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膀胱癌の危険な症状3選
皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「膀胱癌の危険な症状」です。
特に以下の条件に当てはまる方、今回の内容は必見です。
- 最近、赤い尿が出たけど治まったので様子を見ている
- 60歳以上でタバコを吸っている
- 1日の尿の回数が増えたが、残尿感がありスッキリしない
膀胱癌の罹患数と死亡者数
膀胱癌と診断…約23,000人(2018年)
膀胱癌が原因で死亡…約9,100人(2020年)
日本では大腸がんや前立腺がん、乳がんと比べると頻度の少ないがんではありますが、ご自身やご家族への心理的・肉体的負担はとても大きい病気です。
ある研究データによると、
(その場合の5年生存率…86.4%)
ただしリンパ節転移することで、当然生存率というのは下がってきます。今回説明する症状が出た場合には、すぐに医療機関を受診して早めの検査をおすすめします。
このブログでは、最新のエビデンス(医学的根拠)をもとに、医師歴22年の経験・知識を活かして、皆さんにわかりやすくお伝えします。
膀胱の解剖
私たちの体の中では大体1日150Lぐらいの血液が腎臓に流れ込み、その99%は体に再循環しています。そして、残り1%の1.5Lが1日かけて、尿管→膀胱→尿道を通り、尿として排せつします。
膀胱はおへその下あたりにある臓器です。絶えず腎臓から流れてくる尿を、一時的に貯めておくという大事な役割があります。
上記の図の緑色の部分は移行上皮細胞といって同じ細胞で覆われています。尿を流し、溜め込むため、柔軟に伸びやすいという性質があります。膀胱癌は移行上皮癌とも言われています。
具体的には、たとえば膀胱癌を発見した場合であれば、尿管や腎盂にも癌が発生している可能性が高いということです。
実際の研究では60%ぐらいの方が癌が多発するという結果があります。
こちらは膀胱の壁のイラストです。内側に尿がたまります。
筋層まで達してしまった癌…進行癌
癌が粘膜に留まっている場合は膀胱経で、尿道から内視鏡を入れて切除できる場合もあります。
筋層を超えるような癌があると、膀胱自体を切除するという治療方針になってきます。
そのため
- 粘膜に留まっているか
- 菌層を越えているか
によって治療方針がだいぶ変わります。つまり、早期発見が大変重要です。
膀胱癌のリスク因子
リスク因子1:タバコ
タバコと膀胱癌の関係は様々な研究がされていて、以下のような報告がされています。
- 膀胱がんの50%以上はタバコによって引き起こされる
- タバコを吸う人は膀胱がんのリスクが2~4倍も高くなる
- ヘビースモーカーの人は膀胱がんのリスクが6~10倍高くなる
タバコには不飽和アルデヒドなど60を超える発がん物質や活性酸素の類が含まれています。癌を引き起こし、そして体をサビやすく酸化させてしまう物質です。
また、受動喫煙によって間接的に吸ってしまう方も膀胱がんのリスクが高まります。
性別でタバコが膀胱癌に起因する比率は、
- 男性…50%
- 女性…30%以上
このようになっています。
▼1987~2009年の22年間に行われた740人の患者を対象にした研究
ヘビースモーカーとタバコを吸っていない人を比較して、膀胱癌と診断されたときに進行がん(筋層を超えた癌)であるリスクが38%も高かったという報告があります。
ヘビースモーカーの定義は、1日に1箱を30年以上吸っている方です。1日に2箱吸っている方は、15年以上吸うとヘビースモーカーの定義に当てはまります。
タバコは脳卒中、心筋梗塞、食道がん、胃がん、膵臓がんなどさまざまな癌になるリスクもあります。
リスク因子2:男性
男性は女性に比べて約4倍ほど膀胱がんのリスクが高いと言われています。
リスク因子3:年齢
60歳以上になると、膀胱がんのリスクが大きくなることがわかっています。
▼平成24年の厚生労働省の統計調査
- 日本国内で膀胱がんと診断…約2万人
- 上記のうち60歳以上…約1万8900人(全体の約90%)
リスク因子4:職業性の発がん物質への曝露
膀胱癌と職業性発がん物質との関係というのは、100年以上前から指摘されています。化学物質による膀胱癌は、全体の10~20%程度を占めるのではないかという報告もあるほどです。
化学染料の中に含まれている物質に長時間、慢性的に接触すると発がんするケースがあると推測されています。
染料工場や皮革加工工場で使用されている芳香族アミンの類を取り扱う方は、膀胱癌のリスクが2~40倍ぐらい高いと言われています。
以下の職業に携わる方は、一般の方よりもリスクが高い可能性があります。
- 染料
- 皮革加工
- 画家
- 電気工事
- セメントを扱う
- カーペットの製造
- 塗料・プラスチック・工業用化学薬品
こういった方は、手袋、ゴーグル、マスクといった対策をして曝露から予防対策をする必要があります。
リスク因子5:シクロホスファミド
医薬品としてがんや膠原病の治療に使われているシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)も、膀胱がんのリスクを高めると言われています。
リスク因子6:骨盤内の癌に放射線治療をしている
子宮癌や卵巣がんといった骨盤内の癌に対して、放射線治療をしている方も膀胱癌のリスクが高まります。
膀胱癌の危険な症状3選
【症状1:血尿】
血尿は「肉眼的な血尿」と医療機関の顕微鏡で初めてわかる「顕微鏡的な血尿」の2つに分かれています。
肉眼的な血尿
膀胱がんの多くは肉眼的な血尿で見つかります。
肉眼的な血尿といっても、
- ピンク色に見える
- 赤く見える
- 茶褐色に見える
など、様々な見え方をします。普段と明らかに色が違うなというときは、ぜひ検査をしていただきたいと思います。
目に見えて赤い尿が出た場合、
また、肉眼的な血尿には2つの大きな特徴があります。
肉眼的な血尿の特徴1:血尿が出たり出なかったりする
このような症状を間欠的な血尿と言います。
私が以前担当した患者さんで、こんな方がいました。
この患者さんに超音波検査をしたところ、癌が見つかりました。
こういったケースも多々ありますので、1回でも血尿を確認したら、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
肉眼的な血尿の特徴2:痛みがない
痛みがない血尿を無症候性血尿といいます。特に初期であればあるほど痛みはないと言われています。
痛みがなく、先ほどの例で挙げたように血尿が1度止まってしまったりするので、病院で検査するタイミングが遅くなってしまうのが大きな問題点です。
【症状2:膀胱刺激症状】
癌が膀胱にできることで、膀胱粘膜が刺激を受け、さまざまな症状が出ます。
膀胱刺激症状1:頻尿
通常は、膀胱に尿が溜まっていくことで膀胱の壁が引き延ばされて尿意を感じます。そこに腫瘍があることで私たちの脳が「トイレに行かなきゃ」と勘違いしてしまいます。
膀胱刺激症状2:残尿感
トイレに行っても、スッキリしない感覚が残ります。
膀胱刺激症状3:排尿時痛
たとえば尿道の入り口の中に癌があった場合、そこを尿が流れ、排尿をするたびに痛みを感じるということもあります。
この3つの膀胱刺激症状は、膀胱癌の30%ぐらいの方に見られると言われています。
また、これらの3つの症状は、膀胱炎の症状に似ています。
性別で考えると、膀胱炎になりやすいのは女性です。女性は尿道が短いので、ばい菌が入りやすく炎症を起こしやすくなっています。
膀胱炎であれば、抗生物質を数日飲めば治ります。ただ膀胱がんの場合は、抗生物質を飲んでも治りません。
一方で、男性の場合は前立腺肥大でも似たような症状が出ることがあります。それによって膀胱癌を見逃すケースもあります。
以下のような状態の方は、念のため癌の検査をおすすめします。
- 治療しても改善しない
- 抗生物質を飲んでもよくならない
- 前立腺肥大の薬を飲んでも良くならない
- 徐々にひどくなる
- やたらと症状が長引いている
また頻尿の原因の1つに過活動性緊張性膀胱があります。
加齢などによって、膀胱がうまく機能しなくなると、少し尿が溜まっただけでも膀胱が動き出し、トイレに行きたくなります。
【症状3:痛み】
痛みが膀胱癌に起因する場合、ほとんどはある程度癌が進行しているか、他の臓器・リンパ節に転移していることが考えられます。どの部分に癌が広がるかによって、痛みが感じる部位も変わってきます。
例えば、尿管口をがんが塞いでしまうと、尿が流れなくなってしまい、尿管結石と同じような症状が出ます。
尿が流れなくなることにより何が起こるかというと、尿が逆流して腎臓が腫れてしまい、背中や、脇腹のあたりの痛みになって現れます。
膀胱がんが肝臓に転移すれば、右の上腹部が痛むこともあります。
また夜中寝ていても、昼間も背中の背骨のあたりが痛いという場合は、骨に転移しているかもしれません。
また、膀胱の出口部分を癌が塞いでしまった場合、尿が下に流れなくなります。これを尿閉と言います。尿閉を起こしてしまうと、多くの場合、下腹部が非常に強く痛む場合が多いです。
数年前に担当した患者さんで
という方の超音波検査をしたら、膀胱がものすごく大きくなっていて、結果的に膀胱癌でした。
膀胱癌の検査方法
検査方法1:尿細胞診
尿を顕微鏡で調べる検査です。
陰性の場合は膀胱にあるがん細胞がはがれ落ちなかったために顕微鏡で見つからなかった可能性もあるため、リスク因子があったり、疑わしい症状がある方は次の検査に進みます。
検査方法2:超音波検査
おなかにゼリーを塗って機械を当てて外側から調べます。
超音波検査は放射線を当てるわけではありませんので、患者さんにとって負担の少ない検査です。
60分ぐらい前から500CCぐらいのお水を飲んでいただき、膀胱をできるだけ尿で満たした状態にすると、とても見やすくなると言われており、大体1センチ以上ある膀胱がんを見つけることができます。
膀胱癌の超音波所見でよくあるケースは、膀胱の粘膜から内部に向かってカリフラワー状の腫瘍が見られることがあります。
検査方法3:膀胱鏡
尿道から内視鏡を入れ、膀胱内部を除きます。超音波検査でも見逃すような小さい膀胱癌も、この検査なら見逃す確率が減ります。
癌があった場合、そのまま内視鏡を使ってレーザーで焼いてしまうという治療があります。これをTUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と呼びます。
癌が表面(粘膜)にとどまっている場合は、抗がん剤やBCGを注入する治療法もあります。
BCGは、5か月の赤ちゃんに接種するBCGワクチンのことなのですが、様々な膀胱癌の種類の中で、上皮内癌と言われる粘膜にとどまる悪性度の高い癌に対しては、BCGを注入することで癌に対する抵抗力がアップするということがわかっています。
文献によりますが、65~80%ぐらいの治療効果があると言われ、現在も使われている治療になります。
検査方法4:CT検査
CT検査で膀胱癌が他の臓器に転移していないか、リンパ節に転移していないかといった情報を得ることもできます。
検査方法5:尿路造影
血管から造影剤を注入して癌を見つけることができます。
膀胱癌の予防法
予防法1:禁煙
膀胱癌の原因の50%程度がタバコに起因しています。
▼88件の研究からのデータを含むメタアナリシス(さまざまな論文を統合した研究)
【膀胱癌のリスク】
タバコを吸っている人…3.49倍
タバコをやめた人…2.07倍
病院では、ニコチンパッチなどによる禁煙外来を保険で使うことができます。
予防法2:職業性曝露を避ける
膀胱癌のリスクになる、特定の化学物質を取り扱う方は防護服、手袋、マスク、メガネなどを使って化学物質に触れる時間を極力少なくするということが大切です。
化学物質の種類によりますが、体の中に入った化学物質やタバコは、最終的に腎臓を通って膀胱にたまります。
1時間に大体60mlほどの尿が、腎臓から膀胱に貯められていきます。膀胱に化学物質がたまっている時間が長ければ長いほど、膀胱の粘膜ががん化するリスクが高まります。
予防法3:水分摂取量を多くする
(10年間/参加者:4万8000人/New England journal of medicine 1990)
2.5L以上飲む人は1.3L以下の人と比較して、49%リスクを減らせた
有名な医学雑誌で、上記のような研究結果が報告されています。
毎日水を2.5Lも飲めない、という人もいると思いますが、数分おきに水を口にするなどの工夫をして、ぜひ飲む努力をしてみてほしいと思います。
なぜ水分を多く飲むと、膀胱癌のリスクが減るのでしょうか?
理由としては膀胱が尿を溜めたとき、タバコの発がん物質や特定の化学物質が留まることで、膀胱の粘膜細胞が刺激を受けて、正常な細胞ががん化していくのではないかと推測されています。
そのため、水を多く飲むことで、体の中に溜まっているものを尿として洗い流すため、予防効果が期待できるということです。
具体的には
- 水
- 白湯
- 無糖の炭酸水
- ほうじ茶
- 麦茶
などがオススメです。
動画
膀胱癌の症状3選について、動画でも詳しく説明しています。ぜひご覧ください!
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