糖尿病の食事療法~気を付けたい5つのポイント~
こんにちは。あまが台ファミリークリニック管理栄養士の小笠原です。
私はクリニックで糖尿病をはじめ生活習慣病の患者さんの栄養指導を担当しています。
糖尿病と診断されたら、こんな疑問、不安はありませんか?
- 食事はどうすればいいの?
- ご飯は食べてもいいの?
- 甘いお菓子は食べてはいけないの?
今回は糖尿病の方の食事について一緒に考えていきたいと思います。
糖尿病になったからといって食べてはいけないものはありませんが、出来れば避けたいもの、こういう順番で食べるといいよなど、知識として知っていてほしいことをまとめてみましたので、参考になれば嬉しいです。
糖尿病の合併症として失明や、透析になる最も多い原因である糖尿病性腎症や機能が足先などの神経を感じにくくなってしまう神経症壊死などがあり、それを予防していくことがとても大切になりますね。
今回は心がけやすい5つのポイントをご紹介したいと思います。
~5つのポイント~
- 単品食べは太りやすい!?
- 日本人は不足気味?
- 食べる順番で痩せる??
- よく噛んで食べるだけで、年間11000Kcal消費!?脂肪は1.5kg消費!?
- 血糖コントロールに筋肉が必要??
単品食べは太りやすい!?
忙しくて食べる時間がなく、おにぎりだけ、パスタだけ、菓子パンだけといった食事だけで済ませてしまうことはありますか?
主食となる炭水化物は体のエネルギー源となるので、とても大切な栄養素です。炭水化物は食物繊維と糖質でできています。しかし、お米、パン、麺類といった炭水化物は血糖値を上げやすくなります。
炭水化物のみの食事を「単品食べ」といい、血糖値の上昇、肥満体質になりやすい食事になります。そのため、単品だけの食事には注意が必要になります。それでは、どうすればいいのでしょうか?
そこで大切なのが、以下の2~5の考え方になります。
日本人は不足気味??
2013年国民健康・栄養調査によると、日本人の平均的な摂取量は14gだそうです。洋食を好む若い世代では1日の平均摂取量が12gと特に少なくなってきています。
これは何の摂取量の数値でしょうか??
答えは食物繊維の摂取量になります!
食物繊維には水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維の2種類が存在します。
不溶性食物繊維は腸内環境を整えてくれて、咀嚼回数を増やし満腹感を持続してくれる役割があります。
水溶性食物繊維には野菜、海藻類、海藻類などに多く含まれています。
不溶性食物繊維はごぼう・蓮根などの根菜類、こんにゃくに多く含まれています。
厚生労働省策定の基準と比較してみると
食物繊維の摂取基準
年齢 | 男性 | 女性 |
18歳から64歳 | 21g以上 | 18g以上 |
65歳以上 | 20g以上 | 17g以上 |
日本食品基準成分表2022年版(八訂) 参照
不足傾向であることが分かるとおもいます。
2019年の国民健康・栄養調査によると、食物繊維ではなく、「野菜の摂取量」では1日平均280.5gでした。
厚生労働省の「健康日本21(第二次)という取り組みの中で、野菜類の摂取量についても数値目標が掲げられています。生活習慣病をなどを予防し、健康な生活を維持するために「野菜類を1日350g以上食べましょう」と掲げられています。
現状が280.5gですから、その差は1日で70g!!近くあります。1か月に換算すると、2100gくらいの差になります。いかに野菜自体の摂取量も少ないことも分かりますね。
野菜類を350gとは、おおよそ両手に乗る量を3回分になります。そのため、1食ごとに両手に盛られる量1回分として目安にして頂くと良いと思います。
温野菜だったら、片手分に野菜が盛られる量が1回分の目安になります。
食べる順番で痩せる??
食事の最初にサラダなどの野菜を食べることで血糖値の上昇を穏やかにしてくれることが研究や実験などから分かっています。食事の最初に野菜を食べることを「ベジタブルファースト」といいます。これはサラダだけではなく、火が通っている温野菜やスープ煮、お鍋などの野菜も同じ役割をしてくれます。それと海藻類やきのこ類も野菜と一緒に食べれるといいですね。
通称「痩せホルモン」と呼ばれる、消化管ホルモンの一種「GLPー1(グルカゴン様ペプチドー1)」の血中濃度を増やし、持続させる効果があることが分かりました。
また、GLP-1には満腹感を持続させるセカンドミール効果、食欲を抑制させる効果があります。
めかぶをはじめとした海藻類のパワーの凄さをお伝えさせて頂きました。食事の最初に野菜類、海藻類、きのこ類を召し上がりことで「痩せホルモン」が増えるなんて、嬉しい効果ですよね。
よく噛んで食べるだけで、年間11000Kcal消費!?脂肪は1.5kg消費!?
しっかりよく噛んでゆっくり食べることで血糖の急激な上昇を予防してくれます。よく噛むことで満腹中枢が刺激され、満腹感を感じることができ食べすぎを予防する効果へつながります。
食べ物を摂取すると血液中のブドウ糖(血糖)の量が増加し、血糖値が上昇します。満腹中枢がこれを感知し、「これ以上食べる必要がないよ」と体に伝えてくれ、満腹感を得ることができます。満腹中枢が血糖値の上昇を感知するまでに、約15分かかるとされています。急いで食べることを防止するためにも、15分以上かけて食事をすることも大切です。
日本肥満学会の「肥満症治療のガイドライン」では「咀嚼法」が肥満治療における行動療法のひとつとして挙げられていて、「1回に30回噛む」ことが推奨されています。
こんなことを書くと、今読んでくださっている方は、きっと
「忙しい毎日で、1回に30回噛むなんてできないよ。」
「そんな時間があったら、違う作業を終わらせないといけないの!」
と思われる方も多いかもしれません。
例えば、知人や友人と食事をするときは、1時間くらいゆっくり食べて、最後のデザートはいりません!みたいな感じにお腹が膨れるときがありますよね。一緒に食事をする相手との会話や時間を楽しんだり、家族であれば1日の出来事を話してみるなどしてみてはいかがですか?
あとは、1口を口に運ぶたびに一旦、箸を置いてみる
など、こんな感じで工夫されてみてはいかがでしょうか?
実際に、よく噛むことで、代謝がアップするという研究のご紹介をします。
東京工業大学大学院社会理工学研究科の林直享教授らの研究によると、急いで食べる時に比べ、よく噛んで食べる方が食後のエネルギー消費量(食事誘発性体熱産生)が増加することが明らかになりました。食事を早く食べた後、3時間の食事誘発性体熱生産量は15Kcalだったが、よく噛んで食べた時には30Kcalと有意に高値であることが分かりました。
私はこの研究を知った時に、とても驚きました。ゆっくりよく噛んで食べることが消化に良いだけでなく、食後の消費カロリーの高さを継続させてくれる作用まであるなんて意外でした。ゆっくりよく噛んで食べることで、血糖コントロールと肥満防止に効果的が期待できそうです。
血糖コントロールに筋肉が必要??
筋肉量の減少や筋力が低下してしまうと、筋肉でのブドウ糖の消費が減って血糖値が上がりやすくなります。
筋肉はエネルギーの貯蔵庫でもあり、血糖値の調整を行う働きがあります。食事をすると、血液中に増えたブドウ糖の一部が筋肉に取り込まれます。
筋肉を維持していくために必要なことはたんぱく質を十分に摂ることと、運動を行うことです。
高齢者は加齢に伴う筋肉の減少を防止するためにも、十分な量のたんぱく質を食べることが大切です。筋力や心身の活力が低下してしまうフレイルや、筋肉量が減少し身体機能の低下を起こしてしまうサルコペニアを予防するためにも積極的にたんぱく質を摂れるといいですね。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質をバランスよく摂ることが大切です。良質なたんぱく質を摂取して、筋肉量を維持していきましょう。
では、どのくらいのたんぱく質を摂ればいいのでしょうか?
たんぱく質の目安量は、年齢、体重、活動強度から求めることができます。
たんぱく質の目安量 デスクワーク中心の場合 (65歳)
身長 165cm(男性) | 身長150cm(女性) |
目安量・・・約75~100g | 目安量・・・60~80g |
肉類 (100g程度) | 魚介類(100程度) | 卵1個(約50g) | 納豆1パック(約50g) |
16~20g |
16~20g |
約7g |
約8g |
豆腐1/3丁(約100g) | ギリシャヨーグルト(100g) | 牛乳 200ml | 豆乳200ml |
6~7g |
10g |
6~7g |
6~7g |
60gから100g程度のたんぱく質を摂ろうと思うと、肉類、魚類、大豆製品など幅広く食べて頂くことが必要になります。
60g~100g程度のたんぱく質を目安に摂るように心がけつつ、お肉や脂肪の多い食品に偏った食事には気をつけていきましょう。
以上の5つのポイントになります。
今回は心がけやすいポイントをご紹介させて頂きました。
日々忙しい中で、食事がおろそかになることも多いと思います。食生活を見直すきっかけ、そして体調の改善に役立てていたでけると嬉しいです。
何か心がけていただけそうなことはありましたか?
食事の際に気をつけたいポイントは参考になりましたでしょうか?
当院 細田院長のブログやYouTubeも合わせて読んで頂くと、知識がますます深まるのでご覧になってみてください。
血糖コントロールや体重コントロールを行いつつ、これからも生活を楽しんでいきましょう。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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▼引用・参考文献
日本食品基準成分表2022年版(八訂)
厚生労働省「健康日本21(第二次)
日本肥満学会 肥満症治療のガイドライン2016 ライフサイエンス社出版
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」
掲載誌:The Journal of Physiological Science, 65 (1): S240 (2015)
論文タイトル:Effect of postprandial chewing gum on diet-induced thermogenesis.
著者:HAMADA Yuka, HAYASHI Naoyuki
トリトンフーヅと和洋女子大学 多賀昌樹准教授の共同研究
「めかぶファースト(R)」を実践