目次
- 腎臓によくない薬3選
- 薬が腎臓に悪い影響をあたえる理由
- 薬剤性腎障害になりやすいリスク因子
- リスク因子1:気候
- リスク因子2:加齢
- リスク因子3:生活習慣病
- リスク因子4:心不全・肝硬変
- リスク因子5:薬の使用
- 腎臓に良くない薬3選
- 腎臓に良くない薬1つ目:造影剤
- 腎臓に良くない薬2つ目:抗菌薬(抗生物質)
- 腎臓に良くない薬3つ目:解熱鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬)
- 薬剤性腎障害の原因となる薬の内訳
- その他の薬剤性腎障害の原因となる薬
- 体内で痛み・炎症が起こるメカニズム
- 体をどこかにぶつけ、筋肉に炎症を起こした場合
- 非ステロイド系抗炎症薬が腎臓に作用した場合
- 薬と上手に向き合うポイント3つ
- 薬と上手に向き合うポイント1つ目:定期的な腎機能チェック
- 薬と上手に向き合うポイント2つ目:脱水に気をつける
- 薬と上手に向き合うポイント3つ目:薬についてよく知る
- 動画
- 関連ブログ
- 当院のご案内
腎臓によくない薬3選
皆さんこんにちは。
あまが台ファミリークリニック院長の細田です。
今回のテーマは「腎臓によくない薬」です。
特に以下の条件に当てはまる方、今回の内容は必見です。
- もともと高血圧や糖尿病があり、血圧を下げる薬やコレステロールを下げる薬、利尿剤、痛み止めなどさまざまな薬を飲んでいる方
- 腰が痛くて、とりあえず毎日鎮痛剤を飲んでいる方
- 風邪をひくたびに抗生物質を飲んでいる方
以前「腎臓が悪くなったときに出てくる7つの危険な症状」について詳しい解説をした際に多くの方から反応をいただきました。
- 腎臓について悩んでいる方
- 腎臓について詳しく知りたい方
こういった方が大勢いらっしゃるのを実感しています。今回の内容はこちらの動画と合わせてご覧いただくと、腎臓に対する理解がより深まると思います。
このブログでは、最新のエビデンス(医学的根拠)をもとに、医師歴22年の経験・知識を活かして、皆さんにわかりやすくお伝えします。
薬が腎臓に悪い影響をあたえる理由
私たちの腎臓は
- 余分なミネラル
- 余分な水分
- 老廃物
といったものを尿として排せつしていきます。
そして、薬のほとんどもまた腎臓を経由して外に出ていきます。
そのため年齢や患者さんの状態によっては、一定の確率で薬によって腎臓の機能が悪くなってしまうことがあります。
薬が原因で腎臓が悪くなってしまうことを医学的には
と呼びます。
また、ある調査では薬剤性腎障害になると30%ぐらいの方が腎臓の機能が元に戻らなくなってしまうという報告もされています。
薬剤性腎障害になりやすいリスク因子
リスク因子1:気候
- 汗をかく夏場
- 食欲がなくなりやすい季節の変わり目
こういったタイミングは、脱水によって腎臓への血流量が落ちやすい時期です。
リスク因子2:加齢
薬剤性腎障害を起こす確率についての調査
- 20歳で起きる確率…1と仮定
- 60歳を超えてから…1.8倍程度
こんなデータもあります。
リスク因子3:生活習慣病
とても元気な腎臓の状態を100%とした時に、腎臓の機能が60%以下になってしまった場合を慢性腎臓病と言います。
慢性腎臓病の最も多い原因が生活習慣病です。
特に糖尿病、高血圧のある方は慢性腎臓病を持っている可能性が高く、腎機能が落ちているところに、さらにお薬によるダメージを受けてしまいます。
以前、患者さんでこのような方がいらっしゃいました。
友人との登山が趣味のAさん
- 高血圧と糖尿病がある
- 夏の暑い日に登山
- 膝が痛くなり薬局で痛み止めを購入して飲む
- 数時間後からだるさと吐き気に襲われる
Aさんはその後、旅先の病院で急性薬剤性腎障害と診断されました。幸い点滴で回復されましたが、これは薬剤性腎障害のよくあるケースです。
リスク因子4:心不全・肝硬変
ある研究では、重症度の高いある程度進んでしまった心不全や肝硬変の方の肝臓は、薬によってダメージを受けやすいというデータがあります。
リスク因子5:薬の使用
前提として、どんなお薬にもメリット・デメリットがあります。メリットがデメリットを大きく上回る場合に薬は使うべきだと思います。
漫然と体に必要のない薬を続けていると、今回紹介する薬以外でも、体にとって害になる場合があります。
私たち医療者の間では「薬はリスク」という言葉もあります。
数年前にこんな患者さんを担当しました。
妊娠中のBさん
- 数日前から喘息発作が起きた
- 徐々に悪くなり来院する2日ぐらい前から夜も寝れないほど喘息発作がひどい
- Bさんとしては「赤ちゃんに悪い影響があるため薬は使いたくない」
- 来院時の酸素飽和度96%以下
- 顔色が悪い
私はBさんを診察してとても危険な状態だと思い、このようなお話をしました。
そこでBさんは気づいてくださり
と納得をしてくれました。
薬は
- 赤ちゃんへの影響を最小限にする
- 喘息を治すためのメリットを最大限引き出す
こういったものを処方しました。
やはり薬を使う時はメリットデメリットがあります。デメリットが大きい薬を使うと、逆にお母さんだけでなく、赤ちゃんにまで悪い影響が及ぶ可能性だってありますよね。
ですからこのメリットがデメリットを上回る場合に使うという考え方は、理解しておいてください。
腎臓に良くない薬3選
腎臓に良くない薬1つ目:造影剤
造影剤とは、CT検査(エックス線を利用し体内を画像化する検査)をする時に使う薬です。
造影剤を使わなくても実施可能ですが、検査する場所や目的で原因がはっきりとわからない場合、造影剤を静脈から入れることで体中の血管を写し、血管の異常や、病気がどこにあるのかわかりやすくなることで、正確な診断に役立ちます。
画像はお腹の太い血管「腹部大動脈」です。造影剤が入ることで、周りよりもより白く鮮明になり見やすくなっています。
造影剤というのは静脈から入れることで、体中の血管を映し出すために必要な薬です。
具体的には、以下のような場合に造影剤が役立ちます。
- 胸が痛く、大動脈解離を疑う場合。血管が裂けた場所がわかる
- 急性すい炎の把握
- 一部の癌の発見
このように造影剤を用いたCT検査はとても大切なのですが、一方、1.5%程度の割合で腎臓の機能を低下させてしまうことがあるという研究もあります。
※研究や患者さんの状態によって頻度は変わる
そこで、造影剤で腎臓に負担がかかりすぎないよう事前に
という対策をとることができます。
商品名としては
- メトホルミン
- メトグルコ
- イニシンク
- メトアナ
- グリコラン
といった薬があります。こういった薬を使っている方は主治医の先生とよく相談し、造影剤を使った検査を一旦中止する必要があるかもしれません。
腎臓に良くない薬2つ目:抗菌薬(抗生物質)
抗生物質というのは細菌に使う薬です。
- コロナウイルス
- インフルエンザウイルス
といったウイルスには効きません。
風邪というのはほとんどがウイルス性ですので、抗生物質を使う必要はありません。そのため、薬を処方するにあたり、風邪かそうじゃないかというのは大事な見極めになります。
風邪について
- 急性上気道炎
- 感冒
風邪のことをこのように言うこともあります。
このような疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
医者の仕事を20年以上続けていますが、風邪なのか、風邪じゃないのか見極めが難しいケースはたくさんあります。
よくある風邪のパターンは1~2日前から
- 寒気
- 頭痛
- 関節痛
- 鼻水
- くしゃみ
- せき
このような全身症状が出てきます。たいていは
- 体を冷やさない
- 栄養と水分を取る
- ゆっくり休む
- 熱があれば解熱剤を処方
- 咳がひどければ咳止めを処方する場合も
このようにして2~3日で治ってしまえば風邪です。
風邪以外を疑う場合
- 症状が長引く
- 呼吸が荒くなる
- 高熱が続く
- ぐったりして水分も取れない
- 毛布をくるんでも寒くてしょうがない(悪寒・戦慄)
このような場合、私たちは「細菌が関係している可能性がある」と判断し、抗生物質を使うことがあります。抗生物質を使う中でもよくあるのは
- 肺炎
- 急性副鼻腔炎
- 急性中耳炎
- 頻尿、排尿時痛ではじまる膀胱炎
- 胆のう炎
- 急性胆管炎
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
こういった病名です。
腎臓に良くない薬3つ目:解熱鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬)
非ステロイド系抗炎症薬のことを、英語で略してNSAIDsと言います。
市販でもよく売られており、具体的には以下の薬です。
市販の解熱鎮痛薬 (商品名) |
一般名 |
バファリン | アスピリン |
イブA | イブプロフェン |
ロキソニンS | ロキソプロフェン |
セデス・ハイ | イソプロピルアンチピリン |
そして病院でよく処方されるのが
病院でよく処方される薬(一般名) |
ロキソニン |
ロキソプロフェン |
ジクロフェナク |
ブルフェン |
こういった薬です。これらは片頭痛や生理痛、腰の痛みなどさまざまな症状に使われます。
薬剤性腎障害の原因となる薬の内訳
非ステロイド系抗炎症薬 | 25.1% |
抗がん剤 | 18.0% |
抗菌薬 | 17.5% |
造影剤 | 5.7% |
研究によってバラつきがありますが、非ステロイド系抗炎症薬が薬腎臓の機能を落とす確率は、1~5%くらいという結果が出ています。
1~5%と聞くと「少ない」と感じる方もいらっしゃると思いますが、非ステロイド系抗炎症薬はアメリカで以下のような推測がされています。
- 年間7,000万件以上の処方
- 薬局で300億回程度販売
- 少なくとも年間で250万件以上の方が薬剤性腎障害を起こすと推測
こう見るとすごい数字ですよね。
それだけ非ステロイド系抗炎症薬は、私たちにとって身近で、体をケアしていくために欠かせない大切な薬ということがわかります。
その他の薬剤性腎障害の原因となる薬
商品名 | 一般名 |
ガスター10、アシノンZなど | H2ブロッカー |
タケプロン、ネキシウムなど | PPI(プロトンポンプインヒビター) |
タケキャブ | PCAB |
バラシクロビル | 抗ヘルペスウイルス薬 |
オセルタミビル、ペラミビル | 抗インフルエンザウイルス薬 |
逆流性食道炎、胃潰瘍で使用するPPI(プロトンポンプインヒビター)やPCABは、長期的な使用で腎機能の障害が起きやすいと言われています。
以下のような研究結果もあります。
PPIを飲んだ100人中約1人の腎臓の機能が急に悪くなってしまう
PPIについては逆流性食道炎についての解説でも触れています。
薬を使わずに逆流性食道炎の症状のリスクを50%下げるライフスタイルについても説明していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
ここまで薬のデメリット(副作用)をたくさんお伝えしてきましたが、
というご意見もあると思います。ただ実際には、薬がなければとても苦しい思いをする方がたくさんいらっしゃいます。
薬が私たちの腎臓に良くない影響を与えるメカニズムから順に考えていきましょう。
体内で痛み・炎症が起こるメカニズム
体をどこかにぶつけ、筋肉に炎症を起こした場合
例)
- 体をどこかにぶつけ、筋肉に炎症を起こした
- 細胞膜にあるリン脂質がホスホリパーゼによってアラキドン酸に分解
- アラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によってプロスタグランジンを生成
- プロスタグランジンができた結果、ばい菌を倒すための白血球やマクロファージが集まる
- 炎症反応が起きる(痛みを感じる、腫れる、熱を持つ)←壊れた部分を戻すための防御反応
聞きなれない名称がたくさん出てきますが、図の中で「プロスタグランジンによって炎症反応を起こす」部分に注目してみてください。
非ステロイド系抗炎症薬を飲むと、プロスタグランジンを作るためのシクロオキシゲナーゼ(COX)に作用し、プロスタグランジン自体をできなくしようとします。
すると
- 痛みを感じづらくなる
- 炎症を鎮める
- 熱を下げる
こんな効果があらわれます。
非ステロイド系抗炎症薬が腎臓に作用した場合
- 炎症反応が起きる(痛みを感じる、腫れる、熱を持つ)←壊れた部分を戻すための防御反応
- 非ステロイド系抗炎症薬を飲む
- シクロオキシゲナーゼ(COX)に作用し、プロスタグランジンができなくなる
- プロスタグランジンは血管を拡張させる作用があるため、逆に血管が収縮
- 腎臓自体への血流がダウンする
- 腎臓そのものの機能が低下
薬と上手に向き合うポイント3つ
薬と上手に向き合うポイント1つ目:定期的な腎機能チェック
- 慢性腎臓病
- 高血圧
- 糖尿病
このような病気がある方は、定期的にかかりつけ医に相談し
尿検査 | |
血液検査 | クレアチニン・eGFR(推算糸球体ろ過量) |
こういった項目の数値を見ていきましょう。
eGFRが30%以下の方は非ステロイド系鎮痛薬によるダメージを起こす確率がより高くなりますので要注意です。
薬と上手に向き合うポイント2つ目:脱水に気をつける
脱水かどうか判断するポイントは以下の通りです。
わきの下が渇いているか
前提として嘔吐や下痢があったり、激しく汗をかいた等の症状がある上で、脇の下が濡れていなかったり、サラっと汗を全然かいていない場合は脱水の可能性が高いです。
口の中が渇いているか
口の中が潤っている場合は脱水の可能性は低いです。
5秒爪を押したときに血色がすぐに戻るか
5秒ほど爪を押すと、一時的に色が白くなりますが、脱水がない場合はすぐピンク色に戻ります。
脱水の方の場合、このピンク色に戻るのに2秒以上かかります。
この場合は脱水の可能性があります。
お子さんや高齢者の方の脱水の有無にも使えます。ぜひ試してみてください。
脱水を起こしている場合、腎臓がダメージを受けやすいので要注意です。
普段から心掛けていただきたいのは、水分制限が必要な病気がない場合、
- 水
- 白湯
- ノンカフェインの飲み物
こういった飲み物を1日1.5~2L飲みましょう。
▼水分制限が必要です。主治医の先生とよく相談しましょう。
- 心不全
- 肝硬変
- 腎不全
▼体内の水分を外に出す利尿作用に注意
- カフェイン
- アルコール
▼塩分や糖分に注意
- 野菜ジュース
- スポーツドリンク
▼糖分や塩分を含む飲料を飲み過ぎた場合のリスク
- 糖尿病のリスクが上がる
- 肥満
- 塩分量の増加による血圧上昇
薬と上手に向き合うポイント3つ目:薬についてよく知る
高齢者の方ほどさまざまな病気が発生してしまう可能性があり、薬に触れる機会も多くなる傾向があります。
- 今飲んでいる薬が何を目的に飲んでいるのか
- メリットは何なのか
- どんなことで体調は良くなったのか
- 体調がよくなっていないのか
- どんな病気を予防できるメリットがあるのか
- 副作用はどんなものがあるのか
- 定期的に血液検査をし異常はないか
- 薬を飲んで体調が悪いということはないのか
こういったことを観察し、主治医の先生と相談し、納得して薬を飲むようにしましょう。
お守り代わりで漫然と飲み続けている薬があれば、その薬が腎臓を傷つけている可能性もあります。
非ステロイド系抗炎症薬の代わりを検討する
アセトアミノフェン(商品名:カロナール)、市販ではタイレノールという薬があります。
こういったアセトアミノフェンを使って代用できないか、主治医とよく相談の上、治療の選択肢を広げることをおすすめします。
アセトアミノフェンでもダメな場合は、トラマールやトラムセットといったオピオイド系の薬も適用になるかもしれません。
動画
腎臓によくない薬3選について、動画でも詳しく説明しています。ぜひご覧ください!
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