる

特に「強い眠気」や「反応が鈍い」という症状は、ご家族から見ると「急に認知症が進んだのではないか?」「年だから老衰か?」と見過ごされがちです。
しかし、血液検査をすれば一発で判明し、治療可能な病態です。
2. 効きすぎによる脱水・電解質異常
下痢が続くと、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどのミネラルも失われます。「手足がつる」「体がだるい」といった症状は、薬による脱水のサインかもしれません。

3. 腸閉塞(イレウス)
非常に稀ですが、腸の中に硬い便が詰まっている状態で薬を飲むと、便が水分を吸って膨張し、腸を塞いでしまうことがあります。「激しい腹痛」「吐き気」「ガスも出ない」という場合は、無理に薬を使わず、直ちに病院を受診してください。
将来の「認知症」や「寝たきり」が心配な方へ
「便秘薬の副作用で意識がぼんやりする」というお話をしましたが、実は糖尿病や高血圧などの生活習慣病を放置すること自体が、将来の認知症リスクを劇的に高めることが分かっています。
認知症専門医ではないため「認知症の精密検査は実施していません」が、その手前にある「脳と体を守るための生活習慣病管理(糖尿病、高血圧、脂質異常症」に力を入れています。
「薬をもらうだけ」の通院は終わりにしませんか? 10年後も笑顔で過ごすために、私たちと一緒に今の健康をマネジメントしましょう。
※千葉県茂原市、千葉市、一宮町などから多くの患者様にご来院いただいています。
飲んでも出ない人がやりがちな「4つの間違い」
「副作用どころか、そもそも全然効かない」という方は、飲み方を間違えている可能性が高いです。
間違い①:空腹時に飲んでいる
酸化マグネシウムは、胃酸と反応して初めて効果を発揮します。胃酸が薄い空腹時に飲んでも、ただの石ころと同じで効果がありません。
また、胃薬(特にPPIなどの胃酸分泌抑制薬)を併用している場合、効果が半減するというデータもあります。[※3]
鉄則は「食後」あるいは「食事中」に飲むことです。

間違い②:効果が出る時間を勘違いしている
この薬は即効性がありません。飲んでから8〜10時間後に効果が現れます。
【医師推奨の最強タイミングは「夕食後」】
「胃酸が必要(食後)」かつ「8〜10時間後に効く」という条件を完全に満たすのが「夕食後」です。
例えば夜7時に飲めば、10時間後は翌朝の5時。ちょうど起きた頃に自然な便意が訪れます。
間違い③:すでに硬くなった便(出口の蓋)に出そうとしている
3つ目は、少しイメージしてほしいのですが、 『すでに出口でカチカチに固まってしまった便』に対して、酸化マグネシウムを使おうとしていませんか?
この薬は、これから作られる便に水分を含ませるものです。 すでに乾燥して『化石』みたいになった便に、後から水をかけても、すぐには柔らかくなりません。 むしろ、出口が塞がっているのに後ろから便が押し寄せて、腹痛の原因になります。
正解の飲み方は?
すでに出口で詰まっている(便栓塞)場合は、まずは刺激性下剤や浣腸などを使って、その『蓋』を排出するのが先決です。 そして、出し切った後、『次にできる便が硬くならないように』酸化マグネシウムで維持する。 この『排出』と『維持』の使い分けが、プロのテクニックです。

「……ただ、ここで勉強熱心な鋭い方なら、こう思ったかもしれません。 『先生、詰まっている時に無理やり刺激性下剤で動かしたら、逆に腸が破裂して危ないんじゃないですか?』と。
その通りです。本当に素晴らしい着眼点です。 実はそこが、『ただの便秘(便栓塞)』と『危険な腸閉塞(イレウス)』の運命の分かれ道になります。
私が今お話ししたのは、あくまで『元気だけど、出口で便が硬くて出ない』という場合です。 しかし、もし皆さんに以下の症状がある場合は、話が別です。
- 激しい腹痛がある
- 吐き気があり、実際に吐いてしまう
- 便はおろか、おなら(ガス)さえ全く出ない
もしこの症状がある時に、無理にプルゼニドやコーラックなどの『ムチ』を使うと、ご指摘の通り、腸がパンクする恐れがあり大変危険です。 痛みや吐き気がある時は、絶対に市販薬を使わず、すぐに病院に来てください。
逆に、『お腹は痛くないし元気だけど、お尻の出口で挟まって動かない』。この時だけ、先ほどの『蓋を開けるテクニック(浣腸や坐薬、少量の刺激性下剤)』を使ってください。この見極めが命を守ります。」ただこの見極めは、患者さん自身では難しいことが多いので、必ず主治医の先生に相談することが望ましいと思います。
間違い④:水分不足
これが基本にして奥義です。 『水を飲まずに薬だけ飲んでいる』。 酸化マグネシウムは『腸に水を引き込む薬』です。その材料である水がなければ、魔法は起きません。
正解の飲み方は?
ただ水を飲めばいいのではありません。 目安は『1日 1.0〜1.2リットル』を最低ラインとして意識してください。 そして大事なのは飲み方です。一度にガブ飲みするのではなく、『こまめに飲む』こと。
常に体の中を潤しておくことで、薬が常に腸に水分を引き込める状態を作っておく。これが、薬の効き目を最大化するコツです。
薬に頼らない!ドクター細田流「根本解決メソッド」
最終的なゴールは、薬からの卒業です。当院では以下の3つの習慣を推奨しています。
朝食後の「ゴールデンタイム」を逃さない
『朝は忙しいからトイレに行かない』という方。これ、一番もったいないです。
医学的に『胃・結腸反射(い・けっちょうはんしゃ)』という言葉があります。 空っぽの胃に朝食が入ると、その刺激で脳が『腸よ、動け!』と指令を出し、腸が大きくぜん動運動を始めます。 これは朝食後が一日で最も強いと言われています。

まさに排便の『ゴールデンタイム』です。 便意がなくても、朝食後に5分だけトイレに座る。まずはこの反射のリズムを体に取り戻してください。すると1週間から2週間ぐらいするとなんだか便が出るようになったと言う患者さんが多い印象があります
食物繊維の「10gルール」
次に食事です。 『野菜を食べてるつもり』の人が多いですが、量は足りていますか? 2012年の研究(メタアナリシス)では、『1日10g以上の食物繊維を摂取することで、排便回数が増え、便の硬さが改善した』というデータがあります。
10gというと、レタスなら3個分以上。結構大変です。 だからこそ、効率よく摂るために『水溶性食物繊維』を狙ってください。
海藻、納豆、オクラ、キウイなどです。これらは少量でも効率よく繊維が摂れ、さらに血糖値の急上昇も抑えてくれます。

睡眠と軽い運動
最後は睡眠と運動です。 腸はリラックスしている寝ている間に動きます。 そして、物理的に腸を揺らすことも大切です。 ジムに行く必要はありません。
『1日15分のウォーキング』や、『お腹を「の」の字にマッサージする』だけで十分です。
特にデスクワークの方は、腸が押し潰されて動きが止まっています。 通勤中に一駅歩く、お風呂上がりにマッサージする。これだけで薬1錠分の効果があると思ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 今日のまとめです。
- 酸化マグネシウムは安くて優秀だが、腎臓が弱い人は要注意。
- 『食後』『十分な水』『8時間後』の法則を守らないと効果半減。
- 朝食後の『胃・結腸反射』を利用して、自然な排便リズムを取り戻す。
ブログを見て、『私の飲み方、間違ってたかも』『怖いな』と不安になった方もいるかもしれません。
でも、大丈夫です。今日このブログを読んでいただけたことが、改善への第一歩です。 主治医と一緒に、あなたに一番合った治療法を見つけましょう。
将来の「認知症」や「寝たきり」が心配な方へ
「便秘薬の副作用で意識がぼんやりする」というお話をしましたが、実は糖尿病や高血圧などの生活習慣病を放置すること自体が、将来の認知症リスクを劇的に高めることが分かっています。
認知症専門医ではないため「認知症の精密検査は実施していません」が、その手前にある「脳と体を守るための生活習慣病管理(糖尿病、高血圧、脂質異常症」に力を入れています。
「薬をもらうだけ」の通院は終わりにしませんか? 10年後も笑顔で過ごすために、私たちと一緒に今の健康をマネジメントしましょう。
※千葉県茂原市、千葉市、一宮町などから多くの患者様にご来院いただいています。
参考文献
- ※1:厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報 No.252 (2008) 「酸化マグネシウムにおける高マグネシウム血症について」
- ※2:J Am Geriatr Soc. 2004;52(8):1371-1376. (高齢者における高マグネシウム血症のリスク因子に関する研究)
- ※3:Yamasaki M, et al. Eur J Pharmacol. 2014 Nov 15;743:123-7. (胃酸分泌抑制薬PPIの併用が酸化マグネシウムの緩下作用に与える影響)



