「しっかり寝たはずなのに、朝から体が重い」
「休日に長く寝ても、疲れが抜けない」
「午前中から眠くて、仕事や運転中にぼーっとしてしまう」
このような状態が続くと、「年齢のせいかな」「忙しいから仕方ない」と考えてしまう方も多いと思います。
もちろん、疲れが取れない原因は一つではありません。睡眠時間の不足、生活リズムの乱れ、血糖値の変動、ストレス、自律神経の乱れなど、さまざまな要因が関係します。
ただ、その中で意外と見落とされやすいのが、睡眠の質の低下です。特に、家族からいびきを指摘される方、寝ている時に息が止まっていると言われたことがある方、朝のだるさや日中の眠気が続く方では、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。
この記事でお伝えしたいこと
寝ても疲れが取れない原因は、単なる睡眠不足だけではありません。
特に、朝のだるさ、日中の眠気、いびき、血圧や血糖値の不安が重なっている方は、睡眠の質を一度見直すことが大切です。
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私は医師として25年、家庭医療専門医として地域医療に携わってきました。睡眠やいびきに関しては、日本睡眠学会に所属し、当院では年間1,500名以上の睡眠時無呼吸症候群やいびきに関する診療を行っています。
この記事では、「寝ても疲れが取れない」と感じる方が見落としやすい5つの原因について、できるだけわかりやすく解説します。
目次
寝ても疲れが取れないのは、気合いの問題ではありません
疲れが取れない状態が続くと、「自分の体力が落ちたのかな」「もっと頑張らないといけないのかな」と考えてしまう方がいます。
しかし、朝起きた時点で体が重い、日中に強い眠気がある、集中力が続かないという状態は、単なる気合いや根性で解決するものではありません。体が何らかのサインを出している可能性があります。
大切なのは、疲れの原因を一つに決めつけないことです。
睡眠時間、睡眠の質、血糖値、ストレス、いびきや無呼吸など、いくつかの角度から確認することで、改善の糸口が見えてくることがあります。
原因1:睡眠時間そのものが足りていない
まず最初に確認したいのは、睡眠時間です。
「寝ても疲れが取れない」と感じている方の中には、実際には睡眠時間が足りていない方も少なくありません。
平日は5時間前後しか眠れていない、夜遅くまでスマホを見ている、仕事や家事で就寝時間が後ろにずれ込んでいるという場合、体が十分に回復できないことがあります。
睡眠不足は、借金のように積み重なります
睡眠不足は、1日だけなら何とか乗り切れるかもしれません。しかし、何日も続くと、体と脳の回復が追いつかなくなります。
たとえるなら、睡眠不足は小さな借金のようなものです。1日30分、1時間の不足でも、毎日積み重なると、体にとっては大きな負担になります。
まずは、数日だけでも就寝時間を30分早めてみる、寝る前のスマホ時間を減らす、休日の寝だめだけに頼らないなど、睡眠時間を確保する工夫から始めてみましょう。
原因2:睡眠の質が悪くなっている
睡眠時間は十分に取っているはずなのに疲れが取れない方では、睡眠の質が低下していることがあります。
例えば、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅い、朝早く目が覚めてしまう、寝る直前までスマホやパソコンを見ている、寝酒をしているといった習慣があると、睡眠の質が下がりやすくなります。
睡眠は「長さ」だけでなく「中身」も大切です
睡眠は、スマートフォンの充電に似ています。コンセントにつないでいる時間が長くても、接触が悪ければ十分に充電されません。
同じように、布団に入っている時間が長くても、眠りが浅かったり、途中で何度も目が覚めたりすると、体と脳の回復が不十分になることがあります。
睡眠の質を下げやすい習慣
- 寝る直前までスマホを見ている
- 夕方以降にカフェインを多くとる
- 寝酒をしている
- 夜遅い時間に食事をする
- 寝室が明るい、暑い、寒い、音が気になる
- 休日だけ極端に長く寝る
「そんな基本的なことで変わるの?」と思う方もいるかもしれません。たしかに、すべての疲労が生活習慣だけで解決するわけではありません。
ただ、睡眠の質を下げる要因が重なっている場合、それを少し減らすだけでも朝の感覚が変わることがあります。まずは、できるところから整えることが大切です。
原因3:血糖値の乱れで、眠気やだるさが出ている
糖尿病や血糖値が気になる方では、血糖値の乱れが眠気やだるさに関係していることがあります。
特に、食後に強い眠気が出る方、昼食後に集中力が落ちる方、夕方になると急に疲れを感じる方では、食事内容や食べ方による血糖値の変動が関係している場合があります。
血糖値の急な変動は、体にとって負担になります
ごはん、麺、パン、甘い飲み物などを一度に多くとると、食後の血糖値が急に上がることがあります。その後、血糖値が下がる過程で、眠気やだるさを感じる方もいます。
もちろん、食後に眠くなるだけで糖尿病と決まるわけではありません。しかし、健診で血糖値やHbA1cを指摘されたことがある方、脂肪肝がある方、体重が増えてきた方では、血糖値の変動を一度確認しておくことが大切です。
血糖値の乱れが気になる方のチェックポイント
- 昼食後に強い眠気がある
- 甘い飲み物をよく飲む
- 麺類や丼ものなど、炭水化物中心の食事が多い
- 健診で血糖値やHbA1cを指摘されたことがある
- 脂肪肝を指摘されたことがある
- 体重が増えてきた
当院では、糖尿病や脂肪肝、体重管理に関するご相談も多く、国家資格をもつ管理栄養士5名と連携しながら、食事や生活習慣の見直しもサポートしています。
原因4:ストレスや自律神経の乱れで休めていない
疲れが取れない原因として、ストレスや自律神経の乱れも見逃せません。
仕事、家事、介護、子育て、人間関係などで緊張状態が続くと、布団に入っても頭が休まらないことがあります。体は横になっていても、脳がずっと仕事をしているような状態です。
「寝ているのに休めていない」ことがあります
ストレスが強い時は、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めたり、朝早く目が覚めたりすることがあります。
また、寝る前に仕事のことを考え続ける、スマホでニュースやSNSを見続ける、心配事を抱えたまま眠ると、睡眠の質が下がりやすくなります。
ストレスが関係していそうなサイン
- 布団に入っても考えごとが止まらない
- 夜中や早朝に目が覚める
- 寝ても頭がすっきりしない
- 肩こり、頭痛、胃の不調がある
- 休日も仕事や心配事が頭から離れない
「ストレスのせい」と言われると、気の持ちようのように聞こえてしまうかもしれません。しかし、ストレスは実際に睡眠や体調に影響します。
大切なのは、「気持ちが弱いから」と責めることではなく、体が休める環境を少しずつ整えることです。
いびき・朝のだるさ・日中の眠気も気になる方へ
疲れが取れない原因は一つではありません。ただ、家族からいびきや無呼吸を指摘された方、朝のだるさや日中の眠気が続く方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないか確認しておくことも大切です。
まずは、症状チェックや自宅でできる検査の流れを確認してみてください。
原因5:睡眠時無呼吸症候群が隠れている
ここまで、睡眠時間、睡眠の質、血糖値、ストレスについてお話ししました。
そして、寝ても疲れが取れない方で、特に見落とされやすい原因の一つが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に空気の通り道が狭くなり、呼吸が弱くなったり、一時的に止まったりする病気です。本人は寝ているため、自分では気づきにくいのが特徴です。
寝ている間に、体が何度も起こされている状態です
睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に呼吸が不安定になり、体が酸素不足に近い状態になります。すると、脳や体は危険を感じて、眠りを浅くして呼吸を再開させようとします。
本人は「朝まで寝ていた」と思っていても、体の中では何度も小さく起こされているような状態になることがあります。
そのため、睡眠時間は長いのに疲れが取れない、朝からだるい、日中に眠いという症状につながることがあります。

いびきや無呼吸は、本人よりも家族が先に気づくことがあります。
こんなサインがある方は注意が必要です
- 家族からいびきが大きいと言われる
- 寝ている時に息が止まっていると言われたことがある
- 朝起きても疲れが取れない
- 朝に頭痛や口の渇きがある
- 日中に強い眠気がある
- 運転中や会議中に眠くなる
- 高血圧、糖尿病、脂肪肝、肥満がある
- 首が太い、体重が増えてきた
上記のようなサインが1つよりも2つ、2つよりも3つある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
「いびきだけ」で病気と決めつける必要はありません
ここまで読むと、「いびきがあるだけで病気なのか」と不安になる方もいるかもしれません。
もちろん、いびきをかく方すべてが睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。疲れている時、飲酒後、鼻づまりがある時、仰向けで寝た時などに一時的にいびきが出ることもあります。
ただし、いびきに加えて、無呼吸の指摘、朝のだるさ、日中の眠気、高血圧や糖尿病などが重なっている場合は、一度確認しておく価値があります。
睡眠時無呼吸症候群は、検査で確認できます
睡眠時無呼吸症候群は、症状や問診だけで確定する病気ではありません。
診断には、睡眠中の呼吸状態を確認する検査が必要です。成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断では、問診や診察だけでなく、睡眠検査と組み合わせて評価することが推奨されています。※3
最近では、医療機関の判断のもと、自宅でできる簡易検査から始めることもあります。専用の機器を使って、睡眠中の呼吸や酸素の状態などを確認します。
「検査というと大がかりで不安」と感じる方もいますが、まずは今の症状を相談し、検査が必要かどうかを確認することから始めれば大丈夫です。
CPAP治療が必要になる方もいます
検査の結果、睡眠時無呼吸症候群が中等症から重症で、治療が必要と判断される場合には、CPAPという治療を行うことがあります。
CPAPは、寝ている間に鼻に装着したマスクから空気を送り、空気の通り道がふさがりにくいようにする治療です。成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対するPAP治療は、診療ガイドラインでも推奨されています。※4
「マスクをつけて眠れるのか不安」と感じる方もいます。実際、最初は違和感がある方もいますが、機器やマスクの調整をしながら少しずつ慣れていく方も多くいらっしゃいます。
オンライン診療についてのご注意:
オンライン初診でご相談いただくことは可能ですが、検査で睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP治療が必要になった場合は、治療開始前に一度だけ直接ご来院いただく必要があります。その後の継続診療は、状態に応じてオンラインで対応可能です。
寝ても疲れが取れない時に、まず見直したいこと
疲れが取れない時は、いきなり病気と決めつける必要はありません。まずは生活の中で見直せるところから確認してみましょう。
今日からできる見直しポイント
- 起床時間をなるべく一定にする
- 寝る前のスマホ時間を短くする
- 寝酒を習慣にしない
- 夕食を寝る直前にしない
- 昼食後の強い眠気がある場合は食事内容を見直す
- 家族に、いびきや無呼吸がないか聞いてみる
- 血圧、血糖値、体重の変化を確認する
一方で、生活を整えても改善しない場合や、家族から無呼吸を指摘されている場合、運転中に眠くなる場合は、早めに医療機関で相談してください。
受診を考えた方がよいサイン
次のようなサインがある方は、睡眠時無呼吸症候群を含めて、一度相談することをおすすめします。
- 家族から「息が止まっている」と言われた
- いびきが大きく、周囲に指摘される
- 朝起きても疲れが取れない状態が続く
- 日中の眠気で仕事や運転に支障がある
- 高血圧や糖尿病があり、なかなか安定しない
- 体重が増え、首まわりが太くなってきた
- 朝の頭痛や口の渇きがある
特に、運転中に眠くなる方は注意が必要です。ご本人だけでなく、ご家族や周囲の方の安全にも関わります。
まとめ
寝ても疲れが取れない原因は、一つとは限りません。
- 睡眠時間が足りていない
- 睡眠の質が悪くなっている
- 血糖値の乱れがある
- ストレスや自律神経の乱れがある
- 睡眠時無呼吸症候群が隠れている
このように、朝のだるさや日中の眠気の背景には、生活習慣から睡眠中の呼吸の問題まで、さまざまな原因があります。
すぐに病気と決めつける必要はありません。ただし、いびき、無呼吸の指摘、朝のだるさ、日中の眠気、高血圧や糖尿病が重なっている方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないか、一度確認してみることをおすすめします。
いびき・無呼吸・日中の眠気が気になる方へ
「病院に行くほどか分からない」という段階でも大丈夫です。家族からいびきや無呼吸を指摘された方、朝のだるさや日中の眠気が続く方は、まず今の睡眠状態を確認してみましょう。
詳しい症状チェック、自宅でできる簡易検査、治療の流れについては、下記ページでまとめています。
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参考文献
- ※1 Chung F, Abdullah HR, Liao P. STOP-Bang Questionnaire: A Practical Approach to Screen for Obstructive Sleep Apnea. Chest. 2016;149(3):631-638.
- ※2 Johns MW. A New Method for Measuring Daytime Sleepiness: The Epworth Sleepiness Scale. Sleep. 1991;14(6):540-545.
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