こんなことで悩んでいませんか?
- パートナーや家族から「いびきがうるさい」と言われている
- 朝起きても疲れがとれず、日中もひどく眠い
- 血糖値や血圧のコントロールがうまくいかない
- 「いびきくらいで病院に行くのは大げさかな…」と思っている
そのいびき、実は糖尿病や高血圧を悪化させている「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」のサインかもしれません。放置するほど全身への影響が広がります。
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私は医師歴25年の家庭医療専門医として、日本睡眠学会に所属しており、年間1,500名の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんを診療してきました。
また、日本糖尿病学会正会員として年間約5,000人の糖尿病患者さんの診療も行っています。
この記事では、「いびきと全身疾患の意外なつながり」を、科学的根拠とともにわかりやすくお伝えします。ぜひ最後まで読んでください。
目次
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とはどんな病気?
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、眠っている間に呼吸が繰り返し止まってしまう病気です。
医学的には「1時間に5回以上、10秒以上の無呼吸または低呼吸が起きる状態」をSASと定義しています※1。
自覚なく呼吸が止まっているため、本人は気づかないことがほとんどです。
【SASの重症度の目安】
・軽症:AHI(無呼吸低呼吸指数)5〜15回/時
・中等症:AHI 15〜30回/時
・重症:AHI 30回/時以上
重症になると、一晩で300回以上も呼吸が止まるケースもあります。
日本では成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%がSASに該当すると言われており、潜在患者数は900万人以上とも推計されています※2。
しかし実際に治療を受けているのはごく一部で、多くの方が「ただのいびき」と見過ごしているのが現状です。

いびきはなぜ起きる?SASとの違い
いびきは、睡眠中に気道(空気の通り道)が狭くなり、通過する空気が粘膜を振動させることで起きる音です。
「いびき=SAS」ではありませんが、SASの患者さんのほぼ全員がいびきをかきます。

特に「突然いびきが止まって、しばらくして大きな音とともに再開する」というパターンは、無呼吸のサインとして注意が必要です。
SASになりやすい人の特徴
- 肥満(BMI 25以上)、特に首まわりに脂肪がつきやすい方
- あごが小さい・後退している(やせていても起こります)
- 鼻づまりや扁桃肥大がある
- 飲酒習慣がある
- 仰向け(あおむけ)で寝る習慣がある
- 男性、または閉経後の女性

ここで患者さんからよく聞く声があります。「太っていないのにSASと言われました。自分には関係ないと思っていたのに…」という声です。
その気持ちはよくわかります。
SASというと「太った中年男性の病気」というイメージがありますよね。
私もかつての研修時代にそう習いました。
しかし実際の診療では、やせていても、女性でも、若い方でも診断されるケースを多く経験しています。あごの形や骨格の影響が大きいのです。
「自分は違う」と思わず、気になる症状があればまず相談していただきたいと思います。
SASが糖尿病を悪化させる「本当の理由」
SASと糖尿病の関係は、近年の研究で非常に強いことが明らかになっています。
単に「同じ太った人がなりやすい」というだけではなく、SAS自体が血糖値を上げるメカニズムがあるのです。

メカニズム① 間欠的低酸素血症がインスリン抵抗性を高める
無呼吸が起きるたびに血液中の酸素濃度(SpO2)が低下し、これを「間欠的低酸素」と呼びます。
この状態が繰り返されると、身体はストレス反応としてコルチゾールやカテコラミンなどのホルモンを大量に分泌します。
これらのホルモンはインスリンの働きを妨げ、血糖値を上昇させます※3。
メカニズム② 睡眠の質の低下が食欲ホルモンを乱す
SASによって深い睡眠(ノンレム睡眠)が得られないと、食欲を増やすグレリンが増加し、食欲を抑えるレプチンが低下します。
結果として食べ過ぎやすくなり、体重増加→血糖コントロール悪化という悪循環に陥ります※4。
メカニズム③ 交感神経の過活動
無呼吸のたびに脳が「窒息しそう」と判断し、覚醒反応が起きます。
この繰り返しにより交感神経が常に優位になり、血糖値が下がりにくい体質になっていきます。
実際のデータでも裏付けられています
SASを合併した2型糖尿病患者においてCPAP療法(後述)で治療を行うと、HbA1cが平均0.5〜1.0%改善したという研究報告があります※5。「薬を変えていないのに血糖値が改善した」という経験をされる患者さんが当院でも複数いらっしゃいます。
SASが高血圧を引き起こす仕組み
高血圧とSASの関係も非常に深く、高血圧患者の30〜50%がSASを合併していると言われています※6。
通常、睡眠中は血圧が低下します(夜間血圧のディッピング)。
しかしSASがあると無呼吸のたびに覚醒反応が起き、そのたびに血圧が急上昇します。
この「夜間の血圧スパイク」が繰り返されることで、血管への負担が蓄積し、慢性的な高血圧につながります。
「治療抵抗性高血圧」の背景にSASが潜んでいることも
降圧薬を2〜3種類服用しても血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」の患者さんのうち、80%以上にSASが合併しているとのデータがあります※7。薬を増やす前に、SASの検査を受けることで血圧が改善するケースも少なくありません。
「薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」という方は、ぜひSASの可能性も考えてみてください。

放置するとどうなる?SASが引き起こす全身への影響
「いびきくらいで病院に行くのは…」と思っている方に、ぜひ知っていただきたいことがあります。SASを放置すると、全身に深刻な影響が及びます。
- 心臓への影響:不整脈(特に心房細動)、心筋梗塞のリスクが2〜3倍に上昇※8
- 脳への影響:脳卒中(脳梗塞・脳出血)リスクが約3倍に※9
- 代謝への影響:糖尿病、脂質異常症の悪化
- 精神への影響:うつ症状、集中力・記憶力の低下
- 社会的影響:居眠り運転による交通事故(SAS患者の事故リスクは健常者の7倍とも※10)
【院長の実際の診療から】だるさ・集中力低下の「本当の原因」がSASだったケース
以前、数ヶ月前からなんとなく疲れやすく、だるくてしょうがないという患者さんがいらっしゃいました。血液検査や各種検査を一通り行ったのですが、これといった原因が見当たらない。「なぜだろう」と思いながら最終的に睡眠時無呼吸症候群の検査を実施したところ、1時間あたりなんと90回も呼吸が止まっていることが判明しました。
その方にCPAP治療を開始したところ、治療開始から1週間ほどで嘘のようにだるさが改善し、約2ヶ月後には「仕事にもしっかり集中できるようになった」とおっしゃっていました。それまで何ヶ月も悩まれていた症状が、SASの治療というたった一つのアプローチで劇的に変わったのです。

「原因不明の疲労感」「うつっぽい気分が続く」「集中力が続かない」という症状の裏に、SASが隠れているケースは決して珍しくありません。精神科や内科を受診しても改善しなかった方が、SASの治療で劇的に回復することがあります。
「眠いくらいは我慢できる」と思われるかもしれません。
その気持ちは十分わかります。毎日仕事があって、病院に行く時間もなかなかとれない。そういう方が多いのも現実です。
ただ、SASは放置すればするほど全身の血管と臓器へのダメージが積み重なります。
「我慢できている」のと「身体に影響が出ていない」のは別のことです。
検査は自宅でできる簡単なものから始められますので、まずは一度受けてみることをおすすめします。
「毎日疲れがとれない」「血糖・血圧のコントロールが悪い」
その原因が睡眠にあるかもしれません。
まずは当院の睡眠時無呼吸症候群の専門ページで、検査から治療の流れをご確認ください。
SASの検査の流れ — 「病院に行く」のは難しくない
検査と聞くと「入院が必要?」「大きな病院に行かないとダメ?」と思う方も多いですが、SASの検査はとてもシンプルです。

ステップ① 問診・外来診察
まず外来を受診していただき、症状の程度や生活習慣、既往歴などをお伺いします。エプワース眠気スケールなどの問診票を記入いただくことで、SASの可能性を評価します。
ステップ② 自宅でできる簡易検査(一晩のみ)
検査機器をご自宅にお持ち帰りいただき、いつも通りに眠りながら検査を行います。
センサーを指先と鼻の下に装着するだけで、睡眠中の酸素濃度や呼吸の状態を記録します。翌日機器を返却していただければ、後日結果をご説明します。
入院不要・仕事や生活への影響なしで受けられます。
ステップ③ 必要に応じて精密検査
簡易検査の結果がグレーゾーンの場合や、より詳細なデータが必要な場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を実施します。
これは1泊2日の入院が必要ですが、より精密なAHIを測定できます。
CPAP治療とは?使いこなすとこんなに変わる

中等症〜重症のSASと診断された場合、最も効果的な治療が「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」です。
マスクを顔に装着して、陽圧の空気を送り込み続けることで気道の閉塞を防ぎます。機械と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、現在の機器はコンパクトで静音設計が進み、出張・旅行への携帯も可能です。
CPAPで実感できる変化(当院患者さんの声より)
- 「朝起きたときの爽快感がまったく違う」
- 「日中の眠気がなくなって仕事の集中力が上がった」
- 「血圧が下がって降圧薬の量が減った」
- 「HbA1cが改善されて主治医に驚かれた」
「マスクをつけて眠れるか不安」という声もよくいただきます。
最初は慣れないのは当然です。当院では導入後も定期的にフォローアップを行い、圧力の調整やマスクの種類変更など、一人ひとりに合わせたサポートをしています。途中でやめてしまわないよう、一緒に続けられる方法を考えていきます。

CPAP以外の治療の選択肢
- マウスピース(口腔内装置):軽症〜中等症に適応。就寝時に装着し、下あごを前に出して気道を確保します。
- 生活習慣の改善:減量(5〜10%の体重減少でAHIが改善することも)、飲酒量の減少、横向き寝の習慣化。
- 手術:扁桃肥大など構造的な原因がある場合は耳鼻科での手術が有効なことも。
家族からいびきを指摘されたら — どう行動すればよいか
「妻に『呼吸が止まっていた』と言われた」「子どもに『おとうさんのいびきがうるさい』と言われた」という理由で受診される方は少なくありません。
家族からの指摘は、実は非常に貴重なサインです。本人は眠っているので気づけませんが、そばで見ている家族が気づいてくれているのです。
こんな指摘があったら要注意
- 「いびきが突然止まって、しばらくして大きな音でまた始まる」
- 「夜中に何度も寝返りを打っている」
- 「息が苦しそうで見ていられない」
- 「朝起きたとき頭が痛そう」
「病院に行くのは大げさかな」と思う必要はありません。検査は自宅でできますし、何もなければそれで安心できます。大切なご家族が指摘してくれているうちに、一度相談していただければと思います。
あまが台ファミリークリニックがSAS診療で選ばれる理由
- 睡眠・糖尿病・高血圧を一括管理できるクリニック:SASと生活習慣病を同じ主治医が診ることで、治療の連携がスムーズです。
- 自宅での簡易検査に対応:入院不要・仕事を休まず検査が受けられます。
- CPAP導入後のきめ細かなフォロー:月1回以上の定期外来で使用状況を確認し、設定調整や困りごとに対応します。
- 千葉県長生村を中心に茂原市・千葉市方面からも通院可能:アクセスしやすい立地でかかりつけとしてご利用いただけます。

まとめ
- SASは「眠れない病気」ではなく、「眠っている間に呼吸が止まる病気」で、本人は気づきにくい
- 間欠的低酸素と自律神経の乱れにより、糖尿病・高血圧を直接悪化させるメカニズムがある
- 放置すると心臓病・脳卒中・交通事故リスクが顕著に上昇する
- 検査は自宅でできる簡易検査から始められる
- CPAP治療で血糖値・血圧の改善が期待できる
- 家族からいびきを指摘されたら、早めに相談を
「いびきくらいで病院に…」と思っていた方が、検査を受けて「まさかこれが原因だったとは」と驚かれることは珍しくありません。身体は正直に信号を出しています。その信号を、ぜひ今日から大切にしてください。
皆さんが毎朝すっきり目覚め、元気に一日を過ごせるようになるよう、スタッフ一同でサポートします。
「自分もSASかもしれない」と思ったら
まずは詳しい情報をご確認いただくか、オンラインで外来予約ができます。
検査機器のご自宅への貸出も行っています。お気軽にご相談ください。
参考文献
※1 American Academy of Sleep Medicine (AASM): International Classification of Sleep Disorders, 3rd edition.
※2 厚生労働省「e-ヘルスネット」睡眠時無呼吸症候群(SAS). 2023.
※3 Punjabi NM, et al. Sleep-disordered breathing and insulin resistance in middle-aged and overweight men. Am J Respir Crit Care Med. 2002;165(5):677-682.
※4 Spiegel K, et al. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850.
※5 Muraki I, et al. Effect of CPAP on glucose metabolism in patients with OSA and type 2 diabetes: a systematic review. Sleep Med Rev. 2018;37:1-11.
※6 Lavie P, et al. Obstructive sleep apnoea syndrome as a risk factor for hypertension. BMJ. 2000;320(7233):479-482.
※7 Logan AG, et al. High prevalence of unrecognized sleep apnoea in drug-resistant hypertension. J Hypertens. 2001;19(12):2271-2277.
※8 Mehra R, et al. Association of nocturnal arrhythmias with sleep-disordered breathing. Am J Respir Crit Care Med. 2006;173(8):910-916.
※9 Yaggi HK, et al. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med. 2005;353(19):2034-2041.
※10 Terán-Santos J, et al. The association between sleep apnea and the risk of traffic accidents. N Engl J Med. 1999;340(11):847-851.
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